30 / 48
第1部 第2章 供物問題解決編
29話 ラディウスとの再会
しおりを挟む
しばらく歩いてリンダさんたちの宿屋に辿り着く。
幸い、外にジェイドさんが出ていなかったので、宿屋の影にスライムたちを集めた。
「じゃあ、ここで待っててね」
『は~い。大人しくしてます~』
テネルたちに念押しした後、宿屋のドアを開けた。
「こ、こんにちは」
「こんにちは――あら、シーラちゃん!久しぶりねー。元気だった?」
受付にいる茶髪の女性――リンダさんが笑顔で出迎えてくれる。
「はい。リンダさんも元気そうでよかったです。
それで、ジェイドさんは?」
「夫なら、奥で汗を流してるわ。さっきまで薪割りしてくれてたから。
あの人、力仕事好きなのよ」
「そうなんですね」
「あ、今日はお客さんは居ないから、空いてるベッドに座って待っててちょうだい」
「じゃあ、お言葉に甘えて……」
綺麗に整えられたベッドに座るのは気が引けたけど、
正直、歩き通して疲れていたので座れるのは嬉しかった。
やがて、タオルで髪を拭きながら、ジェイドさんが奥の部屋から顔を覗かせる。
「やあ、シーラちゃん。元気そうだね」
「ジェイドさん、こんにちは。お変わりなくて何よりです」
「ははっ。かしこまって言われると変な感じがするな。
ドラゴンの所へ行くんだろう?着替えてくるから、ちょっと待っててくれ」
ワイバーンの巣でもある山に行くので、ジェイドさんは重そうな鉄の鎧に背中に大剣というフル装備だ。
「じゃあ、行こうか」
「はい!よろしくお願いします!」
「いってらっしゃ~い」
リンダさんに見送られて。宿屋を後にした。
山の入口に辿り着くと、目の前に白い壁があった。
もちろんそれは壁なんかではなく、少し動いたと同時に、ズシンと地響きがする。
竜本体のラディウスのお腹だったのだ。
『遅い!やっと来たか!箱入り娘!』
「ラディウス!?……って、いきなり箱入り娘はひどいよ!
この2か月頑張って勉強したのに!」
『はははっ!俺から見れば、まだ箱入り娘なんだよ!』
ラディウスが入口付近にいたことにもビックリしたけど、再会直後に口喧嘩するなんて思ってなかった。
だけど本気ではないことはわかるので、私も軽く返しておいた。
ジェイドさんは何とも言えない表情で私達たちを見比べている。
以前のように完全に警戒はしていないので、少し安心した。
『ほらよ、鱗持ってけ。ああ、鱗は定期的に脱皮するから痛くねぇよ』
ラディウスは鋭い爪で器用に鱗を1枚剥がすと、私に差し出す。
ザラザラしていて、少し重たい。でも陽の光が反射していてとても綺麗だ。
「ありがとう!ラディウス!」
「でも、これで必ずしも交渉が上手くいくとは言えない。
それでドラゴン、もし失敗したらどうしたらいい?」
『失敗させなきゃいいんだよ。どうしても渋るんなら、俺直々に町破壊してやるって言っとけ』
「脅しじゃん……」
呆れてツッコむと、隣でジェイドさんが真顔で話を続ける。
「いや、作戦としては有効だ。ドラゴンの恐ろしさはみんな知っているからな。
それに新しい鱗を見て「本当に復活した」とは思ってくれるだろう」
『まぁ、最終手段だ、最終手段。俺も豪華な物要求するわけじゃねぇ。
肉と酒。以上』
「それだけでいいのか?」
『前にも言っただろうが。俺は静かに暮らしたいの!』
ラディウスが叫ぶように言ったので、木の葉がザワザワと音を立てて揺れた。
ジェイドさんは自分を落ち着かせるように息をついてから、口を開く。
「わ、わかった。だが、俺たちじゃどうにもならないこともあるからな。
その時は諦めろよ」
『その時はな。まあ、何かしら対応はしてくれるだろ。
町を壊されたくねぇだろうし』
「本当に町を壊さないでね。大丈夫よね?」
『町の奴ら次第だ。ほら、立ち止まってる暇なんてねぇだろ』
ラディウスから急かすように言われて、私達は山を後にした。
幸い、外にジェイドさんが出ていなかったので、宿屋の影にスライムたちを集めた。
「じゃあ、ここで待っててね」
『は~い。大人しくしてます~』
テネルたちに念押しした後、宿屋のドアを開けた。
「こ、こんにちは」
「こんにちは――あら、シーラちゃん!久しぶりねー。元気だった?」
受付にいる茶髪の女性――リンダさんが笑顔で出迎えてくれる。
