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第四十四話 黒幕の影
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俺たちの反撃作戦は、素早く始動した。
目的地は、天空の浮遊島。パンデモニウムの手が及んでいない、唯一無二の素材の宝庫。
「ロックバード、頼む!」
俺の呼びかけに応え、雄大な鳥がアステリアの空へと舞い上がる。俺たちはその背に乗り、一路、あの幻想的な島へと向かった。
眼下に広がるアステリアの街並みを見下ろしながら、リオが悔しそうに呟いた。
「まさか、こんなに早く、またこの島に助けられることになるなんてね」
「奴らは、俺たちが空を飛べることを知らない。それが、俺たちの最大の強みです」
俺が言うと、カエデも頷いた。
「ああ。敵の意表を突く。それは、お前の最も得意とするところだろう、ユー」
浮遊島は、以前と変わらず、静かで美しい姿で俺たちを迎えてくれた。
パンデモニウムに荒らされた鉱脈は、まだ痛々しい傷跡を残していたが、島の持つ強靭な生命力が、少しずつその傷を癒やしているようだった。
俺たちは、リオの鑑定眼を頼りに、ポーションの材料となりそうな植物や鉱石を、片っ端から集めていった。
『星屑の花』、『賢者の魚』の鱗、『虹色胞子キノコ』。そして、島の中心にそびえる水晶の塔から削り取った、『純粋な魔晶石』。
俺のアイテムボックスは、すぐに幻の素材で満杯になった。
アステリアに戻った俺は、早速工房に籠もり、ポーション用の新たなスライム創造に取り掛かった。
今までの比ではない、最高級の素材。俺の創造術も、それに呼応するように、新たな次元へと突入していた。
星屑の花を配合し、どんな傷も瞬時に癒す【スターライト・スライム】。
賢者の魚の鱗を練り込み、MP回復と共に、一時的に魔力を増幅させる【セイジ・スライム】。
虹色胞子キノコを与え、飲むとランダムで有益なバフ効果が得られる【ギャンブル・スライム】。
常識を遥かに超えた、ユニークで強力な効果を持つスライムたちが、次々と誕生していく。
そして、数日後。
アステリアの中央広場に、俺たちの露店は、華々しく復活を遂げた。
『天空の秘薬、限定販売!スライム印が贈る、奇跡のポーション!』
リオが掲げた看板は、以前よりもさらに大きく、自信に満ちていた。
そして、その看板に偽りはなかった。
新商品のポーションは、アステリアの冒険者たちの度肝を抜いた。
瀕死の重傷を一瞬で全快させる回復薬。
魔法使いの火力を倍増させるMPポーション。
飲むたびに効果が変わる、遊び心満載のバフポーション。
そのどれもが、パンデモニウム傘下の商会が売る、凡庸なポーションとは比べ物にならない性能を誇っていた。
価格は、以前よりも高く設定した。だが、客は殺到した。本物の価値を知る冒険者たちは、その対価を支払うことを、決して惜しまなかった。
俺たちの露店は、以前を遥かに上回る大盛況となった。
その噂は、当然、パンデモニウムの耳にも届いていた。
「……面白くないな」
アステリアの裏通りに構えられた、パンデモニウムのギルドハウス。その最上階にある豪華なオフィスで、一人の男が、窓の外の喧騒を眺めながら、不機嫌そうに呟いた。
男は、贅沢な毛皮の椅子に深く腰掛け、テーブルの上の金のゴブレットを弄んでいる。肥満した体躯に、金と宝石で飾り立てられた、悪趣味なほど派手な装備。その顔には、強欲と狡猾さが、油のように浮き出ていた。
彼こそが、今回の市場介入を指示した黒幕。
パンデモニウムの幹部の一人にして、ギルドの金庫番。『強欲』の二つ名を持つ男、ガノバス。
「素材の流通は、完全に止めたはずだ。奴ら、どこからあんな原料を仕入れてやがる?」
ガノバスの問いに、部屋の隅に控えていた部下が、震えながら報告した。
「は、はい……。それが、全く分かりません。奴らの素材の入手ルートは、完全に謎です。まるで、空からでも降ってきたかのように……」
