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第七十七話 絶望の防衛戦
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祭壇から放たれた光は、もはや制御不能な奔流と化していた。俺の意識は、その光の海の中で生まれようとする巨大な生命の奔流に、ただただ翻弄されていた。
「マスター!」
ゴブの悲痛な叫びが、光の向こう側から微かに聞こえる。
仲間たちが、絶体絶命の危機に瀕している。だが俺は動けない。この創造の儀式を、自らの意志で中断することはもはや不可能だった。
「……面白い」
光の奔流を前に一瞬だけ後ずさったメフィスト。だが、彼の顔にはすぐに愉悦の笑みが戻っていた。
「なるほど。創造主の意志とは無関係に、力が暴走を始めたというわけか。ますます興味深い。この力がどのような形で結実するのか。特等席で見届けさせてもらおうじゃないか」
彼は、杖を構え直した。
「だが、その前に。目障りな虫けらどもは掃除しておく必要があるな」
彼の冷たい視線が、床に倒れたリオとゴブ、そして祭壇の入り口で辛うじて立ち上がろうとしている最後の抵抗者たちへと向けられた。
「……まだ、だ」
瓦礫の中から、カエデがふらつきながらも立ち上がった。その白銀の鎧は見るも無残に砕け散り、美しい銀髪は血と泥にまみれている。
「お前のような外道に……私たちの希望を渡してたまるか……!」
「そうだぜ……!」
彼女の隣で、ゼノンもまたワイバーンの巨体を支えに立ち上がっていた。彼の真紅の鎧もまた無数の亀裂が走り、その口の端からは血が流れている。
「……俺は、貴様のような三流の悪党に負けるわけにはいかんのだ」
生き残っていたのは、二人だけ。
だが、その瞳に宿る光は決して消えてはいなかった。
「……健気だねえ」
メフィストは、心底楽しそうに肩をすくめた。
「だが、満身創痍の君たち二人に何ができるというのかな?」
彼が指を鳴らす。
背後に控えていた親衛隊『黒騎士団』の重騎士たちが、一斉に剣を抜き放ち、じりじりと二人へと包囲網を狭めていく。
「イグニス!まだ飛べるか!」
ゼノンが、相棒に問いかける。
ワイバーンは、傷ついた体でそれでも主に応えるように、一声低く唸った。
「カエデ殿!援護は期待するな!各自、生き残ることだけを考えろ!」
「言われるまでもない!」
二人のトッププレイヤーが、背中合わせに最後の陣形を組む。
絶望的な戦力差。
だが、彼らの目的は勝利ではなかった。
『時間を、稼ぐ』
ただそれだけのために。
俺の創造が完了する、その瞬間まで。この絶お望的な戦場で生き残り、そして敵を食い止める。
それが彼らに残された、最後の、そして唯一の使命だった。
「行け」
メフィストの冷たい号令。
黒騎士団が、黒い鉄の津波となって二人へと殺到した。
「はあああああっ!」
カエデのレイピアが、閃光となって舞う。聖なる光が黒騎士の鎧を貫き、一人、また一人とその歩みを止めていく。
だが、敵の数はあまりにも多い。一人の敵を倒す間に、三方から新たな刃が彼女の体を襲う。
「焼き払え、イグニス!」
ゼノンもまた、ワイバーンから紅蓮のブレスを放たせ、敵の波を薙ぎ払っていく。
だが、黒騎士団はただの雑兵ではない。パンデモニウムの最強の精鋭。彼らは巧みな連携でブレスの直撃を避け、散開し、波状攻撃を仕掛けてくる。
傷つき、消耗しきった二人の英雄は、圧倒的な数の暴力の前に、徐々に、徐々に追い詰められていった。
ガキン!と甲高い音。
カエデのレイピアが、黒騎士の重い剣を受け止めきれず、その手から弾き飛ばされた。
「しまっ……!」
その一瞬の無防備。
黒騎士の剣が、無慈悲に彼女の胸へと振り下ろされる。
「――させん!」
ゼノンが、イグニスを駆りカエデの前に割り込んだ。
ワイバーンの巨大な体が、盾となる。
だが、その代償は大きかった。
数十本の剣と槍が、イグニスの傷ついた体に容赦なく突き刺さっていく。
「グルオオオオオオオ……!」
ワイバーンが、悲痛な叫びを上げた。
その巨体は力なく傾き、やがて光の粒子となって消滅していった。
相棒を失ったゼノンもまた地面へと落下し、黒騎士たちに完全に包囲された。
「……すまん、イグニス」
ゼノンは、何も映らない虚空に向かって静かに呟いた。
万事休す。
カエデもゼノンも、もはや抵抗する力は残っていなかった。
「……終わりだね」
メフィストが、その光景を満足げに眺め、勝利を宣言した。
彼の視線が、再び祭壇で光に包まれる俺へと向けられる。
「さて、と。邪魔者もいなくなったことだし、いよいよクライマックスと行こうか」
彼が、ゆっくりとこちらへ歩み寄ってくる。
その、時だった。
祭壇から放たれていた純白の光が。
ふっ、と、その輝きを失った。
まるで嵐の前の静けさのように。
凄まじい魔力の奔流が、ぴたりと止まったのだ。
創造は、終わった。
成功か、失敗か。
静まり返る祭壇の間。
誰もが固唾を飲んで、その中心を見つめる。
やがて光が完全に消え去った祭壇の中央。
そこに、一つの巨大な影がゆっくりと立ち上がった。
