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第10回『ゲームセンター 頭脳 核融合』
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YouTubeで行った
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第10回『ゲームセンター 頭脳 核融合』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約1時間15分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=7nKd3OU9ftw
↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/
~・~・~・~・~
当店は来月をもって閉店いたします。
墨汁でそう書かれた紙がゲームセンターの扉に貼ってあった。
ご丁寧に閉店の横には朱墨で傍点が振って強調されていた。
これは僕と友人のQが中学生のときの話だ。
駅から離れた町に住む僕たちにとってそのゲームセンターは大きくはなくともどんな遊園地よりも楽しい場所だった。
学校帰りに百円玉を握りしめて二人でよく通い詰めていた。
その日はどのゲームをやっても心ここにあらずだった。
やりこんだシューティングゲームにコインを3回投入した後に、ゲームセンターを出ることにした。
自動販売機で買ったジュースを持って僕とQは公園に寄った。
「なんであのゲーセンつぶれちゃうんだろ。そんなに人入ってなかったかなあ。」
Qは何も返事をしてくれなかった。
「来月からどうしようか。」
僕はどこで遊ぼうかという意味で聞いたのだ。
しかしQの返答は的外れだった。
「俺、明日から勉強する。」
定期試験が近づいているわけではなかった。
僕が冗談ととらえて笑いをこぼしても、Qの表情は固いままだった。
「俺、聞いたことがあるんだ。ゲーセンを経営するのは電気代がすっげーかかるって。」
言われてみればゲーセンは何台もゲームの筐体があり、どれもずっとつけっぱなしだった。
確かに電気代は相当なものかもしれないが、それとQが勉強するということが僕の頭の中ではつながらなかった。
「前テレビで見たんだ。核融合で電気を作ることができるようになればエネルギー問題は解決するって。俺勉強して科学者になって将来必ず核融合による発電をしてみせる。」
僕は驚いた。
「ま、まさかそれで……。」
「ああ、日本中のゲーセンを救ってみせる。」
Qの目は今まで見たことのない力強い輝きを放っていた。
僕は思わずQの肩に手を回した。
「ったく、お前ってやつはとんでもねーゲーセン馬鹿だぜ!」
夕暮れの公園で中学生の僕たちは笑いあった。
それから何十年経っただろう。
僕は会社で働き始め、少しづつキャリアを重ねていった。
職場で知り合った女性と結婚し家庭も持った。
朝、新聞を開くと僕はあっと声を出した。
一面には核融合による発電が来年からスタートと書かれてあり、わきの写真にはその技術を発明した科学者としてQの顔と名前があった。
僕の脳裏には何十年も前の夕暮れの公園が思い浮かんだ。
「あいつ、本当に科学者になって核融合を作ったのか。」
Qは確かにあの日から猛烈に勉強を始め、成績はグングン上がり、最終的には学年トップとなった。
いや、ゲーセンの電気代に気付きエネルギーの解決として核融合を考えたQだ。
もともと頭脳は明晰だったのだろう。
Qとは中学を卒業して以来遊ぶ回数は減っていき、大人になってからは全く会っていなかった。
Qはきっと勉強漬けの毎日を続けたのだろう。
そうして何十年越しにあの日の夢を叶えたのだ。
僕はパソコンのアドレス帳からQの名前を探し、連絡を取った。
彼は忙しいのにもかかわらず、僕と直接会う時間を作ってくれた。
僕の中には心配事があったのだ。
そしてこの数十年間研究に打ち込んでいたQはそれを知らないのではないか。
それは彼にはとても伝えづらいことだ。
しかし誰かが彼に伝えなくてはならない。
ならば友達の僕が、友達だからこそ彼に伝えてあげるべきなのだ。
ホテルのラウンジでコーヒーを飲んでいると、Qが現れた。
中学生のころよりだいぶやせているが、間違いなくQだ。
一通りの挨拶を終えると、僕は重い口を開いた。
「新聞で読んだよ。核融合の開発おめでとう。」
「ありがとう。これで世界のエネルギー問題は解決するぜ。」
Qは少年のような笑顔を見せたのが僕にはよけいつらかった。
「核融合を開発した理由はやはり中学生のときのことが原因かい?」
「よく覚えてるな。そうだ、これで全国のゲーセンを救うんだ。」
Qはコーヒーをぐいっと飲んだ。
「なあQ。なら君に言っておかなきゃいけないことがある。そんなこと考えてるのはもう無意味なんだよ。」
Qはカップを置いた。
「なぜ?」
僕は意を決して今ゲームセンターが置かれている状況を話した。
「全国のゲーセンはな、もうほとんどつぶれてるんだよ。電気代がとかじゃない。家庭用のゲーム機とかスマホのゲームに押されちゃったから!」
言い切ってしまった僕はまともに彼の目を見られなかった。
何せQはゲーセンの電気代の負担を軽くするためだけに猛勉強をして核融合を開発してしまったのだ。
今僕はQの全ての努力が無駄だと告げているのだ。
いや、新しいエネルギーなので無駄どころか人類の希望ではあるのだが、彼個人にとっては無駄に終わったのだ。
沈黙が重かった。
彼になんと声をかけようと考えていると、突然彼が笑い出した。
「あはは。馬鹿だなあ、お前は。そんなこと俺だって知ってるぜ。何? お前まさか今日それを伝えるために俺を呼んだの?」
大笑いするQに僕は安堵した。
心配して損したぜと、僕も大笑いした。
場所はホテルのラウンジだったが、こうして笑いあう僕たちは夕暮れの公園で肩を組んだあの頃のままだった。
笑い終えると、Qは身を乗り出した。
「友だちのお前にだけは教えてやる。知ってるか? 核融合は強力な兵器として使うこともできる。そして俺の本命はこっちさ。」
「じゃあもしかして。」
僕はQの目を覗き込んだ。
「ああ。これでゲーム機やスマホを作っている会社をすべて破壊する。そうすればゲーセンは復活する。」
Qの目は輝いていた。
それは核融合を開発すると言ったあの日の目だ。
彼ならきっとやり遂げるだろう。
僕はQの肩に手を回した。
「ったく、お前ってやつはとんでもねーゲーセン馬鹿だぜ!」
うん、僕たちはあの日のままだな。
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第10回『ゲームセンター 頭脳 核融合』
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お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
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詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
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当店は来月をもって閉店いたします。
墨汁でそう書かれた紙がゲームセンターの扉に貼ってあった。
ご丁寧に閉店の横には朱墨で傍点が振って強調されていた。
これは僕と友人のQが中学生のときの話だ。
駅から離れた町に住む僕たちにとってそのゲームセンターは大きくはなくともどんな遊園地よりも楽しい場所だった。
学校帰りに百円玉を握りしめて二人でよく通い詰めていた。
その日はどのゲームをやっても心ここにあらずだった。
やりこんだシューティングゲームにコインを3回投入した後に、ゲームセンターを出ることにした。
自動販売機で買ったジュースを持って僕とQは公園に寄った。
「なんであのゲーセンつぶれちゃうんだろ。そんなに人入ってなかったかなあ。」
Qは何も返事をしてくれなかった。
「来月からどうしようか。」
僕はどこで遊ぼうかという意味で聞いたのだ。
しかしQの返答は的外れだった。
「俺、明日から勉強する。」
定期試験が近づいているわけではなかった。
僕が冗談ととらえて笑いをこぼしても、Qの表情は固いままだった。
「俺、聞いたことがあるんだ。ゲーセンを経営するのは電気代がすっげーかかるって。」
言われてみればゲーセンは何台もゲームの筐体があり、どれもずっとつけっぱなしだった。
