BLR15【完結】ある日指輪を拾ったら、国を救った英雄の強面騎士団長と一緒に暮らすことになりました

文字の大きさ
65 / 72
「ある日指輪を拾ったら、国を救った英雄の強面騎士団長と一緒に暮らすことになりました」 

4 歓迎の宴

しおりを挟む


  ぎゅうううう! と背中まで腕を伸ばして、クーは抱きついてきた。
 「ク―? ……いえ、クー殿下。お久しぶりで御座います」
 腕をやんわりと外し距離を取って、胸に手を当てて礼をした。人懐っこいクーは、ウサギの国の王子様。失礼があってはいけない。
 
 「ん! もう! そんな他人みたいな挨拶はいいからぁ!」
 そう言い僕の膝に乗った。周りの人が、少し騒ぎ出した。
「へへっ!」
 甘えてくるクーは可愛いけど、困った……。
 
 「クー殿下、お久しぶりで御座います」
 隣に座っていたアランが殿下に挨拶をした。殿下は「わっ!」と驚いた顔をして僕から離れた。もしかしてアランが怖いのかな? 
「……アラン殿も元気そうで良かった。ナルン国では世話になったな」
 クー殿下はよそいきの声になって、アランに返事をした。

 「クー殿下も一緒に座って楽しむがよい」
トラの獣人王はクー殿下に話しかけて、メイドに僕の隣に席を用意させた。アランと僕の間の席。
 「ルカ、こっちの果物は美味しいよ!」
 クー殿下が、美味しそうなブドウを一粒取って僕の目の前に見せた。
「クー殿下」
 まさか皆の前で、殿下の指からブドウを食べるなんてできない。

 「殿下、失礼します」
 困っていると、ひょいとアランが殿下の指からブドウを受け取ってくれた。
 「ルカ、クー殿下からいただいたブドウを召し上がって下さい」
 そう言い、僕の手に渡してくれた。

 「クー殿下、いただきますね」
 僕はブドウを口の中に入れて食べた。
「う、うん」
隙のない……とか聞こえた。殿下の機嫌がちょっと悪くなった。
 
 「美味しいですね。ありがとうございます」
「そうか! 良かった」
 微笑んでクー殿下に言うと、機嫌が戻ったみたい。だけどアランは……。表情は変わらないけど、どんなことを考えているか僕にはわかる。

 曲芸や、珍しい踊りなど見て美味しい食事を食べて、皆で盛り上がって楽しく歓迎の宴はお開きになった。
「宴はいかがだったかな? ルカ殿」
トラの王様は僕に話しかけてきた。
 「はい。とても珍しいものばかりで楽しかったです!」 
 他の国の文化や食べ物を、初めて知れて楽しかった。

 「そうかそうか。良かった。口説けたなら、もっと良かったのだが」
 残念そうに王様は僕に言った。アランが王様を睨んでいた。
 「まあ、アランの伴侶だしな。あきらめるか……」 
「前も、そうおっしゃられていましたよね?」
 アランが容赦なく王様に返事をした。

 「まあ、可愛い子と話をしたいのは仕方が無いのだ。許せ」
 王様はそう言い、近くに居た側近に耳打ちした。
「特別に用意した部屋で、ゆっくり旅の疲れを癒すがいい。また明日はこの国の良い所へ案内しよう」
 「ありがとう御座います」
 僕達は側近の人に、今日泊まる部屋へと案内された。

 「では、ごゆっくりお休みくださいませ」
「ありがとう御座います」
側近の方にお礼を言い、部屋の中に入った。

 「わあ!」
ドアを閉めて中に入ると、白い布が天井から吊ってあって部屋を区切ったり目隠しの役目をしていた。
 この国では床に厚めのラグやじゅうたんを敷き、クッションをたくさん置いて座って皆でくつろぐスタイルだ。奥まで行くと窓はなく、部屋からテラスへ出て行くと街の景色が見えた。
 「きれい……」
 部屋の中に風が入ってきて気持ちが良かった。
 さすが特別に用意していただいた部屋だけあって、素敵な部屋だった。

「遠くに海が見えるぞ」 
アランがテラスまで来て、僕の隣で指をさして教えてくれた。伴侶であり、僕の護衛をしてくれてるので一緒の部屋を用意してくれた。
 「え、どこ?」
 街並みばかり見ていて遠くの海を見逃していた。
「ずっと向こうだ。街の建物の向こうに光る海が見える」

 アランが僕の腰を掴んだ。もう密着しても動揺しなくなった……はず。
 「あれが、海」
 ナルン王国と違う街並み。獣人国に来たことを実感した。
「海が見たいなら、帰りに寄り道して見に行こうか?」
 「え! ほんと? 見たいな」
そう言うと、アランは僕の頬にキスをした。

 「あ、アラン!」
 僕は突然のキスで動揺してしまった。まだお仕事気分が抜けてなかったらしい。
 「このテラスは外だし、お城の庭から見えるよ。仕事で来てるし……控えて、アラン」
 顔を上げてアランの顔を見て言った。

 「……」
 アランは僕の顔をじっと見て言った。
「獣人の国では、伴侶は誰かしっかりと示す必要がある。でないと……」
 強い意志のこもったアランの瞳。ちょっと瞳の奥に灯る何か。
 「……でないと?」

