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「ある日指輪を拾ったら、国を救った英雄の強面騎士団長と一緒に暮らすことになりました」 

3 朝から仲良し 獣人の国へ

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 早朝、馬のいななきが聞こえて目が覚めた。
隣にはアランが寝ていた。いつもなら先に起きているのに珍しい。
いつも先に起きて僕の寝顔を見ていて、起きるのを待っている。
 今日は僕がアランの寝顔を見ていよう。頬杖をついてアランを見つめる。

 「……」
 顔が怖いと言われているけれど、こうしてまぶたを閉じていると整った凛々しい顔をしているのにな。
 キリリとした眉毛に意外と長いまつ毛。シュッとした鼻筋に、唇……。

 僕は人差し指でアランの唇を触ってみた。
フニ……。柔らかい。つ――っと指を滑らせていく。形のいい唇。僕が好きな唇だ。
 「ふふっ」
 いいこと思いついた。まだアランは眠っているし、いいよね?

 アランの顔に近づいていく。ベッドが少し軋む音がする。
唇を閉じたまま、キスをした。柔らかい……。
 「ン! ムグッ!」
 急に頭の後ろと腰を掴まれて、力を入れられた。口を無理やり開けられて熱いモノが口の中に入ってきた。

 「ん――! んっ!」
 顔をずらして空気を吸おうとしたが、頭の後ろを掴んでいる手が邪魔をした。
 軽いキスをしただけなのに唇を塞がれて、まるで食べられているみたいだ。

 「んん、ん!」
 苦しくなってきたので、アランの胸を叩いた。するとアランは名残惜しそうに唇を離して、最後にぺろりと唇を舐められた。

 「苦しかった……。もう! アラン、起きているでしょう!」
 僕はアランに文句を言った。アランは仰向けのまま僕を胸に乗せて笑った。
 「俺の愛しい伴侶が誘ってきたからだけだが?」

 僕の頬を撫でて、愛おしそうにこちらを見ているアランはカッコよかった。
「誘って……!? いえ、誘った……かも? 僕からキスしたし……ううん、誘ってはないし……あれ?」
 僕はアランに、『愛しい伴侶』と言われて動揺していた。

 フッ……と笑われて、体を引き寄せられた。アランの仰向けの体の上に乗ってしまっている。
「起きる時間には、早い。もう少し……」
 「んっ?」
 今度はアランからキスをされた。
 
 「まだ寝てよう……」
 ギュッと抱きしめられて、アランの上に乗ったまま布団をかけられた。
「ん……」
僕達は重なったまま、時間まで布団の中で過ごした。


 それから――。
 時間が来て支度をして馬車に乗り、宿屋を後にした。

 「時間に遅れなくて良かった……」
 あれから二人とも眠ってしまって、ギリギリな時間に起きて慌てて支度をした。間に合って、僕は安心した。
 「すまんな。俺が……」
 アランが反省してるので僕は返事をした。
「間に合ったから、大丈夫です」
 でも気をつけないと。アランといれば、安心してしまうから。

 しばらく、獣人の国や人の話をアランに教えてもらいながら馬車の中で過ごした。
 「そろそろ、着く頃だ」
 窓の外を見ると景色が、森の中から建物がある風景に変わっていた。

 「わあ。お店が並んでいる」
 国への入り口で厳しいチェックを受けたが、怪しい所も無かったので無事に獣人の国へ入国できた。
 僕達の国とは違い、お店はすぐに畳める布で出来た屋根付きのお店がほとんどだった。

 馬車が珍しいのかジッと見られていた。
馬車の窓からそっと覗いていたけど皆、耳を出していたりしっぽを出していた。頭だけ獣の人もいた。
 当たり前だけど、獣人の国に来たのだと実感した。
 
 この国の移動手段は馬車もあるが、庶民の暮らしでは馬で運ぶ屋根のない大きな荷車が移動手段の様だった。
市場は色々なお店があり、活気があった。アランとお店をまわりたいな。

「もうすぐ着きます」 
 御者が声をかけてくれた。やっとお城に着く。僕は窓の外からお城を見た。
 「大きい」
 お城というより、城塞……? 頑丈そうなお城だ。ナルン王国のお城とは全然違った。

 「ルカ、行こう」
 「うん」
 僕はアランの手を取り、お城の中へ進んだ。
 

「ようこそ! 獣人の国 エルドンへ!」
獣人の国の王が出迎えてくれた。植物公園のドーム状の温室で会った、トラの獣人さんだ。
「長い道中大変だっただろう。ゆっくり休むがよい」
 そう言い、王様は僕の肩を撫でた。
 
「ルカ殿……。滞在中は楽しく過ごされることを望む。遠慮なく、何でも申し付けるがよい」
王様は背が高く、僕は見上げた。
 「ありがとう御座います。和平大使として、両国のより良い交流をこれからもお願いしに参りました。よろしくお願いいたします」
 僕は王様に深くお辞儀をした。

 「歓迎の宴をする。楽しまれよ。アランも一緒に。うまい酒を用意している」
 王様は僕の腰に手を回してきた。そして宴の間に連れて行ってくれた。アランの視線が怖い。

 「この国では、地面に布を敷いてその上で座って食事をする。うまい料理をたくさん揃えた。たくさん食べてくれ」
 王様の隣に座った。クッションがたくさんあって痛くない。アランは王様と逆の位置の、僕の隣に寄り添うように座った。

 「はは。アランはルカ殿を離さんのう……」
からかうように言った。
 「大事な伴侶、ですから」
 笑いもせず、怒りもしてない表情で答えた。僕はアランが大事な伴侶と言ってくれて嬉しかった。

 一緒に護衛としてついて来た、他の騎士さん達も円になって座ってご馳走をいただいた。
 中央では踊り子さんが妖艶な踊りを披露したり、演武を披露したりと楽しませてくれた。

 「ルカ!」
 「え?」
 名前を呼ばれたので振り向くと以前、噴水広場で怪しいやつに掴まりそうな時に助けたウサギの獣人 クーが、僕に向かって走って飛び込んできた。
 
 
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