離縁された妻ですが、旦那様は本当の力を知らなかったようですね?

椿蛍

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第4章

7 王宮の発表

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『体調の優れない国王陛下に代わり、第一王子を国王代行とする』

 王宮から、そんな発表があったのは、私がルーカス様と顔を合わせた次の日のことだった。
 リアムの式典は中止となり、王宮からはなに一つ説明がなく、勘のいい人間はなにがあったか、だいたいの事情を察した。

 ――第一王子の謀反ではないか、と。

 私の店は『臨時休業中』の札を掲げた。
 この発表によって、フランとラーシュは激しく動揺し、仕事どころではなくなった。

「どうして、お父さまが国王代行になるんですか? おじいさまが次の王に選んだったのはリアム様です!」
「サーラを妃にしたいって? サーラは王宮へ戻らなきゃいけないってこと?」

 昨日、王宮での出来事を二人に説明した。
 けれど、ラーシュの手紙が燃されたことだけは、どうしても言えなかった。
 ラーシュが傷つくのを避けたいと思っていたし、ルーカス様の【魔力なし】に持つ偏見は、昔のままだとわかったからだ。
 私を妃に望むのもなぜなのかわかってる。
『リアムが唯一親しい女性』で、気に入らないという理由からだ――

「王宮へ戻るつもりはありません。ルーカス様との再婚の可能性はゼロです。無です、無!」

 私がこれ以上なくはっきりとした口調で言うと、フランとラーシュはホッとした顔をした。
 
「これから、ルーカス様にどうやって対抗していくか話し合いましょう」

 店の大きなテーブルに紅茶のポット、ミルクティー用のミルクとクッキーを並べた。
 そして、キャンディーがたくさん入ったガラス瓶を置く。
 これで準備はバッチリだ。
 私は商会の主として、かっこいいポーズをキメて宣言した。

「アールグレーン商会の戦略会議を始めます!」
「戦略会議? 訂正しろ。これはただのお茶会だ」
「リアム! 出鼻をくじかないでください」

 リアムだって、朝から宮廷魔術師長の仕事をサボり、私の店へやってきた。
 しかも、珍しく黒い軍服ではなく、黒の上着とシャツ、ズボンという王子らしからぬ簡素な装いだった。
  
 ――もしかして、王子の身分を隠すためのお忍びスタイルですか?

 そうだとしたら、リアムに教えてあげたい。
 お日様の下で着る服の色は、黒だけじゃないんですよと。
 また運悪く天気がいい日で、気持ちがいいくらい澄んだ青い空が広がっていた。
 秋を感じる清々しい空気の中で、全身黒色で統一した服装は怪しさ全開。
 お忍びなのに、少しも忍べてない服装はどうかと思う。
 
「今日は休みじゃないですよね? 宮廷魔術師長の職を放棄して大丈夫ですか?」
「王宮へ行っても、監視が付きまとって面倒だ。たまった休みを消化しているだけで、文句を言われる筋合いはない」

 ティーカップに紅茶を注ぎ、サボってないアピールをしているリアムに、どうぞと差し出した。

「監視がいるなんて、大変ですね」
「俺はなんとでもなる。大変なのはそっちだろう。あの場はうまく切り抜けたが、アールグレーン公爵は大喜びで娘を差し出すだろう」
「勘当しておいて、そんな都合のいい……」
「安心しろ。いざとなったら、宮廷魔術師たちを倒してでも、助けに行ってやる」

 なぜだろう。
 リアムの王子らしい発言だったのに、キュンもドキッもなく、不安しか感じないのは……
 王宮を破壊するリアムの姿が容易に想像できた。

「でも、正直言って、リアムは国王陛下を助けるために魔術を使って王宮を破壊するかと思っていました」
「それはない。父上と約束したからな。自分になにがあっても、兄上と争うなと厳命されている」
「は、はぁ……。厳命……」

 ――国王陛下は息子の性格をしっかり理解してますね。

 国王陛下との約束がなかったら、あの場でルーカス様をボコボコにして大暴走。
 今ごろ、王宮がなくなっていたかもしれない――下手すれば王都も。
 王都を破壊すれば、人々の心はリアムから離れてしまう。
 ヴィフレア王になるであろうリアムに、そんなことをさせてはいけない。

