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第4章
6 覆された王位継承
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元夫がしつこく復縁したいと迫っている状況に、正直言って困惑しかない。
離縁すれば、赤の他人になるはずが、王宮には『離縁された妃は王宮から出られない』という謎の慣例があった。
そのせいで、私が王宮を出る時も許可を必要とし、厳しい条件の元、私は自由を得たのだ。
それをルーカス様は国王代行になったから、王宮へ戻れなんて、横暴すぎる。
ルーカス様は王子の自分では手に入らなかったものを国王代行となったことで、すべて手に入れるつもりだ。
――もしかしてだけど……。ルーカス様は謀反を起こして、国王代行になった?
私をすんなり王都から出して遠ざけたのも、リアムが竜の巣へ向かったのも――ルーカス様が謀反計画を実行するためだったのではと勘ぐってしまう。
そう思っているのは、私だけでなく、リアムも同じだったようで、【詠唱時間短縮】の魔石がついたブレスレットに手を触れさせている。
けれど、リアムは魔術で攻撃できない。
今のルーカス様を攻撃すれば、ヴィフレア王を攻撃したことになる。
そうなれば、リアムは死罪である。
ルーカス様の笑顔が不気味に感じた。
きっと謀反計画を企てたのは、ルーカス様一人の力ではないと思う。
協力者がいるはずだ。
ノルデン公爵とフォルシアン公爵は罰を受け、領地を減らし、宮廷への出入りを禁じられて謹慎中。
残る四大公爵家は二つ。
アールグレーン公爵家とサンダール公爵家だけど、その両方がルーカス様に味方した可能性もある。
「サーラ。残念だったね。どんなに足掻いても僕からは逃げられないよ」
そう言いながら、私に近づこうとしたルーカス様に気づき、リアムが私を庇うように立ちふさがった。
その瞬間、二人の間に緊迫した空気が流れた。
「国王代行命令だとしても、私は王宮に戻りません」
「へぇ、王の命令に背くのか?」
私には店があるし、なにより復縁なんて冗談ではない。
そして、今の私には宮廷魔道具師という肩書き以外にも、ルーカス様に有効な手札がまだある。
「私はアールグレーン商会の女主人です」
「そうだね。貴族令嬢だというのに、結婚もせずに商人になるなんてとんでもないことだよ」
「私は魔道具師ですが、商人でもあります」
にっこり微笑むと、ルーカス様が動揺した。
「ルーカス様は商人を妻にするつもりですか?」
「商人……。いや、だが……君はアールグレーン公爵令嬢だ。僕の妻になれば、公爵は君を許すだろう」
「それはどうでしょうか。現時点では勘当されたままですし、私が商会の女主人であることは有名です」
ルーカス様はプライドが高い。
後々まで、『商人を妻にした王』と言われることに耐えられないはずだ。
なお、リアムは細かいことはどうでもいい
その見た目から死神と呼ばれたり、恐れられて人が遠ざかっても平気な顔をしている。
気にしたほうがいいことも気にしないのがリアムだ。
「……わかった。アールグレーン公爵家に使者をやり、君の勘当を解かせる。そして、商人ギルドの登録を取り消させ、君の商人としての権利を奪う」
「兄上。サーラが今まで積み重ねたものすべてを奪うつもりですか?」
抗議するリアムにルーカス様は微笑んだ。
「お前がそれを言うのか? 僕からなにもかも奪っただろう?」
「俺が兄上から? いったいなにを……」
「父親からの愛情。周囲の称賛。そして次は僕の妻を奪うのか?」
リアムは驚き、ルーカス様を見た。
「二度と僕からなにも奪わせない。リアム。今後は宮廷魔術師として、国王代行である僕に従え」
くすりと笑って、ルーカス様は怖いくらい優しい顔を私へ向けた。
「サーラ。君もわかってほしい。僕は誰でもいいわけじゃないんだよ?」
ルーカス様はリアムを苦しめる目的で、私を手に入れるつもりでいる。
そういった意味では、たしかに誰でもいいわけではない。
――今、ルーカス様が言った言葉を十年前、サーラが聞いていたら、きっと結果は違っていた。
「ルーカス様。そのセリフは十年前のプロポーズの時、言うべきでした」
「素直に僕に従った方がいい。大切なものを失いたくないだろう?」
