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第1部 第2章 供物問題解決編
28話 テネルとの再会
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コルタル港を出て竜の山の方に歩いていると、草むらから黄色いスライムの集団が飛び出してきた。
テネルが率いている集団だ。
「テネル!?いるの!?」
『は~い、シーラちゃん。お久しぶりです~』
スライム達の奥で、片目の取れた草スライムが飛び跳ねている。
「片目、取れちゃったの!?」
『はい~。まぁ草ですからね~。でも不便じゃなかったですよ~』
「ちょっと待ってて!」
革袋からテネル用のぬいぐるみを取り出した。
手のひらサイズで薄い黄色で丸くて、目に見立てた小さな黒いボタンが2つ
ついている。
「これに移れる?」
『ど、どうなんでしょう~?やったことがないので~』
さすがのテネルも戸惑っていた。
だけど、それは私も同じ。都合良くタマシイの移動なんてできるのだろうか。
すると、周りのスライム達がピーピー鳴きながら飛び跳ね出した。
『え?移れって?う~ん、そうですね~』
「他のスライム達は移ってほしいんだね」
『そうみたいなんです~。でも失敗したら……』
テネルの心配そうな声を聞いて、スライムたちが鳴くのをやめた。
何かを感じ取ったらしい。
『たぶん、今みたいに話せなくなっちゃいますね』
「や、やっぱり?」
『はい。推測ですけど。今の状態が奇跡なので~』
テネルは少しの間まごついていたが、ピタッと動きを止めると飛び跳ねた。
『え~いっ!意地でやります!失敗したらそれまで!
行きますよ~!!』
テネルが叫ぶと、草スライムから手のひらサイズの光の玉が飛び出した。
フヨフヨと頼りなく浮かんでいて、そのうちロウソクの火のようにフッと消えてしまいそうだ。
「テネル!こっちこっち!」
慌ててぬいぐるみを差し出すと、フヨフヨと光の玉が吸い込まれてゆく。
私もスライムたちも固唾を呑んで見守っていると、ぬいぐるみがポンッと1回飛び跳ねた。
『ど、どうです?声、聞こえてます?』
「うんっ!バッチリ聞こえてるよ!」
『わ~い!大成功~!シーラちゃん、本当にありがとう~!』
「やったぁ!よかったね、テネル!」
私達の声を聞いたスライムたちが集まって、足や腕に登ってくる。
相変わらずベタベタしているが、喜んでくれているのはじゅうぶん伝わった。
「わぁっ!?ベタベタ!?」
『アハハッ、ワタシたちはスライムなので、それは我慢してください~。
みんな嬉しいんですよ~』
ようやく、スライムたちの歓喜のベタベタ攻撃が終わる。
『それで、今からラディウスさんの所に行くんですよね?』
「うん。リンダさんたちの所に寄ってからね」
すると、スライムたちがまた騒ぎ出した。
こうなる時は何かを訴えているみたいだ。
「テネル、この子たち何て言ってるの?」
『ハハハ、シーラちゃんについて行きたいんだそうです~』
「私は構わないけど。リンダさんたちがびっくりしちゃうよ?」
『この子たちは外で隠れてるように言いますよ~』
テネルもついてくる気満々だ。
断っても隠れてついてくると思う。
「じゃあ、ビックリさせないでね?」
『もちろんですよ~。さ、行きましょ行きましょ~』
テネルに続いて、スライムたちもピョンピョン飛び跳ねながら私の背中を追いかけてくる。
足取りが軽くなった気がした。
テネルが率いている集団だ。
「テネル!?いるの!?」
『は~い、シーラちゃん。お久しぶりです~』
スライム達の奥で、片目の取れた草スライムが飛び跳ねている。
「片目、取れちゃったの!?」
『はい~。まぁ草ですからね~。でも不便じゃなかったですよ~』
「ちょっと待ってて!」
革袋からテネル用のぬいぐるみを取り出した。
手のひらサイズで薄い黄色で丸くて、目に見立てた小さな黒いボタンが2つ
ついている。
「これに移れる?」
『ど、どうなんでしょう~?やったことがないので~』
さすがのテネルも戸惑っていた。
だけど、それは私も同じ。都合良くタマシイの移動なんてできるのだろうか。
すると、周りのスライム達がピーピー鳴きながら飛び跳ね出した。
『え?移れって?う~ん、そうですね~』
「他のスライム達は移ってほしいんだね」
『そうみたいなんです~。でも失敗したら……』
テネルの心配そうな声を聞いて、スライムたちが鳴くのをやめた。
何かを感じ取ったらしい。
『たぶん、今みたいに話せなくなっちゃいますね』
「や、やっぱり?」
『はい。推測ですけど。今の状態が奇跡なので~』
テネルは少しの間まごついていたが、ピタッと動きを止めると飛び跳ねた。
『え~いっ!意地でやります!失敗したらそれまで!
行きますよ~!!』
テネルが叫ぶと、草スライムから手のひらサイズの光の玉が飛び出した。
フヨフヨと頼りなく浮かんでいて、そのうちロウソクの火のようにフッと消えてしまいそうだ。
「テネル!こっちこっち!」
慌ててぬいぐるみを差し出すと、フヨフヨと光の玉が吸い込まれてゆく。
私もスライムたちも固唾を呑んで見守っていると、ぬいぐるみがポンッと1回飛び跳ねた。
『ど、どうです?声、聞こえてます?』
「うんっ!バッチリ聞こえてるよ!」
『わ~い!大成功~!シーラちゃん、本当にありがとう~!』
「やったぁ!よかったね、テネル!」
私達の声を聞いたスライムたちが集まって、足や腕に登ってくる。
相変わらずベタベタしているが、喜んでくれているのはじゅうぶん伝わった。
「わぁっ!?ベタベタ!?」
『アハハッ、ワタシたちはスライムなので、それは我慢してください~。
みんな嬉しいんですよ~』
ようやく、スライムたちの歓喜のベタベタ攻撃が終わる。
『それで、今からラディウスさんの所に行くんですよね?』
「うん。リンダさんたちの所に寄ってからね」
すると、スライムたちがまた騒ぎ出した。
こうなる時は何かを訴えているみたいだ。
「テネル、この子たち何て言ってるの?」
『ハハハ、シーラちゃんについて行きたいんだそうです~』
「私は構わないけど。リンダさんたちがびっくりしちゃうよ?」
『この子たちは外で隠れてるように言いますよ~』
テネルもついてくる気満々だ。
断っても隠れてついてくると思う。
「じゃあ、ビックリさせないでね?」
『もちろんですよ~。さ、行きましょ行きましょ~』
テネルに続いて、スライムたちもピョンピョン飛び跳ねながら私の背中を追いかけてくる。
足取りが軽くなった気がした。
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