「空だと?」
ガノバスは、鼻で笑った。
「馬鹿を言え。そんなことがあるものか。……まあいい。どんな手を使ったかは知らんが、俺様の商売の邪魔をするとは、いい度胸だ。奴ら、ただの初心者パーティではなかったようだな」
彼は、テーブルの上に置かれた一枚の報告書を手に取った。そこには、俺たちのパーティの情報が、詳細に記されていた。
聖騎士カエデ。商人リオ。そして、モンスターメイカーのユー。
「モンスターメイカー……。あの産廃職が、これほどの騒ぎを起こすとはな。面白い。奴の創り出すユニークモンスター。そして、その創造レシピ。それは、金になる匂いがする」
ガノバスの瞳が、金貨のようにギラリと光った。
「力で奪うのは、下策だ。奴らは、闘技会で名を上げた。下手に手を出せば、ギルドの評判に関わる。もっと、スマートにやる必要がある」
彼は、指に嵌められた宝石だらけの指輪を撫でながら、陰湿な笑みを浮かべた。
「……そうだ。奴らの、一番弱いところを突けばいい」
彼の視線は、報告書の中の一人の少女のプロフィール写真に、ねっとりと注がれていた。
商人、リオ。戦闘能力、皆無。
「この小娘……リオとか言ったか。奴らの金の流れと、情報の要は、こいつだろう。こいつさえ潰せば、あのパーティは機能不全に陥る」
ガノバスは、部下に向かって、命令を下した。その声は、蛇のように冷たく、粘りついていた。
「例の『取引』の準備をしろ。餌は、この小娘だ。あのモンスターメイカーが持つ、ユニークモンスターの創造レシピと引き換えにな」
「は、ははっ!承知いたしました!」
部下は、下卑た笑みを浮かべ、恭しく頭を下げると、部屋から出ていった。
一人残されたガノバスは、ゴブレットに残っていたワインを、一気に飲み干した。
「ククク……。楽しみだ。どんな宝も、どんな才能も、最後は俺様のものになる。それが、この世界の理なのだからな」
強欲な男が仕掛ける、新たな罠。
その黒い影が、何も知らずに勝利に沸く俺たちの足元に、音もなく忍び寄っていた。
俺たちは、この小さな成功が、より大きな災厄の引き金になるということを、まだ知らなかった。
目的地は、天空の浮遊島。パンデモニウムの手が及んでいない、唯一無二の素材の宝庫。
「ロックバード、頼む!」
俺の呼びかけに応え、雄大な鳥がアステリアの空へと舞い上がる。俺たちはその背に乗り、一路、あの幻想的な島へと向かった。
眼下に広がるアステリアの街並みを見下ろしながら、リオが悔しそうに呟いた。
「まさか、こんなに早く、またこの島に助けられることになるなんてね」
「奴らは、俺たちが空を飛べることを知らない。それが、俺たちの最大の強みです」
俺が言うと、カエデも頷いた。
「ああ。敵の意表を突く。それは、お前の最も得意とするところだろう、ユー」
浮遊島は、以前と変わらず、静かで美しい姿で俺たちを迎えてくれた。
パンデモニウムに荒らされた鉱脈は、まだ痛々しい傷跡を残していたが、島の持つ強靭な生命力が、少しずつその傷を癒やしているようだった。
俺たちは、リオの鑑定眼を頼りに、ポーションの材料となりそうな植物や鉱石を、片っ端から集めていった。
『星屑の花』、『賢者の魚』の鱗、『虹色胞子キノコ』。そして、島の中心にそびえる水晶の塔から削り取った、『純粋な魔晶石』。
俺のアイテムボックスは、すぐに幻の素材で満杯になった。
アステリアに戻った俺は、早速工房に籠もり、ポーション用の新たなスライム創造に取り掛かった。
今までの比ではない、最高級の素材。俺の創造術も、それに呼応するように、新たな次元へと突入していた。
星屑の花を配合し、どんな傷も瞬時に癒す【スターライト・スライム】。
賢者の魚の鱗を練り込み、MP回復と共に、一時的に魔力を増幅させる【セイジ・スライム】。
虹色胞子キノコを与え、飲むとランダムで有益なバフ効果が得られる【ギャンブル・スライム】。