「そうですね。今の私には大切なものがたくさんあります。それが嬉しくて幸せだと思います」
一日の終わり、目を閉じた目蓋の裏に浮かぶのは絶望ではなく、フランやラーシュ、人々の笑顔――明日がまた私にやってくるのだと、教えてくれる大切な存在だ。
「幸福な気持ちで一日が終われる……。ルーカス様は明日もまたみんなに会える奇跡を知っていますか?」
「サーラ? なにを言って?」
「簡単に奪えて与えることができるルーカス様にはわかりません。毎日のなんでもないことの一つ一つが私にとっては宝物なんです」
ルーカス様の顔を見て、宮廷魔道具師の証を握り締めた。
「私はあなたの妻にはなりません。どこまでだって、足掻いて逃げてみせます」
「ヴィフレア王に宣戦布告とは面白い」
「兄上。代行です」
気付くと、リアムが私のそばに立っていた。
「商人であるサーラを兄上は王妃にはできないと言った」
「当たり前だろう? ヴィフレア王の妻になるのなら、アールグレーン公爵令嬢であるべきだ」
「俺は商人だろうが、裏通りで暮らしていようが、サーラを妻に迎えたいと思っている」
――つ、妻? 待って! これはリアムの演技でしょ。それなのに動揺してどうするの?
動揺したのは私だけでなく、ルーカス様もだ。
「兄上が商人であるサーラを妃にしたくないのであれば、俺が妻にしても問題ないでしょう。サーラ、裏通りへ送ろう」
「はっ、はい!」
ルーカス様はリアムを止められなかった。
私がアールグレーン公爵家から勘当され、ただの商人である限り、妻にするメリットはない。
ルーカス様は即位にあたって、四大公爵家を味方につけ、その立場を強固なものにするつもりでいる。
妃に迎えるのであれば、公爵令嬢でなければならない。
「アールグレーン公爵は国王代行である僕が、君を妻にしたいと言えば、喜んで勘当を解くだろう。すぐに連れ戻してあげるよ」
父親のアールグレーン公爵は勘当したことも忘れ、『すぐにでも妃!』を連呼するはずだ。
今、私が裏通りへ戻ってもみんなと過ごせる時間は短い――そう思った時、ラーシュの手紙を預かってきたことを思い出した。
「ルーカス様。王妃様に手紙を預かってきました。王妃様にこれを渡していただけませんか?」
ルーカス様は私から渡された絵ハガキに視線を落とす。
「ラーシュから母上へ?」
「そうです。王妃様にお会いしたいと言ってました」
ルーカス様は絵ハガキを受け取り、書いてある内容を読む。
私も読んだけれど、お祭りの話や魔道具師見習いとして、頑張っている話が書かれた微笑ましい内容だ。
息子であるラーシュの近況がわかって、ルーカス様も喜んでくれるだろうと思っていた。
「ラーシュとソニヤは僕の汚点だよ」
「え……?」
――私の聞き間違えですよね?
ルーカス様は指で絵ハガキを弾き、魔法で火をつけた。
「なっ、なんてことをするんですか!」
「なにって? ただゴミを燃やしただけだ」
ラーシュが書いた『おばあさま、お元気ですか?』という文字が炎に包まれ、燃えていく。
慌てて絵ハガキの火を消そうとすると、リアムが私の手をつかんだ。
「やめろ。火傷をするぞ。魔術と魔法の火は普通の火と違う」
「だけど、ラーシュが書いた手紙が燃えて……こんな……」
リアムが水の魔法を使い、絵ハガキの火を消しても黒く焦げて、なんと書いてあるのかわからなくなってしまった。
「サーラ。僕のおかげで、君はアールグレーン公爵と仲直りできる。感謝するんだね」
ルーカス様は私とリアムに背中を向け、国王陛下と王妃様がいる奥へ去っていった。
自分は自由に出入りできるのだぞと誇示するように。
焼け焦げた絵はがきから、細い煙が立ち上ぼり、リアムがそれを拾い上げ、呟いた。
「兄上は父上に対し、謀反を起こしたのか……」
リアムは焦げた絵はがきを眺め、しばらく、その場から動かなかった。
離縁すれば、赤の他人になるはずが、王宮には『離縁された妃は王宮から出られない』という謎の慣例があった。
そのせいで、私が王宮を出る時も許可を必要とし、厳しい条件の元、私は自由を得たのだ。
それをルーカス様は国王代行になったから、王宮へ戻れなんて、横暴すぎる。
ルーカス様は王子の自分では手に入らなかったものを国王代行となったことで、すべて手に入れるつもりだ。
――もしかしてだけど……。ルーカス様は謀反を起こして、国王代行になった?