 「……例えば、俺が他の獣人と伴侶になったらルカはどう思う?」
 ちょっと考えてからアランは質問してきた。僕は瞬時に、アランの服を両手で掴んだ。
 「いやだ! 絶対に、いやだ」
 
 泣きそうになった。僕とアランでは、貴族と平民のがあった。それでもアランは、僕を差別せず伴侶としてくれた。僕自身、アランの隣に立てるように努力してきた。
 他の人と伴侶なんて……。

 僕が服を握りしめたまま、アランの目を見ていた。アランは驚いたようだったけれど、フッ……と微笑んで僕を抱きしめてくれた。
 「俺も同じだ。ルカを、誰にも渡したくない」
 僕もアランを力を込めて抱きしめた。
「うん……」
 ちょっと力が強くて痛かったけど、嬉しかった。

 「隙あれば、狙っている奴がいるしな……」
隙あれば狙っている奴? まさか。
 「暗殺的な?」
 アランは体を離して僕を見た。
「それもある、が」

 アランは僕の肩を抱いて部屋の中へ歩いた。クッションがたくさん置いてある、ソファーの役割の場所に二人で座った。
「……ということで」
 コホン! と咳払いをしてからアランは言った。
 「積極的に、密着して、見せつけた方がいい。いいな? ルカ」
「う、うん」
 僕は、嬉しいような恥ずかしいような気持ちだった。

 ただこのことが、後で良かったと思えることになった。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

悪役令息に転生したのに、ヒーローもヒロインも不在で、拾って育てた執事が最強なんだが……なんで?!

はぴねこ
BL
前世の弟が好きだったゲームの世界に、悪役令息として転生してしまった俺。 本来なら、ヒロインをいじめ、ヒーローが活躍するための踏み台になる…… そんな役割のはずなのに、ヒーローともヒロインとも出会えない。 いじめる対象すら見つけられない新米悪役令息とか、ポンコツすぎないだろうか? そんな俺に反して、子供の頃に拾って育てた執事は超優秀で、なぜか「悪役執事スキル」を着実に磨いている。 ……いや、違う! そうじゃない!! 悪役にならなきゃいけないのは俺なんだってば!!! 

この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!

ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。 ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。 これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。 ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!? ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19) 公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年BLです。

姉の代わりに舞踏会に行ったら呪われた第三王子の初恋を奪ってしまった

近井とお
BL
幼少期、ユーリは姉によく似ていることから彼女の代わりに社交の場に出席することが多々あった。ある舞踏会の夜、中庭に姿を眩ませたユーリに誰かがぶつかってくる。その正体は呪われていると噂の第三王子であったが、ぶつかられたことに腹を立てたユーリは強気に接し、ダンスを踊った後、彼を捜している気配を感じてからかいながら立ち去る。 それから数年後、第三王子は初恋の令嬢を探し始めたが、それはユーリに違いなく……。 初恋の相手を捜す第三王子×軽口令息

聖女の力を搾取される偽物の侯爵令息は本物でした。隠された王子と僕は幸せになります!もうお父様なんて知りません!

竜鳴躍
BL
密かに匿われていた王子×偽物として迫害され『聖女』の力を搾取されてきた侯爵令息。 侯爵令息リリー=ホワイトは、真っ白な髪と白い肌、赤い目の美しい天使のような少年で、類まれなる癒しの力を持っている。温和な父と厳しくも優しい女侯爵の母、そして母が養子にと引き取ってきた凛々しい少年、チャーリーと4人で幸せに暮らしていた。 母が亡くなるまでは。 母が亡くなると、父は二人を血の繋がらない子として閉じ込め、使用人のように扱い始めた。 すぐに父の愛人が後妻となり娘を連れて現れ、我が物顔に侯爵家で暮らし始め、リリーの力を娘の力と偽って娘は王子の婚約者に登り詰める。 実は隣国の王子だったチャーリーを助けるために侯爵家に忍び込んでいた騎士に助けられ、二人は家から逃げて隣国へ…。 2人の幸せの始まりであり、侯爵家にいた者たちの破滅の始まりだった。

【完結】悪役令息⁈異世界転生?したらいきなり婚約破棄されました。あれこれあったけど、こんな俺が元騎士団団長に執着&溺愛されるお話

さつき
BL
気づいたら誰かが俺に?怒っていた。 よくわからないからボーっとしていたら、何だかさらに怒鳴っていた。 「……。」 わけわからないので、とりあえず頭を下げその場を立ち去ったんだけど……。 前世、うっすら覚えてるけど名前もうろ覚え。 性別は、たぶん男で30代の看護師?だったはず。 こんな自分が、元第三騎士団団長に愛されるお話。 身長差、年齢差CP。 *ネーミングセンスはありません。 ネーミングセンスがないなりに、友人から名前の使用許可を頂いたり、某キングスゴニョゴニョのチャット友達が考案して頂いたかっこいい名前や、作者がお腹空いた時に飲んだり食べた物したものからキャラ名にしてます。 異世界に行ったら何がしたい?との作者の質問に答えて頂いた皆様のアイデアを元に、深夜テンションでかき上げた物語です。 ゆるゆる設定です。生温かい目か、甘々の目?で見ていただけるとうれしいです。 色々見逃して下さいm(_ _)m (2025/04/18) 短編から長期に切り替えました。 皆様 本当にありがとうございます❤️深謝❤️ 2025/5/10 第一弾完結 不定期更新

処理中です...