運命の恋に落ちた最強魔術師、の娘はクズな父親を許さない

SA

文字の大きさ
461 / 545
8 騎士一族と黒鉄編

1-4

しおりを挟む
 王太子殿下の『そんな理由』発言に、私は思わずカッとなる。

 今、王太子殿下は執務の机に座ってのうのうとしていて、私たちはその目の前に立っている状態。

 まぁ、こちらが押し掛けたんだから、ソファーに案内しろだとか、お茶とお菓子を出せだとか、そんなことを言い出すつもりはなかったのに。

「ここの侍従さんはお茶とお菓子も出してくれないんだ、いちおう、これでも魔導公なのに」

 ムカつきついでに、思ってもいない言葉が出てしまった。

 苦笑する王太子殿下に、顔をさっと青くする侍従さん。

「ルベラス魔導公殿が、先触れもなくやってきたものだからな。準備が間に合わなかった」

 しれっと答えている隙に、さささっと席が用意される。

「しかし、行動はともかく。魔導公としての態度は様になってきたな。以前より風格が出ている」

 なにやら、おもしろそうに観察されてるみたいだけれど、ここに来たのは私の態度や風格の話をするためではない。

 王太子殿下の『そんな理由』発言でムカついたせいで、予定になかったことを喋って脇にそれてしまった。
 それを修正するべく、私は、いきなり本題に入る。

「グレイの入城禁止。もう、解除でいいんですよね?」

 私の発言で、王太子殿下の表情が凍りついたように止まった。

 今の今まで、私を見て、おもしろそうにしていたその顔は同じままなのに、別な表情に見える。

「グレイは闘技会に出場するんですよ?」

 私は畳みかけるように発言を続けた。

「入城禁止のままだと、出場できないじゃないですか!」

「他に気になることはないのか? 筆頭殿のこととか、五強のこととか、仮主たちのこととか」

 私の問いかけにはいっさい答えず、王太子殿下はあからさまに話題を変える。
 話題は変えても表情は止まったまま変わることはなく、私の胸の中に嫌な予感ばかりがどんどん大きくなっていった。

「そういう話は殿下が担当ですよね。私の担当、デルティ殿下なので。担当外のことには興味ありません」

 私は嫌な予感をきれいさっぱりとさせるように、王太子殿下の質問もばっさりと切り捨てた。

 私の拒絶するような切り捨て方に、怯むかと思いきや、王太子殿下もなかなかしぶとい。

「君も察しているとおり、デルティは、君のおかげで躍進的な成長を見せている」

「物は言い様ですね」

「なので、デルティの心配はしばらく必要ないだろう」

「定期的に引き締める必要はありますよね」

 今度はデルティ殿下の話題にすり替えて、隙を見てまたもや五強の話題を持ち出してくる。

「そこで、しばらくは五強の方の監視を、」

「それ、ケルビウスがやってますよね」

 すかさず、私は口を挟んだ。
 最後まで言わせてたまるものか、という意思を前面に出して。

 力強い拒絶に、今度こそ殿下の言葉が止まる。

「…………知ってたのか」

 そして長々と深いため息。

 ため息をつきたいのは私の方だわ。
 散々、グレイの話題をごまかしてはっきりさせないんだから。

 こうなったら、グレイの入城禁止を解除してもらうまで、絶対に食い下がってやる。

 私は決意を新たに王太子殿下をキッも睨んで、私の推察を語って聞かせた。

「あのケルビウスが食いつかないはずありませんよね。なんでも知りたがって、なんでも調べたがるケルビウスが。
 五強すべてが活動してるっていうレアな状況をそのままにしておくなんて、まず、あり得ませんよね」

「鋭いな」

 この程度の推察は、ケルビウスを知ってる人なら誰だって出来るだろうに。

 そう思いながら、私は話を一番最初に戻した。

「それで、グレイなんですが、」

「悪いが、もうしばらく今のままにしておいてもらいたい」

 すかさず、王太子殿下が私の言葉を途中で遮る。さきほど私が殿下の言葉を遮ったので、やり返されたような形となった。行動でも話の内容でも。

「なんですって」

 ミシッ

 言葉に力がこもる。

 声に力が入ってキツく強くなるだけではなく、言葉通り、声に魔力がこもった。声の魔力はそのまま魔力圧となって、王太子殿下に向かう。

「せ、正式な通達は、後になるが、二部から、参加してもらいたい。一部の試合は、グレイアドが、いなくても、どうにか、なるだろう」

 苦しげに声を漏らす王太子殿下。
 周りの部下たちは声を漏らすことさえ出来ずに、無言で呻く。

 考える振りをして、その様子を眺める私。
 考えるも何もないんだよね。王太子殿下の発言ならば、決定事項なんだから。

 それでも、彼らが無言で呻くのを、いい気味だと思いながら黙って眺める私。
 そろそろ良いだろう、みたいな目で見られても、いつまでこれ続くの?、みたいな目を向けられても、黙って眺めていた。

 しばらくして、

「分かりました」

 と告げると同時に魔力圧を引っ込める。

 はぁぁぁぁぁっと揃って息を吐いて吸う音が、静かな室内に聞こえた。

 彼らが呼吸に集中しているところに、私は続けて言い捨てる。

「私が全力で潰しにいっていいってことですね。頑張ります。グレイの分まで」

 さっとお辞儀をして、くるっと身を翻して、退出!

