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第八十三話 聖騎士の誓い
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煉獄の間に、金属がぶつかり合う甲高い音と炎が爆ぜる轟音が響き渡る。
カエデとサラマンダー。二人の戦いは、常人には目で追うことすら困難な超高速の領域に達していた。
「遅い!遅いぞカエデ!お前の剣は昔から変わらんな!優等生ぶった、つまらん剣だ!」
サラマンダーの巨大な戦斧が、嵐のようにカエデに襲いかかる。その一撃一撃は地面を砕き、溶岩を天高く噴き上がらせるほどの圧倒的なパワーを秘めていた。
カエデは、その猛攻を紙一重で避け、あるいはレイピアで受け流していく。だが武器の重量差は歴然だった。彼女の体は、一撃を受け止めるたびに大きく後退させられてしまう。
「どうした!お前の正義はその程度か!俺の力と富の前では、そんなものは無力だということを教えてやる!」
サラマンダーは、カエデを精神的にも追い詰めようと下劣な挑発を繰り返す。
俺たちは、その戦いを固唾を飲んで見守ることしかできなかった。
「カエデさん……!」
リオが祈るように手を握りしめている。
「マスター……。カエデ様は大丈夫でしょうか」
ゴブも、不安そうな顔で二人の戦いを見つめている。
大丈夫だ。俺は心の中で強く念じた。
彼女は俺が知る誰よりも強く、そして気高い聖騎士だ。こんな男に負けるはずがない。
戦いは、徐々にサラマンダーが優勢になっていった。
カエデの動きは確かに速く、正確だ。だがサラマンダーは彼女の剣筋を全て読み切っているかのようだった。元・師弟。彼はカエデの戦い方を、知り尽くしているのだ。
「そこだ!」
サラマンダーの戦斧が、カエデのレイピアを弾き飛ばした。
がら空きになった胴体に、炎を纏った拳が叩き込まれる。
「ぐっ……!」
カエデの体がくの字に折れ曲がり、後方へと吹き飛ばされた。HPゲージが一気に赤く染まる。
「終わりだ、カエデ!」
サラマンダーが、とどめを刺そうと戦斧を振りかぶった。
その、瞬間。
「……まだだ」
地面に膝をついていたはずのカエデが、呟いた。
彼女は吹き飛ばされた勢いを利用し、体を回転させサラマンダーの死角へと滑り込んでいた。そして落としたはずのレイピアを、いつの間にかその手に取り戻している。
「なっ!?」
サラマンダーが、驚愕の声を上げる。
「あなたの剣は確かに、私に多くのことを教えてくれた」
カエデは静かに、しかしはっきりと言った。その声にはもう迷いはなかった。
「だが、あなたは忘れている。私があなたと別れた後、誰と出会い、どんな戦いを乗り越えてきたのかを」
彼女の脳裏に浮かんでいるのは、きっと俺たちとの冒険の日々。
不遇職だと笑われながらも、常識外れの発想で道を切り開いてきたモンスターメイカー。
金にがめついが誰よりも仲間思いで、真実を見抜く瞳を持つ商人。
そして生まれたばかりでありながら、純粋な心でマスターを守ろうとする小さな魔法使い。
「私はもう一人ではない。私の剣はもはや、あなたから教わっただけの未熟な剣ではないのだ!」
カエデの全身から、今までにないほど眩い聖なるオーラが溢れ出した。
それは仲間との絆が彼女の魂を、さらなる高みへと昇華させた証。
「これが私の、今の全力だ!」
彼女のレイピアが、無数の光の残像を描き出す。
それは俺も、そしてサラマンダーですら見たことのない新たな剣技。
スキル、『ホーリー・ノヴァ』。
白銀の閃光が、爆発した。
数十、いや数百の光の突きが、サラマンダーの全身を同時に貫いた。
彼の自慢の竜鱗鎧が、まるで紙のようにたやすく切り裂かれていく。
「が……あ……あ……?」
サラマンダーは、何が起こったのか理解できないという顔で自分の体を見下ろした。
その全身には無数の光の穴が空き、そこから炎ではなく光の粒子が噴き出していた。
「馬鹿な……。俺が……。この俺が……」
彼は信じられないというように、よろめいた。そしてその巨体はゆっくりとマグマの池の中へと崩れ落ちていく。
ジュウッ、という音と共に彼の体は光となり、そして完全に消滅した。
静寂。
後に残されたのは、肩で荒い息を繰り返すカエデの姿だけだった。
彼女はゆっくりとレイピアを鞘に収めた。その顔には勝利の喜びも憎しみの解放もない。ただ、一つの過去に完全に決別を告げた者の、静かで晴れやかな表情だけが浮かんでいた。
「……行こう」
彼女は俺たちの方を振り返った。
「私たちの戦いは、まだ終わっていない」
俺たちは力強く頷いた。
一人の騎士がその過去を乗り越え、真の強さを手に入れた。
