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隣人を回避せよ(4)
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「え……と、柳瀬さん?」
昨日会わないように徹底すると決めたばかりなのに、なんで俺インターホンのモニター確認しなかったんだ。というか、なんでうちに来てるんだ!
とはいえやつは自分に気づいてないわけだし、とりあえずただの隣人として対応すればいいと試みたが、
「お前……高梨千秋、だよな」
「えっ」
千秋は漫画みたいにビクッ!と肩を強張らせた。
その口から自分のフルネームが出てきたことに、心底驚く。
「な、な……」
「やっぱり、そうだったのか。高梨、久しぶりだな……」
少し微笑んだ彼が、玄関に入ってこようとする。なんで今さら?とかいう一番の疑問はあったけど、先に千秋の脳内警報が鳴り響いた。
「あ、おいっ」
「ひ、人違いです」
「俺が見間違えるわけない」
昨日は気づかなかっただろ!と心の中で突っ込みながら、ぎぎぎとドアをむりやり閉めようとしたけど、やつの力が強すぎるのか全然閉まってくれない。それどころか、また開いていっている気がする。
「近所迷惑なんで!帰ってください!」
「なんでしゃもじ持ってんだ。というかお前、先週会ったのに俺に気づかなかったのか?」
後半の英司の言葉に、はあ?それお前が言うか?と思考に意識を逸らしてしまうと、その一瞬で、ついにドアが全開になってしまった。全力の抵抗も虚しく、その隙に玄関に入ってくる英司。
「ちょっと、勝手に入んないでくださいよ!」
「なんだ?すげえいい匂いする」
「え?あっ!」
しまった、スープの鍋の火つけっぱなしだった。
ドタドタとキッチンに駆け込むと、鍋からスープが溢れかけていた。間一髪のところで火を止めると、スープは無事に落ち着きを取り戻す。
「せ、セーフ……」
ほっと胸を撫で下ろす。
「うまそうだな」
いつの間にかここまで入ってきたらしい。英司にいきなり後ろから覗き込まれてびっくりする。まじで、不法侵入で訴えてやろうか。
「あの、俺、今から飯なんで。帰ってくれませんか?」
冷ややかな目線を向けてやると、英司は不満そうにむっと眉間を寄せた。
あまり表情の変化は激しくない英司だが、全く表情に出ないわけじゃない。千秋は背を向けて、今度こそ米を茶碗によそう。
「お前なんでそんな態度なわけ。中学の頃と全然……」
あの頃は、もっと愛想よかったってか。
どちらにせよ、自分を騙した英司にそんなこと言われる筋合いはない。最低なことをした自覚すらないのか、してる上でこうなのか、こちらこそその態度を問いたい。千秋は軽くため息をついた。
「中学の頃とは違います。だから……」
そろそろ本格的に追い返そうとしたとき、ドタン!と後ろから大きな音がした。
「や、柳瀬さん!?」
うつ伏せに倒れているのは一人しかいない、英司で、流石に焦った千秋は駆け寄って英司の名前を呼ぶ。
嘘だろいきなり?そうだ救急車……!
慌てて携帯を取りに行こうと立ち上がると、英司が何か言ったのが聞こえる。よかった、生きてはいるようだ。
「な、柳瀬さん、大丈夫なんですか?」
再び英司のそばにしゃがみ込むと、何か言ってる彼に耳を傾ける。英司は苦しそうに千秋の方に手を伸ばしながら、うめくように言った。
「め、飯……」
「は?」
昨日会わないように徹底すると決めたばかりなのに、なんで俺インターホンのモニター確認しなかったんだ。というか、なんでうちに来てるんだ!
とはいえやつは自分に気づいてないわけだし、とりあえずただの隣人として対応すればいいと試みたが、
「お前……高梨千秋、だよな」
「えっ」
千秋は漫画みたいにビクッ!と肩を強張らせた。
その口から自分のフルネームが出てきたことに、心底驚く。
「な、な……」
「やっぱり、そうだったのか。高梨、久しぶりだな……」
少し微笑んだ彼が、玄関に入ってこようとする。なんで今さら?とかいう一番の疑問はあったけど、先に千秋の脳内警報が鳴り響いた。
「あ、おいっ」
「ひ、人違いです」
「俺が見間違えるわけない」
昨日は気づかなかっただろ!と心の中で突っ込みながら、ぎぎぎとドアをむりやり閉めようとしたけど、やつの力が強すぎるのか全然閉まってくれない。それどころか、また開いていっている気がする。
「近所迷惑なんで!帰ってください!」
「なんでしゃもじ持ってんだ。というかお前、先週会ったのに俺に気づかなかったのか?」
後半の英司の言葉に、はあ?それお前が言うか?と思考に意識を逸らしてしまうと、その一瞬で、ついにドアが全開になってしまった。全力の抵抗も虚しく、その隙に玄関に入ってくる英司。
「ちょっと、勝手に入んないでくださいよ!」
「なんだ?すげえいい匂いする」
「え?あっ!」
しまった、スープの鍋の火つけっぱなしだった。
ドタドタとキッチンに駆け込むと、鍋からスープが溢れかけていた。間一髪のところで火を止めると、スープは無事に落ち着きを取り戻す。
「せ、セーフ……」
ほっと胸を撫で下ろす。
「うまそうだな」
いつの間にかここまで入ってきたらしい。英司にいきなり後ろから覗き込まれてびっくりする。まじで、不法侵入で訴えてやろうか。
「あの、俺、今から飯なんで。帰ってくれませんか?」
冷ややかな目線を向けてやると、英司は不満そうにむっと眉間を寄せた。
あまり表情の変化は激しくない英司だが、全く表情に出ないわけじゃない。千秋は背を向けて、今度こそ米を茶碗によそう。
「お前なんでそんな態度なわけ。中学の頃と全然……」
あの頃は、もっと愛想よかったってか。
どちらにせよ、自分を騙した英司にそんなこと言われる筋合いはない。最低なことをした自覚すらないのか、してる上でこうなのか、こちらこそその態度を問いたい。千秋は軽くため息をついた。
「中学の頃とは違います。だから……」
そろそろ本格的に追い返そうとしたとき、ドタン!と後ろから大きな音がした。
「や、柳瀬さん!?」
うつ伏せに倒れているのは一人しかいない、英司で、流石に焦った千秋は駆け寄って英司の名前を呼ぶ。
嘘だろいきなり?そうだ救急車……!
慌てて携帯を取りに行こうと立ち上がると、英司が何か言ったのが聞こえる。よかった、生きてはいるようだ。
「な、柳瀬さん、大丈夫なんですか?」
再び英司のそばにしゃがみ込むと、何か言ってる彼に耳を傾ける。英司は苦しそうに千秋の方に手を伸ばしながら、うめくように言った。
「め、飯……」
「は?」
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