 呼吸に集中していた王太子殿下たちは反応が少し遅れた。

「ちょっと待て」「では失礼します」

 何か言ってるような気がするけど、そんなのは知らない。聞こえない。

「だから待て。まだ話は終わっ」


 バタン!


 扉は閉められた。
 王太子殿下の最後の言葉は扉に遮られ、私にはまったく届かなかった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

果たされなかった約束

家紋武範
恋愛
 子爵家の次男と伯爵の妾の娘の恋。貴族の血筋と言えども不遇な二人は将来を誓い合う。  しかし、ヒロインの妹は伯爵の正妻の子であり、伯爵のご令嗣さま。その妹は優しき主人公に密かに心奪われており、結婚したいと思っていた。  このままでは結婚させられてしまうと主人公はヒロインに他領に逃げようと言うのだが、ヒロインは妹を裏切れないから妹と結婚して欲しいと身を引く。  怒った主人公は、この姉妹に復讐を誓うのであった。 ※サディスティックな内容が含まれます。苦手なかたはご注意ください。

【完結】二度目の恋はもう諦めたくない。

たろ
恋愛
セレンは15歳の時に16歳のスティーブ・ロセスと結婚した。いわゆる政略的な結婚で、幼馴染でいつも喧嘩ばかりの二人は歩み寄りもなく一年で離縁した。 その一年間をなかったものにするため、お互い全く別のところへ移り住んだ。 スティーブはアルク国に留学してしまった。 セレンは国の文官の試験を受けて働くことになった。配属は何故か騎士団の事務員。 本人は全く気がついていないが騎士団員の間では 『可愛い子兎』と呼ばれ、何かと理由をつけては事務室にみんな足を運ぶこととなる。 そんな騎士団に入隊してきたのが、スティーブ。 お互い結婚していたことはなかったことにしようと、話すこともなく目も合わせないで過ごした。 本当はお互い好き合っているのに素直になれない二人。 そして、少しずつお互いの誤解が解けてもう一度…… 始めの数話は幼い頃の出会い。 そして結婚1年間の話。 再会と続きます。

悪役だから仕方がないなんて言わせない!

音無砂月
恋愛
マリア・フォン・オレスト オレスト国の第一王女として生まれた。 王女として政略結婚の為嫁いだのは隣国、シスタミナ帝国 政略結婚でも多少の期待をして嫁いだが夫には既に思い合う人が居た。 見下され、邪険にされ続けるマリアの運命は・・・・・。

〖完結〗あんなに旦那様に愛されたかったはずなのに…

藍川みいな
恋愛
借金を肩代わりする事を条件に、スチュワート・デブリン侯爵と契約結婚をしたマリアンヌだったが、契約結婚を受け入れた本当の理由はスチュワートを愛していたからだった。 契約結婚の最後の日、スチュワートに「俺には愛する人がいる。」と告げられ、ショックを受ける。 そして契約期間が終わり、離婚するが…数ヶ月後、何故かスチュワートはマリアンヌを愛してるからやり直したいと言ってきた。 設定はゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全9話で完結になります。

攻略対象者の婚約者を持つ姉の代わりに、エンディングを見てきました

犬野きらり
恋愛
攻略対象者の婚約者を持つ姉の代わりに、エンディングを見てきました… というタイトルそのままの話です。 妹視点では、乙女ゲームも異世界転生も関係ありません。 特に私(主人公)は出しゃ張たりしません。 私をアピールするわけでもありません。 ジャンルは恋愛ですが、主人公は恋愛していません、ご注意下さい

四の五の言わず離婚届にサインをしてくれません?

白雲八鈴
恋愛
アルディーラ公爵夫人であるミレーネは、他の人からみれば羨ましいと思える立場にいた。 王妹の母譲りの美人の顔立ち、公爵夫人として注目を集める立場、そして領地の運営は革命と言えるほど領地に潤いを与えていた。 だが、そんなミレーネの心の中にあるのは『早く離婚したい』だった。 順風満帆と言えるミレーネは何が不満なのか。その原因は何か。何故離婚できないのか。 そこから始まる物語である。

《完結》金貨5000枚で売られた王太子妃

ぜらちん黒糖
恋愛
​「愛している。必ず迎えに行くから待っていてくれ」 ​甘い言葉を信じて、隣国へ「人質」となった王太子妃イザベラ。 旅立ちの前の晩、二人は愛し合い、イザベラのお腹には新しい命が宿った。すぐに夫に知らせた イザベラだったが、夫から届いた返信は、信じられない内容だった。 「それは本当に私の子供なのか?」

(完結)お姉様、私を捨てるの?

青空一夏
恋愛
大好きなお姉様の為に貴族学園に行かず奉公に出た私。なのに、お姉様は・・・・・・ 中世ヨーロッパ風の異世界ですがここは貴族学園の上に上級学園があり、そこに行かなければ女官や文官になれない世界です。現代で言うところの大学のようなもので、文官や女官は○○省で働くキャリア官僚のようなものと考えてください。日本的な価値観も混ざった異世界の姉妹のお話。番の話も混じったショートショート。※獣人の貴族もいますがどちらかというと人間より下に見られている世界観です。

処理中です...