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8 騎士一族と黒鉄編
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とりあえず、書架で会話をするのは良くないと、私たちは学習エリアに移動して、話を聞くことにした。
書架に移動するとき、フィリアは書架まで付いてきたけど、バルトレット卿には別のことをお願いしていたのだ。
何かというと、目を通して確認して、整理し終わった午後の分の書類の提出。
ここは四階。
たくさんある書類を持って上がった、までは良かった。帰りはこれを持って降りないといけない。
これに関しては、クラヴィスの力を使って転移する、というのも出来なくはない。
そして、書架にあるおもしろそうな本。
本を見て、帰りに書類を第三騎士団にまで持っていって、それで帰るのがベスト。
そう結論づけて、フィリアとバルトレット卿に指示したところで、
「それならお嬢。俺が書類を提出してきますので」
「え? いいの?」
目を輝かせる私に、バルトレット卿は事も無げにこう言ったのだ。
「パシアヌス様に提出して戻ってきます。じっと座って本を見るより、身体を動かす方が楽なので」
「あぁ、そういうこと」
そんな事情で書類を提出しにいったバルトレット卿が、四階まで駆けのぼって帰ってきた、その理由というのが、
「俺、見たんです。エンデバート卿が徘徊してるのを」
という、あり得ない状況。
エンデバート卿は新リテラ王国の騎士団長。
お披露目会に参席するため、新リテラ王国のルキウス殿下たちといっしよに来ていたはず。
ルキウス殿下は帰国されているので、エンデバート卿が一人、グラディアにいる理由はない。
だから、おかしい。あり得ない。
そんなあり得ない光景を目撃したので、バルトレット卿は大慌てで四階まで駆け上がってきたと、いうことだったようだ。
私とフィリアはまたしても、顔を見合わせる。
「エンデバート卿、まだグラディアにいたんだ。暇なの?」
「というか、あの野郎。お嬢の近くをうろつかないでもらいたいわ!」
とりあえず、バルトレット卿の話を聞いてみようということにした私たち。
最初からきちんと話を聞いてくれ、という顔をするバルトレット卿を急かして、状況を説明させた。
バルトレット卿はエンデバート卿を目撃して終わり、ではなく、どうしてエンデバート卿がいるのかについても、聞き込みをして帰ってきたらしい。
新人とはいえさすがは殲滅隊。いろいろなことを仕込まれている。
「使節団の一員としてではなく、個人観光でグラディアに残ったらしいです」
うん? 新リテラ王国の騎士団長って、そんなに暇なの?
私とフィリアは顔を見合わせた。これで何度目だろう。
使節団から個人に切り替わるのもおかしいけど、個人旅行になったらなったで、使節団とは扱いがまったく違ってくるのに。
エンデバート卿も新リテラ王国の他の人たちも、いったい何を考えてるんだか。
「個人観光なのに、なんで王城にいるわけ? 個人なら王城に泊まれないでしょ?」
「だいたい、アイツ、向こうの王太子だかの護衛騎士としてやってきたんでしょうに」
私の疑問の答えも、バルトレット卿はちゃーんと用意していたようで、すかさず返事がくる。
「それが。良い機会だからと、休暇を与えられたみたいで。現在は、ルベル公爵家でお世話になっているようです」
と前置きして、新リテラ王国騎士団の内情も説明してくれた。
エンデバート卿は年中無休で仕事をする人だったようで、おかげで結婚相手が見つからないとか。
だよね。仕事と結婚しているような人だもんね。
エンデバート卿の部下にしても、上司が休みを取らないので自分が休みにくいとか。
だよね。尊敬する上司であればあるほど、上司を差し置いて休みにくいよね。
はぁ。
「なんなのよ、それ。職務怠慢だわ!」
逆だ。逆。働き過ぎ。
「休むのも立派な仕事ですわ、お嬢!」
まぁ、そういう考えもあるか。
「要するに、新リテラ王国の騎士団て、エンデバート卿が長期休暇を取っても、仕事が回るところだったわけか」
「そのために、副団長や副官てのがいるんですわ、お嬢」
まぁ、それはそうだわ。
「さらに問題なのは、一ヶ月もグラディアに滞在することだけじゃありません」
私が納得したところで、バルトレット卿が気になることを口にする。先を促すと、とんでもない情報をぶち込んできた。
「ルベル公爵家の私設騎士団、あそこ所属の騎士として、どうやら闘技会にも出場してくるようなんです」
「「マジで?!」」
私とフィリアの声が揃う。
「なら、叩き潰すだけだわ!」
顔を真っ赤にして興奮気味のフィリアに対して、私は目の前がクラクラしてきた。
「え、ちょっと待って。マズくない?」
「どういうことですか、お嬢」
「だって、グレイが入城禁止になった理由って」
そこまで言って、それ以上、言葉が出なくなる。
「エンデバート卿と鉢合わせると、国家間問題になるからってヤツでしたよね」
「でも、それは使節団の一員だったからでしょう? 今は個人でグラディアにいるだけじゃないですか」
「とにかく、王太子殿下に確認しないと」
急いで本を片付けて、リュネットに挨拶をして魔導図書館を後にして。