常識を遥かに超えた、ユニークで強力な効果を持つスライムたちが、次々と誕生していく。
そして、数日後。
アステリアの中央広場に、俺たちの露店は、華々しく復活を遂げた。
『天空の秘薬、限定販売!スライム印が贈る、奇跡のポーション!』
リオが掲げた看板は、以前よりもさらに大きく、自信に満ちていた。
そして、その看板に偽りはなかった。
新商品のポーションは、アステリアの冒険者たちの度肝を抜いた。
瀕死の重傷を一瞬で全快させる回復薬。
魔法使いの火力を倍増させるMPポーション。
飲むたびに効果が変わる、遊び心満載のバフポーション。
そのどれもが、パンデモニウム傘下の商会が売る、凡庸なポーションとは比べ物にならない性能を誇っていた。
価格は、以前よりも高く設定した。だが、客は殺到した。本物の価値を知る冒険者たちは、その対価を支払うことを、決して惜しまなかった。
俺たちの露店は、以前を遥かに上回る大盛況となった。
その噂は、当然、パンデモニウムの耳にも届いていた。
「……面白くないな」
アステリアの裏通りに構えられた、パンデモニウムのギルドハウス。その最上階にある豪華なオフィスで、一人の男が、窓の外の喧騒を眺めながら、不機嫌そうに呟いた。
男は、贅沢な毛皮の椅子に深く腰掛け、テーブルの上の金のゴブレットを弄んでいる。肥満した体躯に、金と宝石で飾り立てられた、悪趣味なほど派手な装備。その顔には、強欲と狡猾さが、油のように浮き出ていた。
彼こそが、今回の市場介入を指示した黒幕。
パンデモニウムの幹部の一人にして、ギルドの金庫番。『強欲』の二つ名を持つ男、ガノバス。
「素材の流通は、完全に止めたはずだ。奴ら、どこからあんな原料を仕入れてやがる?」
ガノバスの問いに、部屋の隅に控えていた部下が、震えながら報告した。
「は、はい……。それが、全く分かりません。奴らの素材の入手ルートは、完全に謎です。まるで、空からでも降ってきたかのように……」
「空だと?」
ガノバスは、鼻で笑った。
「馬鹿を言え。そんなことがあるものか。……まあいい。どんな手を使ったかは知らんが、俺様の商売の邪魔をするとは、いい度胸だ。奴ら、ただの初心者パーティではなかったようだな」
彼は、テーブルの上に置かれた一枚の報告書を手に取った。そこには、俺たちのパーティの情報が、詳細に記されていた。
聖騎士カエデ。商人リオ。そして、モンスターメイカーのユー。
「モンスターメイカー……。あの産廃職が、これほどの騒ぎを起こすとはな。面白い。奴の創り出すユニークモンスター。そして、その創造レシピ。それは、金になる匂いがする」
ガノバスの瞳が、金貨のようにギラリと光った。
「力で奪うのは、下策だ。奴らは、闘技会で名を上げた。下手に手を出せば、ギルドの評判に関わる。もっと、スマートにやる必要がある」
彼は、指に嵌められた宝石だらけの指輪を撫でながら、陰湿な笑みを浮かべた。
「……そうだ。奴らの、一番弱いところを突けばいい」
彼の視線は、報告書の中の一人の少女のプロフィール写真に、ねっとりと注がれていた。
商人、リオ。戦闘能力、皆無。
「この小娘……リオとか言ったか。奴らの金の流れと、情報の要は、こいつだろう。こいつさえ潰せば、あのパーティは機能不全に陥る」
ガノバスは、部下に向かって、命令を下した。その声は、蛇のように冷たく、粘りついていた。
「例の『取引』の準備をしろ。餌は、この小娘だ。あのモンスターメイカーが持つ、ユニークモンスターの創造レシピと引き換えにな」
「は、ははっ!承知いたしました!」
部下は、下卑た笑みを浮かべ、恭しく頭を下げると、部屋から出ていった。
一人残されたガノバスは、ゴブレットに残っていたワインを、一気に飲み干した。
「ククク……。楽しみだ。どんな宝も、どんな才能も、最後は俺様のものになる。それが、この世界の理なのだからな」
強欲な男が仕掛ける、新たな罠。
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