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第四十五話 危険な調査
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スライム印のポーションの復活劇は、俺たちに大きな利益と名声をもたらした。だが、それは同時に、パンデモニウムのさらなる敵意を買うことにも繋がっていた。
「おかしい……」
露店の経営が軌道に乗って数日後。リオは、帳簿を眺めながら、眉をひそめていた。
「最近、私たちの周りを嗅ぎ回る、怪しい奴らがいるんだよね。商人ギルドの情報網にも、パンデモニウムが何かを企んでるって噂が流れてる」
「奴らも、ただ黙って見ているわけではない、ということか」
カエデが、警戒を強める。
「次は何をしてくるか、分からん。ユー、ゴブ。街中でも、油断はするな」
俺とゴブも、こくりと頷いた。
だが、リオの表情は、ただ警戒しているだけではなかった。その瞳には、商人としての好奇心と、闘争心が燃え上がっていた。
「……チャンスかもしれない」
彼女は、ぽつりと呟いた。
「奴らが何かを企んでるなら、その尻尾を掴む絶好の機会じゃないかな。もし、奴らの不正取引の証拠でも掴めれば、商人ギルドに突き出して、あいつらの評判をガタ落ちさせることができるかもしれない!」
「危険すぎる!」
俺は、思わず声を上げた。
「相手は、アステリアの闇を牛耳るギルドだぞ!下手に首を突っ込めば、何をされるか分からない!」
カエデも、リオの無謀な提案に反対した。
「ユーの言う通りだ、リオ。お前は商人であり、戦闘員ではない。単独での調査など、自殺行為に等しい」
だが、リオの決意は、固かった。
彼女は、俺とカエデの忠告にも、頑として首を縦に振らない。
「大丈夫だって!私だって、ただの商人じゃないんだから。危険を察知する嗅覚と、ヤバい状況から逃げ出すためのスキルくらい、持ってるんだ。それに……」
彼女は、一度言葉を区切り、まっすぐに俺たちを見た。
「これは、私の戦いなんだよ」
その声は、震えていたが、揺るぎない覚悟に満ちていた。
「奴らは、私のビジネスを、そして、私たちの未来を、理不尽に踏みにじろうとしてる。それを、ただ黙ってやられてるなんて、私のプライドが許さない。商人には、商人の戦い方があるんだ。だから、これは私に任せてほしい」
彼女の、そこまで強い覚悟を前にして、俺たちは、もはや何も言えなかった。
俺たちは、彼女の仲間だ。彼女の決意を、尊重し、信じるしかない。
「……分かった」
カエデが、重い口を開いた。
「だが、約束しろ。絶対に、無理はしないと。危険を感じたら、すぐに私たちに連絡を。いいな?」
「うん、約束する!」
リオは、ぱっと顔を輝かせ、力強く頷いた。
その日の夜。
リオは、商人ギルドの情報屋から仕入れたという、一つの情報を手に、宿屋を出ていった。
「今夜、港の第三倉庫で、パンデモニウムが違法アイテムの密売を行うらしい。ちょっと、様子を見てくるだけだから」
彼女は、俺たちに笑顔で手を振ると、夜の闇へと一人で消えていった。
その背中を、俺は言いようのない不安と共に、見送っていた。
カエデも、同じ気持ちだったのだろう。彼女は、窓の外を、厳しい表情で見つめ続けていた。
「……嫌な予感がする」
彼女の呟きが、静かな部屋に重く響いた。
俺たちは、いつでも動けるように、装備を整えたまま、リオからの連絡を待った。
一時間、二時間。時計の針だけが、無情に進んでいく。
リオからの連絡は、ない。
「……おかしい」
カエデが、立ち上がった。
「何かあったのかもしれない。私たちも、港へ向かうぞ」
「はい!」
俺とカエデ、そしてゴブは、宿屋を飛び出した。
夜のアステリアは、昼間の喧騒が嘘のように静まり返っている。俺たちは、石畳を蹴って、港地区へとひた走った。
潮の香りと、魚の生臭い匂い。
