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第125回『パンフレット 絶命 桜』
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YouTubeで行った
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第125回『パンフレット 絶命 桜』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約53分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
https://www.youtube.com/watch?v=jrlj_k-TDLI
↓使用させていただいたサイト↓
ランダム単語ガチャ
https://tango-gacha.com/
~・~・~・~・~
和菓子屋の助さんは悩んでいた。
曾祖父の代から続くこの店を継いだはいいが、店に全然客が入らないからだ。
このままでは助さんの代でつぶれてしまう。
そうなったらご先祖様たちに申し訳が立たない。
助さんはある日、店に立ち寄った六さんに相談した。
六さんは近所の顔なじみだ。
「別にお前の菓子作りの腕が悪いわけじゃない。どれもうまい。客への愛想もいい。となると足りないのは話題性だろう。」
確かに助さんは呼び込みが下手だった。
出来上がった和菓子を並べているだけで、日々通りにはたくさんの人が行き交っているのにみな店の前を通り過ぎていく。
「それじゃあおいしく作りましたって宣伝するか。」
六さんはかぶりを振った。
「そんなのインパクト不足だ。食い物屋がおいしいですって言うのは当たり前だからな。」
「じゃあどうすればいいだろう。」
助さんは肩を落とした。
「そこはお前、江戸っ子の気性を利用するんだよ。」
「江戸っ子の気性?」
「そうだ。二町行った先の留吉のラーメン屋を知ってるか? あいつも昔人が入ってこなくて店をたたむ寸前だったんだよ。でも今はたくさん人が入ってるだろう?」
「どうしてだい?」
助さんは顔を上げた。
「あいつ近頃舶来から仕入れた唐辛子を使ったラーメンを作ったんだよ。」
「そうか。それが辛くておいしくて大好評になったんだね。」
六さんは再びかぶりを振った。
「いいや、それだけじゃねえ。奴はこう言って売り出したんだ。『辛くて絶命必至!』ってな。」
「絶命必至だったら誰も食べに来ないんじゃないか?」
助さんは顔をかしげた。
「だからだよ。江戸っ子ってのはな、へそ曲がりなんだ。死ぬぞって言われると、むしろ試したくなるんだ。」
「へ~。そうやってだんだんお客が入っていったんだね。」
助さんが納得したのを見て、六さんの顔はいたずらをしているときの悪ガキの頃に戻った。
「そこでな、そろそろ桜餅の季節だろ。こんなパンフレットを配っとけ。『餅はのどを詰まらせ死に至らしめる危険な和菓子。桜餅は食えば桜のごとくはかなく散るからそう名付けられた。』ってな。」
もちろん桜餅の由来は塩漬けにした桜の葉を使用するからだ。
しかし食べれば死ぬからそう名付けられたと言われたら、己の怖いもの知らずを見せたい江戸っ子は寄って集まってくるだろう。
助さんに笑顔が戻ってきた。
「ありがとう、六さん。このお礼はきっとするよ。」
「いいってことよ。江戸っ子は義理人情に厚いんだよ。」
そう言い残して六さんは去っていった。
いい町に生まれてきてよかったなと感謝の気持ちで胸がいっぱいになりながら、助さんはさっそくパンフレットを印刷し、また桜餅作りに励んだ。
後日六さんが助さんの店に立ち寄ると、長い行列ができていた。
みな助さんの桜餅を買い求めていた。
桜餅を手に家路を急ぐ人たちは老若男女問わずみなうれしそうだ。
おそらくこれを食べる姿を想像してわくわくしているのだろう。
人の山をかきわけて六さんは店に入った。
店では助さんが忙しそうに客をさばいていた。
「助さん。やったじゃねえか。大入りだ。やっぱり食うと死ぬって宣伝が効いたみたいだな。」
しかし助さんは悲しそうな顔を浮かべていた。
「どうしたんだよ。桜餅が売れるのがうれしくないのかよ。」
六さんに聞かれると、助さんは力なく答えた。
「そりゃあうれしいよ。でもみんな、買う桜餅は全部贈答用なんだ。」
店の棚を見ると確かに自分が食べるための桜餅はまったく売れていなかった。
六さんは振り返った。
桜餅を手に家路を急ぐ人たちは老若男女問わずみなうれしそうだ。
おそらくこれを食べる姿を想像してわくわくしているのだろう。
~・~・~・~・~
~感想~
桜と絶命ははかない命という共通点をもとにしようと考えました。
また、パンフレットは商売・説明のイメージがあるので、桜餅を食べると絶命するという嘘のパンフレットを考えました。
