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二章~闘技場にて~
対戦相手
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「おい。これのどこが『丁重』なんだよ!?」
ポールを掴んだまま、ネズミが吼える。
鉄製の格子上の壁で、外から丸見えの状態である。
「まるで、牢屋じゃねぇか!」
先ほどの指揮官の男が悪びれもせずににこやかに宣う。
「いや~、申し訳ない。ここを目的地にするやつは最初は威勢が良いんだが、ここの闘技場の説明をすると皆、一様に『そんな事、聞いてなかった』だの『やっぱり、帰る』だの、直ぐに逃げるのでね…」
「説明?」豊が不思議そうに聞き返す。
「あぁ、君達にも今から説明しよう。」
そういうと指揮官は牢屋の前にあるテーブルを教卓代わりにこちらを見つめる。
『良く来たな、諸君!ここでは負ければ即【死】となる、強き者しか必要とされない由緒正しき闘技場である!』
「負ければ…死。」呟く龍。
『君達は三人!この闘技場の我々が抱えている戦士も三人!君達には今から彼達と一対一で戦ってもらい、2勝すれば紛うことなき強者と認めようではないか!存分に、その力を発揮したまえ!』
そう宣言し、まるで政治家のような独白は唐突に終わりを告げた。
「なるほど、勝ちゃ良いんだな。要するに。」拳同士を合わせ、ヤル気満々のネズミ。
ニヤリと笑い、指揮官の男が返事をする。
「素晴らしいほど、勇敢だ。その通り、勝たなければ『何も』始まらないのだよ。」
「それで、対戦相手はどこに?」
質問をした豊に対し、牢屋のような部屋の鍵を開け応じる指揮官。
「まぁ、とりあえずは理解してくれたようだし、君達は逃げる事もしなそうだ。ここは地下一階。二階に選手の控室があるから、その途中で逢うこともあるかもしれない。開始は一時間後だから好きに過ごすと良い。」
そうして地下から一階に上がり、思った以上の人の多さに驚く。
「えっ、何でこんなに人がいるんだ?」ガヤガヤと密集している老若男女、様々な人々を見ながらネズミが首をかしげる。
「俺達がいた壁側には人っ子一人、居ませんでしたからねぇ…」お上りさんのように豊も答える。
闘技場の名の通り、室内全部がレンガ造りで出来ており、左右の道は微妙にカーブされており突き当たりは見えない。
所々の壁、頭より上の辺りにモニターの様な物が鎮座しているが、今はまだ真っ黒なまま何も映し出されていない。
「どうやら、壁の向こう、そこかしこに出口があったのかもしれねぇな。」先程、連行されたのを思い出し龍が独り言ちた。
壁で囲まれた所から牢屋の様な部屋に連れていかれる為、地面が正方形にごっそりと持ち上げられ、中に階段が隠れており、そこを通って闘技場内部に入る事が出来たのだ。
「っていうか、俺達。名前言ってませんよね?…あれは?」
豊が指で示した方向を見ると、モニターが明るくなり、文字が表れた。
『チャンピオン→黒炎、白氷、犬鳴』オッズ--
『挑戦者→龍、鼠、豊』オッズ--
「ヤられたな。」龍が呟き、二人が龍を見やる。
「知ってた…って事ですか?」豊が質問する。
頷く龍と豊を交互に見ながら焦れた様にネズミが叫ぶ!
「説明してよ!?」
「ここは『あいつら』の施設の一つみてぇだな。」
「ここが?」
「あの変な画面に俺達の名前が書かれてる。」
「俺達の名前を教えても居ないのに。」
「という事はさっきの奴らは俺達を知ってたって事なの?」
「そうだ。」
「で、俺達の事を知ってると言うと…」
「あいつら…ってことなんだね。」
『いやいや、お主らが有名。っていう可能性もあるぞ。』
突然話しかけられ、そちらを振り向く。
スキンヘッド頭に、顔には年齢のせいか皺が目立ち、細身なのに有無を云わせぬ圧がある老人が立っていた。
「黒炎だ!」
「今日も頼むぞ!俺はお前のお蔭で生活出来てんだからよ!」
「白氷さんは一緒じゃないの!?」
ゆっくりと三人に近付いていく、老人。
「自己紹介は要らなそうじゃな。」
「あんたが黒炎かい?」
「そうじゃ。」
「てめぇは『あいつら』の仲間か!?」ネズミが黒炎に向かって叫ぶが、そちらをチラリと一瞥して龍に目を向ける。
「悪いが儂達も負けられないんでな。手加減はせんぞ。」
「いらねぇよ。」
「まぁ、儂には加減する手は無いんじゃがな。」ヒャッヒャッヒャッと小馬鹿にしたように笑う黒炎の腕は、肘から先がなかった。
「そんなんで戦えんのかよ、ジジイ。」
横目でネズミを見つつ、ため息をつく黒炎。
「龍よ、この小僧…」
「グフッ!」突然、膝をつくネズミ。
「ネズミさん!」豊が叫ぶ。
「礼儀がなっとらんぞ、しっかり躾とかんといかんなぁ…」
「あんたは足癖が悪そうだけどな。」
「違いないわい。」
ヒャッヒャッヒャッ、と高笑いをしたまま龍の横をすり抜け黄色い声援を受けながら去っていった。
画面の数値が目まぐるしく動いていくのを横目に見ながら龍が2人に問い掛けた。
「今の。2人とも見えたか。」
「いや、俺は何も。」動揺しながら豊が答える。
「…っ、多分肝臓蹴り。しかも、つま先を入れてきたと思うけど、見えなかった。」息も絶え絶えに呟く鼠。
