運命の恋に落ちた最強魔術師、の娘はクズな父親を許さない

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8 騎士一族と黒鉄編

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 王太子殿下の『そんな理由』発言に、私は思わずカッとなる。

 今、王太子殿下は執務の机に座ってのうのうとしていて、私たちはその目の前に立っている状態。

 まぁ、こちらが押し掛けたんだから、ソファーに案内しろだとか、お茶とお菓子を出せだとか、そんなことを言い出すつもりはなかったのに。

「ここの侍従さんはお茶とお菓子も出してくれないんだ、いちおう、これでも魔導公なのに」

 ムカつきついでに、思ってもいない言葉が出てしまった。

 苦笑する王太子殿下に、顔をさっと青くする侍従さん。

「ルベラス魔導公殿が、先触れもなくやってきたものだからな。準備が間に合わなかった」

 しれっと答えている隙に、さささっと席が用意される。

「しかし、行動はともかく。魔導公としての態度は様になってきたな。以前より風格が出ている」

 なにやら、おもしろそうに観察されてるみたいだけれど、ここに来たのは私の態度や風格の話をするためではない。

 王太子殿下の『そんな理由』発言でムカついたせいで、予定になかったことを喋って脇にそれてしまった。
 それを修正するべく、私は、いきなり本題に入る。

「グレイの入城禁止。もう、解除でいいんですよね?」

 私の発言で、王太子殿下の表情が凍りついたように止まった。

 今の今まで、私を見て、おもしろそうにしていたその顔は同じままなのに、別な表情に見える。

「グレイは闘技会に出場するんですよ?」

 私は畳みかけるように発言を続けた。

「入城禁止のままだと、出場できないじゃないですか!」

「他に気になることはないのか? 筆頭殿のこととか、五強のこととか、仮主たちのこととか」

 私の問いかけにはいっさい答えず、王太子殿下はあからさまに話題を変える。
 話題は変えても表情は止まったまま変わることはなく、私の胸の中に嫌な予感ばかりがどんどん大きくなっていった。

「そういう話は殿下が担当ですよね。私の担当、デルティ殿下なので。担当外のことには興味ありません」

 私は嫌な予感をきれいさっぱりとさせるように、王太子殿下の質問もばっさりと切り捨てた。

 私の拒絶するような切り捨て方に、怯むかと思いきや、王太子殿下もなかなかしぶとい。

「君も察しているとおり、デルティは、君のおかげで躍進的な成長を見せている」

「物は言い様ですね」

「なので、デルティの心配はしばらく必要ないだろう」

「定期的に引き締める必要はありますよね」

 今度はデルティ殿下の話題にすり替えて、隙を見てまたもや五強の話題を持ち出してくる。

「そこで、しばらくは五強の方の監視を、」

「それ、ケルビウスがやってますよね」

 すかさず、私は口を挟んだ。
 最後まで言わせてたまるものか、という意思を前面に出して。

 力強い拒絶に、今度こそ殿下の言葉が止まる。

「…………知ってたのか」

 そして長々と深いため息。

 ため息をつきたいのは私の方だわ。
 散々、グレイの話題をごまかしてはっきりさせないんだから。

 こうなったら、グレイの入城禁止を解除してもらうまで、絶対に食い下がってやる。

 私は決意を新たに王太子殿下をキッも睨んで、私の推察を語って聞かせた。

「あのケルビウスが食いつかないはずありませんよね。なんでも知りたがって、なんでも調べたがるケルビウスが。
 五強すべてが活動してるっていうレアな状況をそのままにしておくなんて、まず、あり得ませんよね」

「鋭いな」

 この程度の推察は、ケルビウスを知ってる人なら誰だって出来るだろうに。

 そう思いながら、私は話を一番最初に戻した。

「それで、グレイなんですが、」

「悪いが、もうしばらく今のままにしておいてもらいたい」

 すかさず、王太子殿下が私の言葉を途中で遮る。さきほど私が殿下の言葉を遮ったので、やり返されたような形となった。行動でも話の内容でも。

「なんですって」

 ミシッ

 言葉に力がこもる。

 声に力が入ってキツく強くなるだけではなく、言葉通り、声に魔力がこもった。声の魔力はそのまま魔力圧となって、王太子殿下に向かう。

「せ、正式な通達は、後になるが、二部から、参加してもらいたい。一部の試合は、グレイアドが、いなくても、どうにか、なるだろう」

 苦しげに声を漏らす王太子殿下。
 周りの部下たちは声を漏らすことさえ出来ずに、無言で呻く。

 考える振りをして、その様子を眺める私。
 考えるも何もないんだよね。王太子殿下の発言ならば、決定事項なんだから。

 それでも、彼らが無言で呻くのを、いい気味だと思いながら黙って眺める私。
 そろそろ良いだろう、みたいな目で見られても、いつまでこれ続くの?、みたいな目を向けられても、黙って眺めていた。

 しばらくして、

「分かりました」

 と告げると同時に魔力圧を引っ込める。

 はぁぁぁぁぁっと揃って息を吐いて吸う音が、静かな室内に聞こえた。

 彼らが呼吸に集中しているところに、私は続けて言い捨てる。

「私が全力で潰しにいっていいってことですね。頑張ります。グレイの分まで」

 さっとお辞儀をして、くるっと身を翻して、退出!

 呼吸に集中していた王太子殿下たちは反応が少し遅れた。

「ちょっと待て」「では失礼します」

 何か言ってるような気がするけど、そんなのは知らない。聞こえない。

「だから待て。まだ話は終わっ」


 バタン!


 扉は閉められた。
 王太子殿下の最後の言葉は扉に遮られ、私にはまったく届かなかった。
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