「はい。リンダさんも元気そうでよかったです。
それで、ジェイドさんは?」
「夫なら、奥で汗を流してるわ。さっきまで薪割りしてくれてたから。
あの人、力仕事好きなのよ」
「そうなんですね」
「あ、今日はお客さんは居ないから、空いてるベッドに座って待っててちょうだい」
「じゃあ、お言葉に甘えて……」
綺麗に整えられたベッドに座るのは気が引けたけど、
正直、歩き通して疲れていたので座れるのは嬉しかった。
やがて、タオルで髪を拭きながら、ジェイドさんが奥の部屋から顔を覗かせる。
「やあ、シーラちゃん。元気そうだね」
「ジェイドさん、こんにちは。お変わりなくて何よりです」
「ははっ。かしこまって言われると変な感じがするな。
ドラゴンの所へ行くんだろう?着替えてくるから、ちょっと待っててくれ」
ワイバーンの巣でもある山に行くので、ジェイドさんは重そうな鉄の鎧に背中に大剣というフル装備だ。
「じゃあ、行こうか」
「はい!よろしくお願いします!」
「いってらっしゃ~い」
リンダさんに見送られて。宿屋を後にした。
山の入口に辿り着くと、目の前に白い壁があった。
もちろんそれは壁なんかではなく、少し動いたと同時に、ズシンと地響きがする。
竜本体のラディウスのお腹だったのだ。
『遅い!やっと来たか!箱入り娘!』
「ラディウス!?……って、いきなり箱入り娘はひどいよ!
この2か月頑張って勉強したのに!」
『はははっ!俺から見れば、まだ箱入り娘なんだよ!』
ラディウスが入口付近にいたことにもビックリしたけど、再会直後に口喧嘩するなんて思ってなかった。
だけど本気ではないことはわかるので、私も軽く返しておいた。
ジェイドさんは何とも言えない表情で私達たちを見比べている。
以前のように完全に警戒はしていないので、少し安心した。
『ほらよ、鱗持ってけ。ああ、鱗は定期的に脱皮するから痛くねぇよ』
ラディウスは鋭い爪で器用に鱗を1枚剥がすと、私に差し出す。
ザラザラしていて、少し重たい。でも陽の光が反射していてとても綺麗だ。
「ありがとう!ラディウス!」
「でも、これで必ずしも交渉が上手くいくとは言えない。
それでドラゴン、もし失敗したらどうしたらいい?」
『失敗させなきゃいいんだよ。どうしても渋るんなら、俺直々に町破壊してやるって言っとけ』
「脅しじゃん……」
呆れてツッコむと、隣でジェイドさんが真顔で話を続ける。
「いや、作戦としては有効だ。ドラゴンの恐ろしさはみんな知っているからな。
それに新しい鱗を見て「本当に復活した」とは思ってくれるだろう」
『まぁ、最終手段だ、最終手段。俺も豪華な物要求するわけじゃねぇ。
肉と酒。以上』
「それだけでいいのか?」
『前にも言っただろうが。俺は静かに暮らしたいの!』
ラディウスが叫ぶように言ったので、木の葉がザワザワと音を立てて揺れた。
ジェイドさんは自分を落ち着かせるように息をついてから、口を開く。
「わ、わかった。だが、俺たちじゃどうにもならないこともあるからな。
その時は諦めろよ」
『その時はな。まあ、何かしら対応はしてくれるだろ。
町を壊されたくねぇだろうし』
「本当に町を壊さないでね。大丈夫よね?」
『町の奴ら次第だ。ほら、立ち止まってる暇なんてねぇだろ』
ラディウスから急かすように言われて、私達は山を後にした。
14
あなたにおすすめの小説
スキルが農業と豊穣だったので追放されました~辺境伯令嬢はおひとり様を満喫しています~
白雪の雫
ファンタジー
「アールマティ、当主の名において穀潰しのお前を追放する!」
マッスル王国のストロング辺境伯家は【軍神】【武神】【戦神】【剣聖】【剣豪】といった戦闘に関するスキルを神より授かるからなのか、代々優れた軍人・武人を輩出してきた家柄だ。
そんな家に産まれたからなのか、ストロング家の者は【力こそ正義】と言わんばかりに見事なまでに脳筋思考の持ち主だった。
だが、この世には例外というものがある。
ストロング家の次女であるアールマティだ。
実はアールマティ、日本人として生きていた前世の記憶を持っているのだが、その事を話せば病院に送られてしまうという恐怖があるからなのか誰にも打ち明けていない。
そんなアールマティが授かったスキルは【農業】と【豊穣】