確かに電気代は相当なものかもしれないが、それとQが勉強するということが僕の頭の中ではつながらなかった。
「前テレビで見たんだ。核融合で電気を作ることができるようになればエネルギー問題は解決するって。俺勉強して科学者になって将来必ず核融合による発電をしてみせる。」
僕は驚いた。
「ま、まさかそれで……。」
「ああ、日本中のゲーセンを救ってみせる。」
Qの目は今まで見たことのない力強い輝きを放っていた。
僕は思わずQの肩に手を回した。
「ったく、お前ってやつはとんでもねーゲーセン馬鹿だぜ!」
夕暮れの公園で中学生の僕たちは笑いあった。
それから何十年経っただろう。
僕は会社で働き始め、少しづつキャリアを重ねていった。
職場で知り合った女性と結婚し家庭も持った。
朝、新聞を開くと僕はあっと声を出した。
一面には核融合による発電が来年からスタートと書かれてあり、わきの写真にはその技術を発明した科学者としてQの顔と名前があった。
僕の脳裏には何十年も前の夕暮れの公園が思い浮かんだ。
「あいつ、本当に科学者になって核融合を作ったのか。」
Qは確かにあの日から猛烈に勉強を始め、成績はグングン上がり、最終的には学年トップとなった。
いや、ゲーセンの電気代に気付きエネルギーの解決として核融合を考えたQだ。
もともと頭脳は明晰だったのだろう。
Qとは中学を卒業して以来遊ぶ回数は減っていき、大人になってからは全く会っていなかった。
Qはきっと勉強漬けの毎日を続けたのだろう。
そうして何十年越しにあの日の夢を叶えたのだ。
僕はパソコンのアドレス帳からQの名前を探し、連絡を取った。
彼は忙しいのにもかかわらず、僕と直接会う時間を作ってくれた。
僕の中には心配事があったのだ。
そしてこの数十年間研究に打ち込んでいたQはそれを知らないのではないか。
それは彼にはとても伝えづらいことだ。
しかし誰かが彼に伝えなくてはならない。
ならば友達の僕が、友達だからこそ彼に伝えてあげるべきなのだ。
ホテルのラウンジでコーヒーを飲んでいると、Qが現れた。
中学生のころよりだいぶやせているが、間違いなくQだ。
一通りの挨拶を終えると、僕は重い口を開いた。
「新聞で読んだよ。核融合の開発おめでとう。」
「ありがとう。これで世界のエネルギー問題は解決するぜ。」
Qは少年のような笑顔を見せたのが僕にはよけいつらかった。
「核融合を開発した理由はやはり中学生のときのことが原因かい?」
「よく覚えてるな。そうだ、これで全国のゲーセンを救うんだ。」
Qはコーヒーをぐいっと飲んだ。
「なあQ。なら君に言っておかなきゃいけないことがある。そんなこと考えてるのはもう無意味なんだよ。」
Qはカップを置いた。
「なぜ?」
僕は意を決して今ゲームセンターが置かれている状況を話した。
「全国のゲーセンはな、もうほとんどつぶれてるんだよ。電気代がとかじゃない。家庭用のゲーム機とかスマホのゲームに押されちゃったから!」
言い切ってしまった僕はまともに彼の目を見られなかった。
何せQはゲーセンの電気代の負担を軽くするためだけに猛勉強をして核融合を開発してしまったのだ。
今僕はQの全ての努力が無駄だと告げているのだ。
いや、新しいエネルギーなので無駄どころか人類の希望ではあるのだが、彼個人にとっては無駄に終わったのだ。
沈黙が重かった。
彼になんと声をかけようと考えていると、突然彼が笑い出した。
「あはは。馬鹿だなあ、お前は。そんなこと俺だって知ってるぜ。何? お前まさか今日それを伝えるために俺を呼んだの?」
大笑いするQに僕は安堵した。
心配して損したぜと、僕も大笑いした。
場所はホテルのラウンジだったが、こうして笑いあう僕たちは夕暮れの公園で肩を組んだあの頃のままだった。
笑い終えると、Qは身を乗り出した。
「友だちのお前にだけは教えてやる。知ってるか? 核融合は強力な兵器として使うこともできる。そして俺の本命はこっちさ。」
「じゃあもしかして。」
僕はQの目を覗き込んだ。
「ああ。これでゲーム機やスマホを作っている会社をすべて破壊する。そうすればゲーセンは復活する。」
Qの目は輝いていた。
それは核融合を開発すると言ったあの日の目だ。
彼ならきっとやり遂げるだろう。
僕はQの肩に手を回した。
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