その姿は俺たちの胸に、熱いものを残していた。
俺たちは煉獄の間の奥にある、次なる階層へと続く扉へと足を踏み入れた。
パーティの絆はまた一つ、強く、そして固く結ばれたのだった。
カエデとサラマンダー。二人の戦いは、常人には目で追うことすら困難な超高速の領域に達していた。
「遅い!遅いぞカエデ!お前の剣は昔から変わらんな!優等生ぶった、つまらん剣だ!」
サラマンダーの巨大な戦斧が、嵐のようにカエデに襲いかかる。その一撃一撃は地面を砕き、溶岩を天高く噴き上がらせるほどの圧倒的なパワーを秘めていた。
カエデは、その猛攻を紙一重で避け、あるいはレイピアで受け流していく。だが武器の重量差は歴然だった。彼女の体は、一撃を受け止めるたびに大きく後退させられてしまう。
「どうした!お前の正義はその程度か!俺の力と富の前では、そんなものは無力だということを教えてやる!」
サラマンダーは、カエデを精神的にも追い詰めようと下劣な挑発を繰り返す。
俺たちは、その戦いを固唾を飲んで見守ることしかできなかった。
「カエデさん……!」
リオが祈るように手を握りしめている。
「マスター……。カエデ様は大丈夫でしょうか」
ゴブも、不安そうな顔で二人の戦いを見つめている。
大丈夫だ。俺は心の中で強く念じた。
彼女は俺が知る誰よりも強く、そして気高い聖騎士だ。こんな男に負けるはずがない。
戦いは、徐々にサラマンダーが優勢になっていった。
カエデの動きは確かに速く、正確だ。だがサラマンダーは彼女の剣筋を全て読み切っているかのようだった。元・師弟。彼はカエデの戦い方を、知り尽くしているのだ。
「そこだ!」
サラマンダーの戦斧が、カエデのレイピアを弾き飛ばした。
がら空きになった胴体に、炎を纏った拳が叩き込まれる。
「ぐっ……!」
カエデの体がくの字に折れ曲がり、後方へと吹き飛ばされた。HPゲージが一気に赤く染まる。
「終わりだ、カエデ!」
サラマンダーが、とどめを刺そうと戦斧を振りかぶった。
その、瞬間。
「……まだだ」
地面に膝をついていたはずのカエデが、呟いた。
彼女は吹き飛ばされた勢いを利用し、体を回転させサラマンダーの死角へと滑り込んでいた。そして落としたはずのレイピアを、いつの間にかその手に取り戻している。
「なっ!?」
サラマンダーが、驚愕の声を上げる。
「あなたの剣は確かに、私に多くのことを教えてくれた」
カエデは静かに、しかしはっきりと言った。その声にはもう迷いはなかった。
「だが、あなたは忘れている。私があなたと別れた後、誰と出会い、どんな戦いを乗り越えてきたのかを」
彼女の脳裏に浮かんでいるのは、きっと俺たちとの冒険の日々。
不遇職だと笑われながらも、常識外れの発想で道を切り開いてきたモンスターメイカー。
金にがめついが誰よりも仲間思いで、真実を見抜く瞳を持つ商人。
そして生まれたばかりでありながら、純粋な心でマスターを守ろうとする小さな魔法使い。
「私はもう一人ではない。私の剣はもはや、あなたから教わっただけの未熟な剣ではないのだ!」
カエデの全身から、今までにないほど眩い聖なるオーラが溢れ出した。
それは仲間との絆が彼女の魂を、さらなる高みへと昇華させた証。
「これが私の、今の全力だ!」
彼女のレイピアが、無数の光の残像を描き出す。
それは俺も、そしてサラマンダーですら見たことのない新たな剣技。
スキル、『ホーリー・ノヴァ』。
白銀の閃光が、爆発した。
数十、いや数百の光の突きが、サラマンダーの全身を同時に貫いた。
彼の自慢の竜鱗鎧が、まるで紙のようにたやすく切り裂かれていく。
「が……あ……あ……?」
サラマンダーは、何が起こったのか理解できないという顔で自分の体を見下ろした。
その全身には無数の光の穴が空き、そこから炎ではなく光の粒子が噴き出していた。
「馬鹿な……。俺が……。この俺が……」
彼は信じられないというように、よろめいた。そしてその巨体はゆっくりとマグマの池の中へと崩れ落ちていく。
ジュウッ、という音と共に彼の体は光となり、そして完全に消滅した。
静寂。
後に残されたのは、肩で荒い息を繰り返すカエデの姿だけだった。
彼女はゆっくりとレイピアを鞘に収めた。その顔には勝利の喜びも憎しみの解放もない。ただ、一つの過去に完全に決別を告げた者の、静かで晴れやかな表情だけが浮かんでいた。
「……行こう」
彼女は俺たちの方を振り返った。
「私たちの戦いは、まだ終わっていない」
俺たちは力強く頷いた。
一人の騎士がその過去を乗り越え、真の強さを手に入れた。
その姿は俺たちの胸に、熱いものを残していた。
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