オチが決まったら語り口は落語のようにすることにしました。
贈答用で終わった方がきれいだと思いますが、わかりやすさを重視して説明となる描写を段落前半からもう一度持ってきました。
ライブ配信にて三題噺を即興で書きました 第125回『パンフレット 絶命 桜』
の完成テキストです。
お題はガチャで決めました。
お題には傍点を振ってあります。
所要時間は約53分でした。
詳しくは動画もご覧いただけたら幸いです。↓
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和菓子屋の助さんは悩んでいた。
曾祖父の代から続くこの店を継いだはいいが、店に全然客が入らないからだ。
このままでは助さんの代でつぶれてしまう。
そうなったらご先祖様たちに申し訳が立たない。
助さんはある日、店に立ち寄った六さんに相談した。
六さんは近所の顔なじみだ。
「別にお前の菓子作りの腕が悪いわけじゃない。どれもうまい。客への愛想もいい。となると足りないのは話題性だろう。」
確かに助さんは呼び込みが下手だった。
出来上がった和菓子を並べているだけで、日々通りにはたくさんの人が行き交っているのにみな店の前を通り過ぎていく。
「それじゃあおいしく作りましたって宣伝するか。」
六さんはかぶりを振った。
「そんなのインパクト不足だ。食い物屋がおいしいですって言うのは当たり前だからな。」
「じゃあどうすればいいだろう。」
助さんは肩を落とした。
「そこはお前、江戸っ子の気性を利用するんだよ。」
「江戸っ子の気性?」
「そうだ。二町行った先の留吉のラーメン屋を知ってるか? あいつも昔人が入ってこなくて店をたたむ寸前だったんだよ。でも今はたくさん人が入ってるだろう?」
「どうしてだい?」
助さんは顔を上げた。
「あいつ近頃舶来から仕入れた唐辛子を使ったラーメンを作ったんだよ。」
「そうか。それが辛くておいしくて大好評になったんだね。」
六さんは再びかぶりを振った。
「いいや、それだけじゃねえ。奴はこう言って売り出したんだ。『辛くて絶命必至!』ってな。」
「絶命必至だったら誰も食べに来ないんじゃないか?」
助さんは顔をかしげた。
「だからだよ。江戸っ子ってのはな、へそ曲がりなんだ。死ぬぞって言われると、むしろ試したくなるんだ。」
「へ~。そうやってだんだんお客が入っていったんだね。」
助さんが納得したのを見て、六さんの顔はいたずらをしているときの悪ガキの頃に戻った。
「そこでな、そろそろ桜餅の季節だろ。こんなパンフレットを配っとけ。『餅はのどを詰まらせ死に至らしめる危険な和菓子。桜餅は食えば桜のごとくはかなく散るからそう名付けられた。』ってな。」
もちろん桜餅の由来は塩漬けにした桜の葉を使用するからだ。
しかし食べれば死ぬからそう名付けられたと言われたら、己の怖いもの知らずを見せたい江戸っ子は寄って集まってくるだろう。
助さんに笑顔が戻ってきた。
「ありがとう、六さん。このお礼はきっとするよ。」
「いいってことよ。江戸っ子は義理人情に厚いんだよ。」
そう言い残して六さんは去っていった。
いい町に生まれてきてよかったなと感謝の気持ちで胸がいっぱいになりながら、助さんはさっそくパンフレットを印刷し、また桜餅作りに励んだ。
後日六さんが助さんの店に立ち寄ると、長い行列ができていた。
みな助さんの桜餅を買い求めていた。
桜餅を手に家路を急ぐ人たちは老若男女問わずみなうれしそうだ。
おそらくこれを食べる姿を想像してわくわくしているのだろう。
人の山をかきわけて六さんは店に入った。
店では助さんが忙しそうに客をさばいていた。
「助さん。やったじゃねえか。大入りだ。やっぱり食うと死ぬって宣伝が効いたみたいだな。」
しかし助さんは悲しそうな顔を浮かべていた。
「どうしたんだよ。桜餅が売れるのがうれしくないのかよ。」
六さんに聞かれると、助さんは力なく答えた。
「そりゃあうれしいよ。でもみんな、買う桜餅は全部贈答用なんだ。」
店の棚を見ると確かに自分が食べるための桜餅はまったく売れていなかった。
六さんは振り返った。
桜餅を手に家路を急ぐ人たちは老若男女問わずみなうれしそうだ。
おそらくこれを食べる姿を想像してわくわくしているのだろう。
~・~・~・~・~
~感想~
桜と絶命ははかない命という共通点をもとにしようと考えました。
また、パンフレットは商売・説明のイメージがあるので、桜餅を食べると絶命するという嘘のパンフレットを考えました。
オチが決まったら語り口は落語のようにすることにしました。
贈答用で終わった方がきれいだと思いますが、わかりやすさを重視して説明となる描写を段落前半からもう一度持ってきました。
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