第三倉庫は、港の一番奥まった、薄暗い場所にひっそりと建っていた。
周囲には、人の気配はない。ただ、不気味なほどの静寂が、あたりを支配していた。
「リオ!」
カエデが、声を張り上げる。だが、返事はない。
俺たちは、倉庫の重い鉄の扉に手をかけた。鍵はかかっていない。
ぎしり、と錆びた蝶番が軋む音を立てて、扉が開く。
その瞬間、俺たちは、息を呑んだ。
倉庫の中は、空っぽだった。商品も、人の姿も、何一つない。
ただ、広い空間の中央に、ぽつんと、一つの物だけが転がっていた。
それは、リオがいつも被っていた、大きな麦わら帽子。
そして、その横には、一枚の羊皮紙が、短剣で床に突き立てられていた。
カエデが、震える手で、その羊皮紙を抜き取る。
そこには、俺たちを嘲笑うかのような、短い文章が記されていた。
『この女を返してほしくば、お前たちが持つ、全てのユニークモンスターの創造レシピを差し出せ』
『場所は、南の盗賊の砦。一人で来い、モンスターメイカー』
「……罠、だったのか」
俺は、奥歯をギリリと噛み締めた。
密売の情報は、リオをおびき出すための、真っ赤な嘘。奴らは、最初からリオを狙っていたのだ。
俺の甘さが、リオを危険に晒してしまった。
彼女の決意を信じる、などと格好をつけて、結局、最悪の事態を招いてしまった。
「くそっ……!くそおおおおおおっ!」
俺は、やり場のない怒りと後悔に、壁を強く殴りつけた。
ゴブが、心配そうに俺の足元にすり寄ってくる。
カエデは、俺の肩に、静かに手を置いた。
「……自分を責めるな、ユー。今は、後悔している時間はない」
彼女の顔には、悲しみや動揺の色はなかった。そこにあるのは、仲間を傷つけられたことに対する、氷のように冷たく、そして燃え盛るような、静かな怒りだけだった。
「奴らは、私たちを、怒らせてはならない相手を、怒らせた。必ず、リオは取り戻す。そして、奴らには、相応の報いを受けさせてやる」
その声は、聖騎士のものではなかった。
仲間を傷つけられた獣が発する、低く、獰猛な唸り声だった。
俺は、顔を上げた。
後悔している暇などない。俺が今すべきことは、ただ一つ。
仲間を救い出すための、最高の牙を、この手で創り出すことだ。
俺の瞳に、今まで感じたことのない、暗く、そして熱い炎が宿った。
それは、仲間を傷つけられた怒りが燃え上がらせた、創造の炎だった。
「おかしい……」
露店の経営が軌道に乗って数日後。リオは、帳簿を眺めながら、眉をひそめていた。
「最近、私たちの周りを嗅ぎ回る、怪しい奴らがいるんだよね。商人ギルドの情報網にも、パンデモニウムが何かを企んでるって噂が流れてる」
「奴らも、ただ黙って見ているわけではない、ということか」
カエデが、警戒を強める。
「次は何をしてくるか、分からん。ユー、ゴブ。街中でも、油断はするな」
俺とゴブも、こくりと頷いた。
だが、リオの表情は、ただ警戒しているだけではなかった。その瞳には、商人としての好奇心と、闘争心が燃え上がっていた。
「……チャンスかもしれない」
彼女は、ぽつりと呟いた。
「奴らが何かを企んでるなら、その尻尾を掴む絶好の機会じゃないかな。もし、奴らの不正取引の証拠でも掴めれば、商人ギルドに突き出して、あいつらの評判をガタ落ちさせることができるかもしれない!」
「危険すぎる!」
俺は、思わず声を上げた。
「相手は、アステリアの闇を牛耳るギルドだぞ!下手に首を突っ込めば、何をされるか分からない!」
カエデも、リオの無謀な提案に反対した。
「ユーの言う通りだ、リオ。お前は商人であり、戦闘員ではない。単独での調査など、自殺行為に等しい」
だが、リオの決意は、固かった。
彼女は、俺とカエデの忠告にも、頑として首を縦に振らない。
「大丈夫だって!私だって、ただの商人じゃないんだから。危険を察知する嗅覚と、ヤバい状況から逃げ出すためのスキルくらい、持ってるんだ。それに……」
彼女は、一度言葉を区切り、まっすぐに俺たちを見た。