やってきたのは、王太子殿下の執務室。
「で。そんな理由でやってきたのか」
約束なし、先触れなしでの突撃訪問にも動じることなく、王太子殿下は私たちを迎え入れてくれたのだった。
書架に移動するとき、フィリアは書架まで付いてきたけど、バルトレット卿には別のことをお願いしていたのだ。
何かというと、目を通して確認して、整理し終わった午後の分の書類の提出。
ここは四階。
たくさんある書類を持って上がった、までは良かった。帰りはこれを持って降りないといけない。
これに関しては、クラヴィスの力を使って転移する、というのも出来なくはない。
そして、書架にあるおもしろそうな本。
本を見て、帰りに書類を第三騎士団にまで持っていって、それで帰るのがベスト。
そう結論づけて、フィリアとバルトレット卿に指示したところで、
「それならお嬢。俺が書類を提出してきますので」
「え? いいの?」
目を輝かせる私に、バルトレット卿は事も無げにこう言ったのだ。
「パシアヌス様に提出して戻ってきます。じっと座って本を見るより、身体を動かす方が楽なので」
「あぁ、そういうこと」
そんな事情で書類を提出しにいったバルトレット卿が、四階まで駆けのぼって帰ってきた、その理由というのが、
「俺、見たんです。エンデバート卿が徘徊してるのを」
という、あり得ない状況。
エンデバート卿は新リテラ王国の騎士団長。
お披露目会に参席するため、新リテラ王国のルキウス殿下たちといっしよに来ていたはず。
ルキウス殿下は帰国されているので、エンデバート卿が一人、グラディアにいる理由はない。
だから、おかしい。あり得ない。
そんなあり得ない光景を目撃したので、バルトレット卿は大慌てで四階まで駆け上がってきたと、いうことだったようだ。
私とフィリアはまたしても、顔を見合わせる。
「エンデバート卿、まだグラディアにいたんだ。暇なの?」
「というか、あの野郎。お嬢の近くをうろつかないでもらいたいわ!」
とりあえず、バルトレット卿の話を聞いてみようということにした私たち。
最初からきちんと話を聞いてくれ、という顔をするバルトレット卿を急かして、状況を説明させた。
バルトレット卿はエンデバート卿を目撃して終わり、ではなく、どうしてエンデバート卿がいるのかについても、聞き込みをして帰ってきたらしい。
新人とはいえさすがは殲滅隊。いろいろなことを仕込まれている。
「使節団の一員としてではなく、個人観光でグラディアに残ったらしいです」
うん? 新リテラ王国の騎士団長って、そんなに暇なの?
私とフィリアは顔を見合わせた。これで何度目だろう。
使節団から個人に切り替わるのもおかしいけど、個人旅行になったらなったで、使節団とは扱いがまったく違ってくるのに。
エンデバート卿も新リテラ王国の他の人たちも、いったい何を考えてるんだか。
「個人観光なのに、なんで王城にいるわけ? 個人なら王城に泊まれないでしょ?」
「だいたい、アイツ、向こうの王太子だかの護衛騎士としてやってきたんでしょうに」
私の疑問の答えも、バルトレット卿はちゃーんと用意していたようで、すかさず返事がくる。
「それが。良い機会だからと、休暇を与えられたみたいで。現在は、ルベル公爵家でお世話になっているようです」
と前置きして、新リテラ王国騎士団の内情も説明してくれた。
エンデバート卿は年中無休で仕事をする人だったようで、おかげで結婚相手が見つからないとか。
だよね。仕事と結婚しているような人だもんね。
エンデバート卿の部下にしても、上司が休みを取らないので自分が休みにくいとか。
だよね。尊敬する上司であればあるほど、上司を差し置いて休みにくいよね。
はぁ。
「なんなのよ、それ。職務怠慢だわ!」
逆だ。逆。働き過ぎ。
「休むのも立派な仕事ですわ、お嬢!」
まぁ、そういう考えもあるか。
「要するに、新リテラ王国の騎士団て、エンデバート卿が長期休暇を取っても、仕事が回るところだったわけか」
「そのために、副団長や副官てのがいるんですわ、お嬢」
まぁ、それはそうだわ。
「さらに問題なのは、一ヶ月もグラディアに滞在することだけじゃありません」
私が納得したところで、バルトレット卿が気になることを口にする。先を促すと、とんでもない情報をぶち込んできた。
「ルベル公爵家の私設騎士団、あそこ所属の騎士として、どうやら闘技会にも出場してくるようなんです」
「「マジで?!」」
私とフィリアの声が揃う。
「なら、叩き潰すだけだわ!」
顔を真っ赤にして興奮気味のフィリアに対して、私は目の前がクラクラしてきた。
「え、ちょっと待って。マズくない?」
「どういうことですか、お嬢」
「だって、グレイが入城禁止になった理由って」
そこまで言って、それ以上、言葉が出なくなる。
「エンデバート卿と鉢合わせると、国家間問題になるからってヤツでしたよね」
「でも、それは使節団の一員だったからでしょう? 今は個人でグラディアにいるだけじゃないですか」
「とにかく、王太子殿下に確認しないと」
急いで本を片付けて、リュネットに挨拶をして魔導図書館を後にして。
やってきたのは、王太子殿下の執務室。
「で。そんな理由でやってきたのか」
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