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第87回『雑学 モアイ像 じゃがいも』
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YouTubeで行った
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第87回『雑学 モアイ像 じゃがいも』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約56分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/
~・~・~・~・~
俺には限界が来ていたことがわかっていた。
目は血走り、目に映るもの全てが自分の食い物のように見えていた。
呼吸は獣のように荒く生暖かいのが自分でもわかった。
風が吹くようなささいな音で全身がぴくりと反応するほど神経が過敏になっていた。
部屋の隅でひざを抱えて座っている姿はまるで自分で自分を押さえつけているようだ。
外からはときおり子どもたちの声や大人の話し声が聞こえた。
その抑揚からはどいつもこいつも平和と幸せがにじみ出ていた。
そのたびに俺は今の自分と比べ、歯ぎしりをし、拳を握った。
台所からぴちょんという水滴の垂れる音に俺は気付いた。
ぴちょん、ぴちょん……。
時間をおいて定期的に流し台を叩く水滴は、俺を催促しているように聞こえてきた。
やれば?、やればいいじゃん?、やれよ!、と。
俺はゆっくりと立ち上がり、畳の上をふらふらと歩き台所へと向かった。
コンロに乗ったやかんや、壁に立てかけられたフライパンになつかしさを覚えた。
ここに立ったのはどれくらいぶりだろう。
いや、水を飲むときはここに来ていた。
つまり、流し台の下の収納を最後に開けたのはいつだっただろう。
ギギという開閉のたびにきしんだ音を出す扉の中にあるのはこの部屋に引っ越してきたときに買った安物の包丁だ。
包丁から湧きたつ、鉄特有のにおいが鼻の奥をくすぐった。
こいつは俺がどんなに苦しんでいる時もじっとここにいて待ってくれていたのだ。
しばらく使っていなかった包丁の切れ味はどうなんだろうという疑問もわいた。
だがなにもかも考えることがいやになっていた俺の脳みそはすぐにまあいっかという、部屋の隅に座っていた今までの自分なら考えられないくらいの楽天さでその疑問を追い払った。
俺は包丁を手に取った。
ずっと暗い収納の中に置かれていたせいか、刃だけでなく柄までひんやりと冷たかった。
外からは子どもの通る声が聞こえた。
学校帰りだろうか。
それともこれからみんなで遊びに行くつもりなのだろうか。
いずれにしろ、子どもたちは今から俺がすることを想像すらできないだろう。
俺は決めたんだ。
止めてもむだだ。
俺は今から、自炊する。
腹減った!
もう限界だ!
お米をごっしごっしごっし。
炊飯器に入れて炊きあがりを待てばご飯はOK。
続いては、具!
テーブルに置いたルーの箱を見ると、肉、じゃがいも、にんじん、とな!
肉は豚コマを手で適当にちぎった。
にんじんは皮も栄養があると聞いたので、よく洗ったあとそのまま輪切りにしていった。
そしてじゃがいも。
こればっかりはちゃんと皮もむかなくてはならない。
しかし決して料理が得意ではない俺は皮をきれいにむくことができず、まな板の上にはじゃがいもがたくさんついた皮がつぎつぎと落ちていった。
食材がもったいないが、じゃがいもは形がでこぼことしているのでこればっかりはしょうがないだろう。
荒い断面でカットされたじゃがいもをまな板の上に置いていくと、俺はすごいことに気付いた。
モアイ像みたいだ!