「私は……ずっと前から、リアムに王様になってほしいって思っていました」

 私が大真面目な顔でリアムに言った。
 いつか、ちゃんとリアムに言いたいと思っていた。
 リアムはティーカップを置き、私を見つめた。

「私とも約束してください。誰にも恥じることなく、堂々と王様になるって!」
「わかった。約束しよう」

 ――リアムはまだ王位を諦めてない。
 
 私も諦めていない。
 必ず、王位を取り戻し、リアムをヴィフレア王にしてみせる!
 このヴィフレア王国のためにも。
 
「だが、今は父上と王妃がどうしているか気になる。サンダール公爵の息がかかった人間しか、部屋に近づけない」
「心配ですよね……」
「ああ」

 リアムは不機嫌な顔でティーカップを手にし、紅茶を一口飲んだ。
 紅茶を口にしたリアムの表情が、少しだけ和らいだ。

「質のいい茶葉だな」

 ふふっと私は笑った。
 意味もなくお茶やお菓子を用意したわけではなかった。
 美味しいものを食べれば、自然と表情が和らぐ。
 リアムの怖い顔が、普通に見えて、ホッとした。
 私たちの前で、リアムは動揺したそぶりは見せないけれど、母親を亡くしたリアムにとって、国王陛下は唯一の家族。
 平気なわけがない。

「表通りの高級店で買ったんです。王室御用達って書いてあったので、どんな味か気になったんですよね」

 これは、特別な時に淹れようと取っておいた茶葉だった。
 こんな早くに特別な紅茶の葉を使う予定ではなかったけど、みんながいる時に使うのが一番いい気がして、封を開けた。

「サーラ。のんきに紅茶を飲んでる場合じゃないよ!」
「フラン。紅茶どころではないのはたしかですが、騒いでも状況は変わりません」

 椅子から立ち上がったフランに、座るよう手で合図を送った。

「フランも紅茶をどうぞ。商売をする人間は、最高の品物を知っておく必要があります。でないと、お客様にいいものをおすすめできませんからね」
「う……。それはそうだけど、贅沢じゃ……」
「いいものを知ることは贅沢ではありません。これも勉強です」

 フランは椅子に座り直し、茶色の耳を垂れてしょんぼりした。
 私に言われた通り、紅茶を一口飲む。

「いつもの紅茶とそんなに変わらないって……香りが全然違う! お茶の味が濃くて、水みたいじゃない!」
「ぐっ……! 今まで安い茶葉ですみませんでした……」
「貴族ってすごいなぁ。当たり前にこんな紅茶を飲むんだ……」
「そうですね。ファルクさんから依頼もありますし、これからは表通りの商品も購入して、勉強していきましょう!」

 フランが感動しているのを見て、申し訳ない気持ちになった。
 今まで購入していた茶葉は、裏通りで一般的に飲まれていた茶葉なのだけど……
 表通りと裏通りの暮らしの差は、紅茶一つをとってもわかる。
 リアムが紅茶を嗜む姿は優雅で、やっぱりそこは王子様。
 私たちがクッキーをポリポリかじるのとはわけが違った。 

「今、ファルクの依頼と言わなかったか? 依頼とはなんだ? その落書きと関係あるのか?」

 テーブルの上には、私が描いた犬、モデルはポチの絵があった。
 ポチは私が前世で飼っていた可愛い柴犬で、『ポチを鍋の絵にしちゃおうかな』なんて、目論んでいたわけである。

「リアムにはまだ言ってなかったですね。ファルクさんから、表通りにも王都の顔となるものを考えてほしいと、相談されたんです」
「その豚の絵は?」
「犬です!」

 私の名画を豚呼ばわりされて、頭にきて、リアムにぐいぐい絵を押しつけた。

「これはですね、ファルクさんが『サーラの時短鍋』にデザインを加えてはどうかと、アドバイスしてくれたんです」
「そうか。俺からもアドバイスしよう。その絵はやめておけ。他の人間に頼むんだな」
「ぐっ!」

 全身黒づくめセンスのリアムにまで、私の名画『ポチ』が否定されてしまった。
 渋々、絵を片づけた。

「わかりました……。図案家を探します……」
「そうしろ。それで、ファルクの依頼は引き受けるのか?」
「もちろんです! 表通りと裏通りの人たちが、交流できるチャンスですから!」
「表通りと裏通りか……」

 リアムは少し考えるそぶりを見せた。

「表通りの店主たちが、表通りより裏通りが栄えてもらっては困ると思い、焦ったのだろう」

 夜のお祭りが大成功だったというのもあるけど、お祭りの夜だけは、いつも暗い裏通りが、表通りより人が多く明るかったのだ。
 それで、焦らないわけがない。

「ファルクさんには、表通りの店だけでなく、裏通りで商売をしている人たちも一緒にできないか提案しました」
「そんなにうまくいくか? 双方とも一緒に商売をやりたくないと思うぞ」