「これは、私の戦いなんだよ」
その声は、震えていたが、揺るぎない覚悟に満ちていた。
「奴らは、私のビジネスを、そして、私たちの未来を、理不尽に踏みにじろうとしてる。それを、ただ黙ってやられてるなんて、私のプライドが許さない。商人には、商人の戦い方があるんだ。だから、これは私に任せてほしい」
彼女の、そこまで強い覚悟を前にして、俺たちは、もはや何も言えなかった。
俺たちは、彼女の仲間だ。彼女の決意を、尊重し、信じるしかない。
「……分かった」
カエデが、重い口を開いた。
「だが、約束しろ。絶対に、無理はしないと。危険を感じたら、すぐに私たちに連絡を。いいな?」
「うん、約束する!」
リオは、ぱっと顔を輝かせ、力強く頷いた。
その日の夜。
リオは、商人ギルドの情報屋から仕入れたという、一つの情報を手に、宿屋を出ていった。
「今夜、港の第三倉庫で、パンデモニウムが違法アイテムの密売を行うらしい。ちょっと、様子を見てくるだけだから」
彼女は、俺たちに笑顔で手を振ると、夜の闇へと一人で消えていった。
その背中を、俺は言いようのない不安と共に、見送っていた。
カエデも、同じ気持ちだったのだろう。彼女は、窓の外を、厳しい表情で見つめ続けていた。
「……嫌な予感がする」
彼女の呟きが、静かな部屋に重く響いた。
俺たちは、いつでも動けるように、装備を整えたまま、リオからの連絡を待った。
一時間、二時間。時計の針だけが、無情に進んでいく。
リオからの連絡は、ない。
「……おかしい」
カエデが、立ち上がった。
「何かあったのかもしれない。私たちも、港へ向かうぞ」
「はい!」
俺とカエデ、そしてゴブは、宿屋を飛び出した。
夜のアステリアは、昼間の喧騒が嘘のように静まり返っている。俺たちは、石畳を蹴って、港地区へとひた走った。
潮の香りと、魚の生臭い匂い。
第三倉庫は、港の一番奥まった、薄暗い場所にひっそりと建っていた。
周囲には、人の気配はない。ただ、不気味なほどの静寂が、あたりを支配していた。
「リオ!」
カエデが、声を張り上げる。だが、返事はない。
俺たちは、倉庫の重い鉄の扉に手をかけた。鍵はかかっていない。
ぎしり、と錆びた蝶番が軋む音を立てて、扉が開く。
その瞬間、俺たちは、息を呑んだ。
倉庫の中は、空っぽだった。商品も、人の姿も、何一つない。
ただ、広い空間の中央に、ぽつんと、一つの物だけが転がっていた。
それは、リオがいつも被っていた、大きな麦わら帽子。
そして、その横には、一枚の羊皮紙が、短剣で床に突き立てられていた。
カエデが、震える手で、その羊皮紙を抜き取る。
そこには、俺たちを嘲笑うかのような、短い文章が記されていた。
『この女を返してほしくば、お前たちが持つ、全てのユニークモンスターの創造レシピを差し出せ』
『場所は、南の盗賊の砦。一人で来い、モンスターメイカー』
「……罠、だったのか」
俺は、奥歯をギリリと噛み締めた。
密売の情報は、リオをおびき出すための、真っ赤な嘘。奴らは、最初からリオを狙っていたのだ。
俺の甘さが、リオを危険に晒してしまった。
彼女の決意を信じる、などと格好をつけて、結局、最悪の事態を招いてしまった。
「くそっ……!くそおおおおおおっ!」
俺は、やり場のない怒りと後悔に、壁を強く殴りつけた。
ゴブが、心配そうに俺の足元にすり寄ってくる。
カエデは、俺の肩に、静かに手を置いた。
「……自分を責めるな、ユー。今は、後悔している時間はない」
彼女の顔には、悲しみや動揺の色はなかった。そこにあるのは、仲間を傷つけられたことに対する、氷のように冷たく、そして燃え盛るような、静かな怒りだけだった。
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俺は、顔を上げた。
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