「どちらにせよ、手強いのは変わらなさそうだな。」
『チャンピオン→黒炎、白氷、犬鳴』オッズ1.3
『挑戦者→龍、鼠、豊』オッズ56.3
ポールを掴んだまま、ネズミが吼える。
鉄製の格子上の壁で、外から丸見えの状態である。
「まるで、牢屋じゃねぇか!」
先ほどの指揮官の男が悪びれもせずににこやかに宣う。
「いや~、申し訳ない。ここを目的地にするやつは最初は威勢が良いんだが、ここの闘技場の説明をすると皆、一様に『そんな事、聞いてなかった』だの『やっぱり、帰る』だの、直ぐに逃げるのでね…」
「説明?」豊が不思議そうに聞き返す。
「あぁ、君達にも今から説明しよう。」
そういうと指揮官は牢屋の前にあるテーブルを教卓代わりにこちらを見つめる。
『良く来たな、諸君!ここでは負ければ即【死】となる、強き者しか必要とされない由緒正しき闘技場である!』
「負ければ…死。」呟く龍。
『君達は三人!この闘技場の我々が抱えている戦士も三人!君達には今から彼達と一対一で戦ってもらい、2勝すれば紛うことなき強者と認めようではないか!存分に、その力を発揮したまえ!』
そう宣言し、まるで政治家のような独白は唐突に終わりを告げた。
「なるほど、勝ちゃ良いんだな。要するに。」拳同士を合わせ、ヤル気満々のネズミ。
ニヤリと笑い、指揮官の男が返事をする。
「素晴らしいほど、勇敢だ。その通り、勝たなければ『何も』始まらないのだよ。」
「それで、対戦相手はどこに?」
質問をした豊に対し、牢屋のような部屋の鍵を開け応じる指揮官。
「まぁ、とりあえずは理解してくれたようだし、君達は逃げる事もしなそうだ。ここは地下一階。二階に選手の控室があるから、その途中で逢うこともあるかもしれない。開始は一時間後だから好きに過ごすと良い。」
そうして地下から一階に上がり、思った以上の人の多さに驚く。
「えっ、何でこんなに人がいるんだ?」ガヤガヤと密集している老若男女、様々な人々を見ながらネズミが首をかしげる。
「俺達がいた壁側には人っ子一人、居ませんでしたからねぇ…」お上りさんのように豊も答える。
闘技場の名の通り、室内全部がレンガ造りで出来ており、左右の道は微妙にカーブされており突き当たりは見えない。
所々の壁、頭より上の辺りにモニターの様な物が鎮座しているが、今はまだ真っ黒なまま何も映し出されていない。
「どうやら、壁の向こう、そこかしこに出口があったのかもしれねぇな。」先程、連行されたのを思い出し龍が独り言ちた。
壁で囲まれた所から牢屋の様な部屋に連れていかれる為、地面が正方形にごっそりと持ち上げられ、中に階段が隠れており、そこを通って闘技場内部に入る事が出来たのだ。
「っていうか、俺達。名前言ってませんよね?…あれは?」
豊が指で示した方向を見ると、モニターが明るくなり、文字が表れた。
『チャンピオン→黒炎、白氷、犬鳴』オッズ--
『挑戦者→龍、鼠、豊』オッズ--
「ヤられたな。」龍が呟き、二人が龍を見やる。
「知ってた…って事ですか?」豊が質問する。
頷く龍と豊を交互に見ながら焦れた様にネズミが叫ぶ!
「説明してよ!?」
「ここは『あいつら』の施設の一つみてぇだな。」
「ここが?」
「あの変な画面に俺達の名前が書かれてる。」
「俺達の名前を教えても居ないのに。」
「という事はさっきの奴らは俺達を知ってたって事なの?」
「そうだ。」
「で、俺達の事を知ってると言うと…」
「あいつら…ってことなんだね。」
『いやいや、お主らが有名。っていう可能性もあるぞ。』
突然話しかけられ、そちらを振り向く。
スキンヘッド頭に、顔には年齢のせいか皺が目立ち、細身なのに有無を云わせぬ圧がある老人が立っていた。
「黒炎だ!」
「今日も頼むぞ!俺はお前のお蔭で生活出来てんだからよ!」
「白氷さんは一緒じゃないの!?」
ゆっくりと三人に近付いていく、老人。
「自己紹介は要らなそうじゃな。」
「あんたが黒炎かい?」
「そうじゃ。」
「てめぇは『あいつら』の仲間か!?」ネズミが黒炎に向かって叫ぶが、そちらをチラリと一瞥して龍に目を向ける。
「悪いが儂達も負けられないんでな。手加減はせんぞ。」
「いらねぇよ。」
「まぁ、儂には加減する手は無いんじゃがな。」ヒャッヒャッヒャッと小馬鹿にしたように笑う黒炎の腕は、肘から先がなかった。
「そんなんで戦えんのかよ、ジジイ。」
横目でネズミを見つつ、ため息をつく黒炎。
「龍よ、この小僧…」
「グフッ!」突然、膝をつくネズミ。
「ネズミさん!」豊が叫ぶ。
「礼儀がなっとらんぞ、しっかり躾とかんといかんなぁ…」
「あんたは足癖が悪そうだけどな。」
「違いないわい。」
ヒャッヒャッヒャッ、と高笑いをしたまま龍の横をすり抜け黄色い声援を受けながら去っていった。
画面の数値が目まぐるしく動いていくのを横目に見ながら龍が2人に問い掛けた。
「今の。2人とも見えたか。」
「いや、俺は何も。」動揺しながら豊が答える。
「…っ、多分肝臓蹴り。しかも、つま先を入れてきたと思うけど、見えなかった。」息も絶え絶えに呟く鼠。
「どちらにせよ、手強いのは変わらなさそうだな。」
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