それは、もはや俺が想像したどんなモンスターの姿とも違っていた。
それは、生命の究極の形。
それは、伝説の始まり。
俺たちの最後の希望が、ついにその産声を上げたのだ。
「マスター!」
ゴブの悲痛な叫びが、光の向こう側から微かに聞こえる。
仲間たちが、絶体絶命の危機に瀕している。だが俺は動けない。この創造の儀式を、自らの意志で中断することはもはや不可能だった。
「……面白い」
光の奔流を前に一瞬だけ後ずさったメフィスト。だが、彼の顔にはすぐに愉悦の笑みが戻っていた。
「なるほど。創造主の意志とは無関係に、力が暴走を始めたというわけか。ますます興味深い。この力がどのような形で結実するのか。特等席で見届けさせてもらおうじゃないか」
彼は、杖を構え直した。
「だが、その前に。目障りな虫けらどもは掃除しておく必要があるな」
彼の冷たい視線が、床に倒れたリオとゴブ、そして祭壇の入り口で辛うじて立ち上がろうとしている最後の抵抗者たちへと向けられた。
「……まだ、だ」
瓦礫の中から、カエデがふらつきながらも立ち上がった。その白銀の鎧は見るも無残に砕け散り、美しい銀髪は血と泥にまみれている。
「お前のような外道に……私たちの希望を渡してたまるか……!」
「そうだぜ……!」
彼女の隣で、ゼノンもまたワイバーンの巨体を支えに立ち上がっていた。彼の真紅の鎧もまた無数の亀裂が走り、その口の端からは血が流れている。
「……俺は、貴様のような三流の悪党に負けるわけにはいかんのだ」
生き残っていたのは、二人だけ。
だが、その瞳に宿る光は決して消えてはいなかった。
「……健気だねえ」
メフィストは、心底楽しそうに肩をすくめた。
「だが、満身創痍の君たち二人に何ができるというのかな?」
彼が指を鳴らす。
背後に控えていた親衛隊『黒騎士団』の重騎士たちが、一斉に剣を抜き放ち、じりじりと二人へと包囲網を狭めていく。
「イグニス!まだ飛べるか!」
ゼノンが、相棒に問いかける。
ワイバーンは、傷ついた体でそれでも主に応えるように、一声低く唸った。
「カエデ殿!援護は期待するな!各自、生き残ることだけを考えろ!」
「言われるまでもない!」
二人のトッププレイヤーが、背中合わせに最後の陣形を組む。
絶望的な戦力差。
だが、彼らの目的は勝利ではなかった。
『時間を、稼ぐ』
ただそれだけのために。
俺の創造が完了する、その瞬間まで。この絶お望的な戦場で生き残り、そして敵を食い止める。
それが彼らに残された、最後の、そして唯一の使命だった。
「行け」
メフィストの冷たい号令。
黒騎士団が、黒い鉄の津波となって二人へと殺到した。
「はあああああっ!」
カエデのレイピアが、閃光となって舞う。聖なる光が黒騎士の鎧を貫き、一人、また一人とその歩みを止めていく。
だが、敵の数はあまりにも多い。一人の敵を倒す間に、三方から新たな刃が彼女の体を襲う。
「焼き払え、イグニス!」
ゼノンもまた、ワイバーンから紅蓮のブレスを放たせ、敵の波を薙ぎ払っていく。
だが、黒騎士団はただの雑兵ではない。パンデモニウムの最強の精鋭。彼らは巧みな連携でブレスの直撃を避け、散開し、波状攻撃を仕掛けてくる。
傷つき、消耗しきった二人の英雄は、圧倒的な数の暴力の前に、徐々に、徐々に追い詰められていった。
ガキン!と甲高い音。
カエデのレイピアが、黒騎士の重い剣を受け止めきれず、その手から弾き飛ばされた。
「しまっ……!」
その一瞬の無防備。
黒騎士の剣が、無慈悲に彼女の胸へと振り下ろされる。
「――させん!」
ゼノンが、イグニスを駆りカエデの前に割り込んだ。
ワイバーンの巨大な体が、盾となる。
だが、その代償は大きかった。
数十本の剣と槍が、イグニスの傷ついた体に容赦なく突き刺さっていく。
「グルオオオオオオオ……!」
ワイバーンが、悲痛な叫びを上げた。
その巨体は力なく傾き、やがて光の粒子となって消滅していった。
相棒を失ったゼノンもまた地面へと落下し、黒騎士たちに完全に包囲された。
「……すまん、イグニス」
ゼノンは、何も映らない虚空に向かって静かに呟いた。
万事休す。
カエデもゼノンも、もはや抵抗する力は残っていなかった。
「……終わりだね」
メフィストが、その光景を満足げに眺め、勝利を宣言した。
彼の視線が、再び祭壇で光に包まれる俺へと向けられる。
「さて、と。邪魔者もいなくなったことだし、いよいよクライマックスと行こうか」
彼が、ゆっくりとこちらへ歩み寄ってくる。
その、時だった。
祭壇から放たれていた純白の光が。
ふっ、と、その輝きを失った。
まるで嵐の前の静けさのように。
凄まじい魔力の奔流が、ぴたりと止まったのだ。
創造は、終わった。
成功か、失敗か。
静まり返る祭壇の間。
誰もが固唾を飲んで、その中心を見つめる。
やがて光が完全に消え去った祭壇の中央。
そこに、一つの巨大な影がゆっくりと立ち上がった。
それは、もはや俺が想像したどんなモンスターの姿とも違っていた。
それは、生命の究極の形。
それは、伝説の始まり。
俺たちの最後の希望が、ついにその産声を上げたのだ。
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