 フランもリアムに同感らしく、両手を胸の前に組んで、『うんうん、そうだよ』と言わんばかりに、首を大きく縦に振った。

「表通りの人たちはさ、裏通りを馬鹿にして、差別しているよ。【魔力なし】や獣人と商売するわけないって!」
「お祭りにやってきた貴族は多かったですよ。わかりあえないはずありません」

 私も紅茶を口にする。
 香りの良い紅茶が口の中に広がり、甘めのクッキーととても合う。

「このクッキーは裏通りのお祭りで買ったクッキーです。表通りの紅茶にぴったりだと思いませんか?」
「言っていることはわかるが、裏通りの商品を表通りに、そのまま置くのはやめておいたほうがいい」

 見た目に寛容なほうであるリアムさえ、露店や屋台が表通りに並ぶのは駄目らしい。
 
「どんなに商品が良くても、表通りには表通りのやり方がある。表通りの店主たちは長くそこで商売をしてきたという誇りがある。その誇りを傷つければ恨まれるぞ」
「そうですよね……」
「恨まれると面倒だ」

 わかるだろうという顔で、私に言った。
 ルーカス様に恨まれて二十年以上のリアム。
 そんなリアムに言われたら、私も素直に返事をするしかない。
 現在のリアムは、唯一の肉親とも言える父親の命を人質にとられている状況だ。
 ルーカス様はいつでも国王陛下の命を奪い、国王を名乗ることができる有利な立場にいる。
 リアムは私どころではないはずだ。

「リアム。私のことは心配しなくても大丈夫です」
「お前が一番心配だ」
「あんまり心配するとハゲますよ」
「誰がハゲだ!」 

 リアムに気を遣って言ったのに、怒られてしまった。

「私なりにちゃんと考えています」
「ほう?」
「商人ギルドの力を借りるつもりでいます」
「商人ギルドか……。たしかに揉めたくない相手だ」

 商人ギルドは世界各地に散らばる巨大な組織である。
 そして、どこの国にも属さない特殊な存在で、商人たちは国相手に不当な扱いを受けた場合、所属する商人全員で対抗する仕組みになっている。

「兄上が引き際を理解していれば、争いにはならないだろう。しかし、兄上が冷静さを失い、王宮を支配している今、力で押し通す気がしてならない」
「不吉なことを言わないでください」

 ヴィフレア王国には魔術と魔道具があって、対等に戦えるのは竜族くらいだ。
 
「兄上に対抗するのは商人ギルドを頼るとしてもだ。まだ問題はあるぞ」
「はい?」
「なにがなんでも、お前を妃にさせたいアールグレーン公爵家を忘れている」
「たしかにそうだよ! サーラの両親なら、縄で縛ってでも王宮へ連れていく気がするよ!」
 
 フランから言われて、私の体がミノムシみたいに、ぐるぐる巻きにされた姿が想像できた。

「そ、そうですね……」

 私とリアムが婚約したという噂が流れたあたりから、アールグレーン公爵家から音沙汰がなくなり、干渉されずに安心していたところだった。
 でも、ルーカス様が国王代行になったという発表を聞いて、手のひらをくるっと返すのは目に見えている。

「わ、わかりました。じゃあ、アールグレーン公爵家は無視します!」
「子供のケンカか?」

 対策ゼロ、ノープランな私の発言にリアムは呆れていた。
 
 ――方法はあるにはあるけど、それは……

「俺が国王になれば問題ないが、今は難しい」

 リアムも解決方法はわかっていた。
 たぶん、それが一番最善の解決方法である。
 リアムは沈痛な面持ちで、胸の前に腕を組んで黙り込んだ。
 暗い空気が漂った時。店の扉が開いた。

「あ、すみません。臨時休業中で……」

 そこまで言って、私は言葉を切った。
 なぜなら、相手がお客様じゃないとわかったからだ。
 その人の顔には見覚えがあった。
 ルーカス様が私にプレゼント攻撃を仕掛けた時にやってきた侍従――ルーカス様付きの侍従だった。

「王宮よりお迎えに上がりました。サーラ妃にはルーカス様の妃にふさわしい教育を受けていただきます」
「妃教育? サーラに?」

 リアムが侍従に言うと、侍従は得意げな顔をした。

「リアム様。国王代行命令でございます。さあ、サーラ妃。王宮へ参りましょう!」

 私が喜ぶだろうと思っている侍従は、満面の笑みで手を差し出したのだった。
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