私をすんなり王都から出して遠ざけたのも、リアムが竜の巣へ向かったのも――ルーカス様が謀反計画を実行するためだったのではと勘ぐってしまう。
そう思っているのは、私だけでなく、リアムも同じだったようで、【詠唱時間短縮】の魔石がついたブレスレットに手を触れさせている。
けれど、リアムは魔術で攻撃できない。
今のルーカス様を攻撃すれば、ヴィフレア王を攻撃したことになる。
そうなれば、リアムは死罪である。
ルーカス様の笑顔が不気味に感じた。
きっと謀反計画を企てたのは、ルーカス様一人の力ではないと思う。
協力者がいるはずだ。
ノルデン公爵とフォルシアン公爵は罰を受け、領地を減らし、宮廷への出入りを禁じられて謹慎中。
残る四大公爵家は二つ。
アールグレーン公爵家とサンダール公爵家だけど、その両方がルーカス様に味方した可能性もある。
「サーラ。残念だったね。どんなに足掻いても僕からは逃げられないよ」
そう言いながら、私に近づこうとしたルーカス様に気づき、リアムが私を庇うように立ちふさがった。
その瞬間、二人の間に緊迫した空気が流れた。
「国王代行命令だとしても、私は王宮に戻りません」
「へぇ、王の命令に背くのか?」
私には店があるし、なにより復縁なんて冗談ではない。
そして、今の私には宮廷魔道具師という肩書き以外にも、ルーカス様に有効な手札がまだある。
「私はアールグレーン商会の女主人です」
「そうだね。貴族令嬢だというのに、結婚もせずに商人になるなんてとんでもないことだよ」
「私は魔道具師ですが、商人でもあります」
にっこり微笑むと、ルーカス様が動揺した。
「ルーカス様は商人を妻にするつもりですか?」
「商人……。いや、だが……君はアールグレーン公爵令嬢だ。僕の妻になれば、公爵は君を許すだろう」
「それはどうでしょうか。現時点では勘当されたままですし、私が商会の女主人であることは有名です」
ルーカス様はプライドが高い。
後々まで、『商人を妻にした王』と言われることに耐えられないはずだ。
なお、リアムは細かいことはどうでもいい
その見た目から死神と呼ばれたり、恐れられて人が遠ざかっても平気な顔をしている。
気にしたほうがいいことも気にしないのがリアムだ。
「……わかった。アールグレーン公爵家に使者をやり、君の勘当を解かせる。そして、商人ギルドの登録を取り消させ、君の商人としての権利を奪う」
「兄上。サーラが今まで積み重ねたものすべてを奪うつもりですか?」
抗議するリアムにルーカス様は微笑んだ。
「お前がそれを言うのか? 僕からなにもかも奪っただろう?」
「俺が兄上から? いったいなにを……」
「父親からの愛情。周囲の称賛。そして次は僕の妻を奪うのか?」
リアムは驚き、ルーカス様を見た。
「二度と僕からなにも奪わせない。リアム。今後は宮廷魔術師として、国王代行である僕に従え」
くすりと笑って、ルーカス様は怖いくらい優しい顔を私へ向けた。
「サーラ。君もわかってほしい。僕は誰でもいいわけじゃないんだよ?」
ルーカス様はリアムを苦しめる目的で、私を手に入れるつもりでいる。
そういった意味では、たしかに誰でもいいわけではない。
――今、ルーカス様が言った言葉を十年前、サーラが聞いていたら、きっと結果は違っていた。
「ルーカス様。そのセリフは十年前のプロポーズの時、言うべきでした」
「素直に僕に従った方がいい。大切なものを失いたくないだろう?」
「そうですね。今の私には大切なものがたくさんあります。それが嬉しくて幸せだと思います」
一日の終わり、目を閉じた目蓋の裏に浮かぶのは絶望ではなく、フランやラーシュ、人々の笑顔――明日がまた私にやってくるのだと、教えてくれる大切な存在だ。