戦いに役に立たないスキルという事で、アールマティは父からストロング家追放を宣告されたのだ。
「仰せのままに」
父の言葉に頭を下げた後、屋敷を出て行こうとしているアールマティを母と兄弟姉妹、そして家令と使用人達までもが嘲笑いながら罵っている。
「食糧と食料って人間の生命活動に置いて一番大事なことなのに・・・」
脳筋に何を言っても無駄だと子供の頃から悟っていたアールマティは他国へと亡命する。
アールマティが森の奥でおひとり様を満喫している頃
ストロング領は大飢饉となっていた。
農業系のゲームをやっていた時に思い付いた話です。
主人公のスキルはゲームがベースになっているので、作物が実るのに時間を要しないし、追放された後は現代的な暮らしをしているという実にご都合主義です。
短い話という理由で色々深く考えた話ではないからツッコミどころ満載です。
【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。
役立たずと追放された聖女は、第二の人生で薬師として静かに輝く
腐ったバナナ
ファンタジー
「お前は役立たずだ」
――そう言われ、聖女カリナは宮廷から追放された。
癒やしの力は弱く、誰からも冷遇され続けた日々。
居場所を失った彼女は、静かな田舎の村へ向かう。
しかしそこで出会ったのは、病に苦しむ人々、薬草を必要とする生活、そして彼女をまっすぐ信じてくれる村人たちだった。
小さな治療を重ねるうちに、カリナは“ただの役立たず”ではなく「薬師」としての価値を見いだしていく。
転生少女と黒猫メイスのぶらり異世界旅
うみの渚
ファンタジー
ある日、目が覚めたら異世界に転生していた主人公。
裏庭で偶然出会った黒猫に魔法を教わりながら鍛錬を重ねていく。
しかし、その平穏な時間はある日を境に一変する。
これは異世界に転生した十歳の少女と黒猫メイスの冒険譚である。
よくある異世界転生ものです。
*恋愛要素はかなり薄いです。
描写は抑えていますが戦闘シーンがありますので、Rー15にしてあります。
第一章・第二章・第三章完結しました。
お気に入り登録といいねとエールありがとうございます。
執筆の励みになります。
異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!
明衣令央
ファンタジー
糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。
一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。
だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。
そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。
この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。
2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。
【完結】婚約者と仕事を失いましたが、すべて隣国でバージョンアップするようです。
鋼雅 暁
ファンタジー
聖女として働いていたアリサ。ある日突然、王子から婚約破棄を告げられる。
さらに、偽聖女と決めつけられる始末。
しかし、これ幸いと王都を出たアリサは辺境の地でのんびり暮らすことに。しかしアリサは自覚のない「魔力の塊」であったらしく、それに気付かずアリサを放り出した王国は傾き、アリサの魔力に気付いた隣国は皇太子を派遣し……捨てる国あれば拾う国あり!?
他サイトにも重複掲載中です。
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
余命半年のはずが?異世界生活始めます
ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明…
不運が重なり、途方に暮れていると…
確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる