YouTubeのライブ配信にてガチャで決めた3つのお題で三題噺を即興で書いてます。

鉄砲E

文字の大きさ
10 / 174

第10回『ゲームセンター 頭脳 核融合』

しおりを挟む
YouTubeで行った
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第10回『ゲームセンター 頭脳 核融合』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約1時間15分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=7nKd3OU9ftw

↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/

~・~・~・~・~

当店は来月をもって閉店いたします。
墨汁でそう書かれた紙がの扉に貼ってあった。
ご丁寧に閉店の横には朱墨で傍点が振って強調されていた。
これは僕と友人のQが中学生のときの話だ。
駅から離れた町に住む僕たちにとってそのは大きくはなくともどんな遊園地よりも楽しい場所だった。
学校帰りに百円玉を握りしめて二人でよく通い詰めていた。

その日はどのゲームをやっても心ここにあらずだった。
やりこんだシューティングゲームにコインを3回投入した後に、を出ることにした。
自動販売機で買ったジュースを持って僕とQは公園に寄った。
「なんであのゲーセンつぶれちゃうんだろ。そんなに人入ってなかったかなあ。」
Qは何も返事をしてくれなかった。
「来月からどうしようか。」
僕はどこで遊ぼうかという意味で聞いたのだ。
しかしQの返答は的外れだった。
「俺、明日から勉強する。」
定期試験が近づいているわけではなかった。
僕が冗談ととらえて笑いをこぼしても、Qの表情は固いままだった。
「俺、聞いたことがあるんだ。ゲーセンを経営するのは電気代がすっげーかかるって。」
言われてみればゲーセンは何台もゲームの筐体があり、どれもずっとつけっぱなしだった。
確かに電気代は相当なものかもしれないが、それとQが勉強するということが僕の頭の中ではつながらなかった。
「前テレビで見たんだ。で電気を作ることができるようになればエネルギー問題は解決するって。俺勉強して科学者になって将来必ずによる発電をしてみせる。」
僕は驚いた。
「ま、まさかそれで……。」
「ああ、日本中のゲーセンを救ってみせる。」
Qの目は今まで見たことのない力強い輝きを放っていた。
僕は思わずQの肩に手を回した。
「ったく、お前ってやつはとんでもねーゲーセン馬鹿だぜ!」
夕暮れの公園で中学生の僕たちは笑いあった。

それから何十年経っただろう。
僕は会社で働き始め、少しづつキャリアを重ねていった。
職場で知り合った女性と結婚し家庭も持った。
朝、新聞を開くと僕はあっと声を出した。
一面にはによる発電が来年からスタートと書かれてあり、わきの写真にはその技術を発明した科学者としてQの顔と名前があった。
僕の脳裏には何十年も前の夕暮れの公園が思い浮かんだ。
「あいつ、本当に科学者になってを作ったのか。」
Qは確かにあの日から猛烈に勉強を始め、成績はグングン上がり、最終的には学年トップとなった。
いや、ゲーセンの電気代に気付きエネルギーの解決としてを考えたQだ。
もともとは明晰だったのだろう。
Qとは中学を卒業して以来遊ぶ回数は減っていき、大人になってからは全く会っていなかった。
Qはきっと勉強漬けの毎日を続けたのだろう。
そうして何十年越しにあの日の夢を叶えたのだ。
僕はパソコンのアドレス帳からQの名前を探し、連絡を取った。
彼は忙しいのにもかかわらず、僕と直接会う時間を作ってくれた。
僕の中には心配事があったのだ。
そしてこの数十年間研究に打ち込んでいたQはそれを知らないのではないか。
それは彼にはとても伝えづらいことだ。
しかし誰かが彼に伝えなくてはならない。
ならば友達の僕が、友達だからこそ彼に伝えてあげるべきなのだ。

ホテルのラウンジでコーヒーを飲んでいると、Qが現れた。
中学生のころよりだいぶやせているが、間違いなくQだ。
一通りの挨拶を終えると、僕は重い口を開いた。
「新聞で読んだよ。の開発おめでとう。」
「ありがとう。これで世界のエネルギー問題は解決するぜ。」
Qは少年のような笑顔を見せたのが僕にはよけいつらかった。
を開発した理由はやはり中学生のときのことが原因かい?」
「よく覚えてるな。そうだ、これで全国のゲーセンを救うんだ。」
Qはコーヒーをぐいっと飲んだ。
「なあQ。なら君に言っておかなきゃいけないことがある。そんなこと考えてるのはもう無意味なんだよ。」
Qはカップを置いた。
「なぜ?」
僕は意を決して今が置かれている状況を話した。
「全国のゲーセンはな、もうほとんどつぶれてるんだよ。電気代がとかじゃない。家庭用のゲーム機とかスマホのゲームに押されちゃったから!」
言い切ってしまった僕はまともに彼の目を見られなかった。
何せQはゲーセンの電気代の負担を軽くするためだけに猛勉強をして核融合を開発してしまったのだ。
今僕はQの全ての努力が無駄だと告げているのだ。
いや、新しいエネルギーなので無駄どころか人類の希望ではあるのだが、彼個人にとっては無駄に終わったのだ。
沈黙が重かった。
彼になんと声をかけようと考えていると、突然彼が笑い出した。
「あはは。馬鹿だなあ、お前は。そんなこと俺だって知ってるぜ。何? お前まさか今日それを伝えるために俺を呼んだの?」
大笑いするQに僕は安堵した。
心配して損したぜと、僕も大笑いした。
場所はホテルのラウンジだったが、こうして笑いあう僕たちは夕暮れの公園で肩を組んだあの頃のままだった。
笑い終えると、Qは身を乗り出した。
「友だちのお前にだけは教えてやる。知ってるか? は強力な兵器として使うこともできる。そして俺の本命はこっちさ。」
「じゃあもしかして。」
僕はQの目を覗き込んだ。
「ああ。これでゲーム機やスマホを作っている会社をすべて破壊する。そうすればゲーセンは復活する。」
Qの目は輝いていた。
それはを開発すると言ったあの日の目だ。
彼ならきっとやり遂げるだろう。
僕はQの肩に手を回した。
「ったく、お前ってやつはとんでもねーゲーセン馬鹿だぜ!」
うん、僕たちはあの日のままだな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

真面目な女性教師が眼鏡を掛けて誘惑してきた

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
仲良くしていた女性達が俺にだけ見せてくれた最も可愛い瞬間のほっこり実話です

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...