「幸福な気持ちで一日が終われる……。ルーカス様は明日もまたみんなに会える奇跡を知っていますか?」
「サーラ? なにを言って?」
「簡単に奪えて与えることができるルーカス様にはわかりません。毎日のなんでもないことの一つ一つが私にとっては宝物なんです」
ルーカス様の顔を見て、宮廷魔道具師の証を握り締めた。
「私はあなたの妻にはなりません。どこまでだって、足掻いて逃げてみせます」
「ヴィフレア王に宣戦布告とは面白い」
「兄上。代行です」
気付くと、リアムが私のそばに立っていた。
「商人であるサーラを兄上は王妃にはできないと言った」
「当たり前だろう? ヴィフレア王の妻になるのなら、アールグレーン公爵令嬢であるべきだ」
「俺は商人だろうが、裏通りで暮らしていようが、サーラを妻に迎えたいと思っている」
――つ、妻? 待って! これはリアムの演技でしょ。それなのに動揺してどうするの?
動揺したのは私だけでなく、ルーカス様もだ。
「兄上が商人であるサーラを妃にしたくないのであれば、俺が妻にしても問題ないでしょう。サーラ、裏通りへ送ろう」
「はっ、はい!」
ルーカス様はリアムを止められなかった。
私がアールグレーン公爵家から勘当され、ただの商人である限り、妻にするメリットはない。
ルーカス様は即位にあたって、四大公爵家を味方につけ、その立場を強固なものにするつもりでいる。
妃に迎えるのであれば、公爵令嬢でなければならない。
「アールグレーン公爵は国王代行である僕が、君を妻にしたいと言えば、喜んで勘当を解くだろう。すぐに連れ戻してあげるよ」
父親のアールグレーン公爵は勘当したことも忘れ、『すぐにでも妃!』を連呼するはずだ。
今、私が裏通りへ戻ってもみんなと過ごせる時間は短い――そう思った時、ラーシュの手紙を預かってきたことを思い出した。
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ルーカス様は私から渡された絵ハガキに視線を落とす。
「ラーシュから母上へ?」
「そうです。王妃様にお会いしたいと言ってました」
ルーカス様は絵ハガキを受け取り、書いてある内容を読む。
私も読んだけれど、お祭りの話や魔道具師見習いとして、頑張っている話が書かれた微笑ましい内容だ。
息子であるラーシュの近況がわかって、ルーカス様も喜んでくれるだろうと思っていた。
「ラーシュとソニヤは僕の汚点だよ」
「え……?」
――私の聞き間違えですよね?
ルーカス様は指で絵ハガキを弾き、魔法で火をつけた。
「なっ、なんてことをするんですか!」
「なにって? ただゴミを燃やしただけだ」
ラーシュが書いた『おばあさま、お元気ですか?』という文字が炎に包まれ、燃えていく。
慌てて絵ハガキの火を消そうとすると、リアムが私の手をつかんだ。
「やめろ。火傷をするぞ。魔術と魔法の火は普通の火と違う」
「だけど、ラーシュが書いた手紙が燃えて……こんな……」
リアムが水の魔法を使い、絵ハガキの火を消しても黒く焦げて、なんと書いてあるのかわからなくなってしまった。
「サーラ。僕のおかげで、君はアールグレーン公爵と仲直りできる。感謝するんだね」
ルーカス様は私とリアムに背中を向け、国王陛下と王妃様がいる奥へ去っていった。
自分は自由に出入りできるのだぞと誇示するように。
焼け焦げた絵はがきから、細い煙が立ち上ぼり、リアムがそれを拾い上げ、呟いた。
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