細長くやや後ろ向きに立ちところどころでっぱりがあるそのじゃがいもは、まさにイースター島にあるモアイ像そっくりだった。
ご丁寧にじゃがいもにときどきあるあの茶色く変色した部分は、ちょうど目のところらへんにあってますますモアイ像だった。
俺はじゃがいもは南米から伝わったという高度な雑学を思い出した。
イースター島があるのも南米。
実はモアイ像はカレーライスに感謝して作ったのではないかと思えてきた。
楽しくって、新たな知見も広がって、そしておいしい。
やはり自炊はよいものだ。
~・~・~・~・~
~感想~
じゃがいもを切ったらモアイ像に見えたというシーンから話を考えていきました。
その件で雑学も使うことができそうなので、話として成立させるために飢えた男が久しぶりに自炊をするという話を、前半はサスペンスのようにミスリードさせるという構成にしました。
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第87回『雑学 モアイ像 じゃがいも』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約56分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
↓使用させていただいたサイト↓
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~・~・~・~・~
俺には限界が来ていたことがわかっていた。
目は血走り、目に映るもの全てが自分の食い物のように見えていた。
呼吸は獣のように荒く生暖かいのが自分でもわかった。
風が吹くようなささいな音で全身がぴくりと反応するほど神経が過敏になっていた。
部屋の隅でひざを抱えて座っている姿はまるで自分で自分を押さえつけているようだ。
外からはときおり子どもたちの声や大人の話し声が聞こえた。
その抑揚からはどいつもこいつも平和と幸せがにじみ出ていた。
そのたびに俺は今の自分と比べ、歯ぎしりをし、拳を握った。
台所からぴちょんという水滴の垂れる音に俺は気付いた。
ぴちょん、ぴちょん……。
時間をおいて定期的に流し台を叩く水滴は、俺を催促しているように聞こえてきた。
やれば?、やればいいじゃん?、やれよ!、と。
俺はゆっくりと立ち上がり、畳の上をふらふらと歩き台所へと向かった。
コンロに乗ったやかんや、壁に立てかけられたフライパンになつかしさを覚えた。
ここに立ったのはどれくらいぶりだろう。
いや、水を飲むときはここに来ていた。
つまり、流し台の下の収納を最後に開けたのはいつだっただろう。
ギギという開閉のたびにきしんだ音を出す扉の中にあるのはこの部屋に引っ越してきたときに買った安物の包丁だ。
包丁から湧きたつ、鉄特有のにおいが鼻の奥をくすぐった。
こいつは俺がどんなに苦しんでいる時もじっとここにいて待ってくれていたのだ。
しばらく使っていなかった包丁の切れ味はどうなんだろうという疑問もわいた。
だがなにもかも考えることがいやになっていた俺の脳みそはすぐにまあいっかという、部屋の隅に座っていた今までの自分なら考えられないくらいの楽天さでその疑問を追い払った。
俺は包丁を手に取った。
ずっと暗い収納の中に置かれていたせいか、刃だけでなく柄までひんやりと冷たかった。
外からは子どもの通る声が聞こえた。
学校帰りだろうか。
それともこれからみんなで遊びに行くつもりなのだろうか。
いずれにしろ、子どもたちは今から俺がすることを想像すらできないだろう。
俺は決めたんだ。
止めてもむだだ。
俺は今から、自炊する。
腹減った!
もう限界だ!
お米をごっしごっしごっし。
炊飯器に入れて炊きあがりを待てばご飯はOK。
続いては、具!
テーブルに置いたルーの箱を見ると、肉、じゃがいも、にんじん、とな!
肉は豚コマを手で適当にちぎった。
にんじんは皮も栄養があると聞いたので、よく洗ったあとそのまま輪切りにしていった。
そしてじゃがいも。
こればっかりはちゃんと皮もむかなくてはならない。
しかし決して料理が得意ではない俺は皮をきれいにむくことができず、まな板の上にはじゃがいもがたくさんついた皮がつぎつぎと落ちていった。
食材がもったいないが、じゃがいもは形がでこぼことしているのでこればっかりはしょうがないだろう。
荒い断面でカットされたじゃがいもをまな板の上に置いていくと、俺はすごいことに気付いた。
モアイ像みたいだ!
細長くやや後ろ向きに立ちところどころでっぱりがあるそのじゃがいもは、まさにイースター島にあるモアイ像そっくりだった。
ご丁寧にじゃがいもにときどきあるあの茶色く変色した部分は、ちょうど目のところらへんにあってますますモアイ像だった。
俺はじゃがいもは南米から伝わったという高度な雑学を思い出した。
イースター島があるのも南米。
実はモアイ像はカレーライスに感謝して作ったのではないかと思えてきた。
楽しくって、新たな知見も広がって、そしておいしい。
やはり自炊はよいものだ。
~・~・~・~・~
~感想~
じゃがいもを切ったらモアイ像に見えたというシーンから話を考えていきました。
その件で雑学も使うことができそうなので、話として成立させるために飢えた男が久しぶりに自炊をするという話を、前半はサスペンスのようにミスリードさせるという構成にしました。
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