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10 王様に呼ばれる
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「陛下から招集を受けた」
アッシュフォード男爵が青い顔をしてアダムスに言った。
「一体どうして陛下に?父上が何か受勲されるんですか?」
「バカがっ!アダムス、お前のことについてだ!!ああっ」
男爵は頭を抱えて床に座り込んだ。
すぐにアダムスと男爵は正装に着替え、馬車を走らせ王宮へと向かった。男爵は難しい顔で押し黙ったまま一言もしゃべらなかった。
重い空気のまま王宮の門をくぐり、馬車広場に誘導されると、アダムスたちは馬車を降りて長い長い王宮の階段を登った。
両脇に立つ槍を持った衛兵たちが微動だにしないままふたりをじっと見ていた。何だかアダムスは自分が非難されているような気がした。
大広間に到着しアダムスはぎょっとした。左右に分かれて名のある貴族たちがずらりと並び自分たちを見ていた。
伯爵、侯爵、公爵、そして太公まで。高位貴族たちに見つめられ、ものすごい圧を感じた。父親をちらと見ると顔からは血の気が失せ小刻みに震えていた。
「アッシュフォード男爵とアダムス様はこちらへ」
アダムスたちは貴族たちに一礼した後、侍従に誘導され大広間の真ん中に立った。まるで法廷のようだった。アダムスは胃がぎゅっと縮まる気がした。
「陛下と王妃様がいらっしゃいます」
王族専用の入り口からルミナーレ王陛下と王妃様が入場した。アダムスと男爵は陛下と王妃様に礼をした。陛下と王妃様は冷たい目でふたりを見つめたままうなずきもしなかった。
「オースト侯爵およびエバンジェリン様がご到着されました」
エバンジェリンも呼ばれてたのか。
気まずいけど仕方がない。
アダムスは覚悟を決めて彼らをじっと待った。
革靴の音と衣擦れの音が少しずつ近づいてきた。アダムスと男爵の横をオースト侯爵とエバンジェリンが通り過ぎていった。
オースト侯爵は背筋をすっと伸ばし堂々と歩みを進めとても立派に見えた。エバンジェリンと同じ艶のある漆黒の髪だが目の色は違って濃い青のラピスラズリの瞳だった。
エバンジェリンは上品な桃色の絹にふんだんに銀糸の刺繍をちりばめた王女のようなドレスを身に纏っていた。伏し目がちなアクアマリンの瞳が静かにきらめきなぜか神秘的に見えた。
そのあとアダムスは信じられない光景を目にした。エバンジェリン達が通り過ぎるに従い、両側にいた高位貴族たちが順に波が立つように次々と胸に手を当て深々と礼を取った。
オースト侯爵より格上の公爵、太公までも。
そして王陛下たちの前までエバンジェリンたちが到達すると、なんと王陛下と王妃様が丁重な礼をした。
どうして王族が格下の侯爵に礼を!??
アダムスはわけがわからなかった。
その後も驚きの事態がアダムスを待っていた。オースト侯爵とエバンジェリンは高位貴族の列席に加わることなく、陛下達がいる壇上に向かって階段を登って行った。
ありえない。
王族でもないのに。
アダムスはエバンジェリン達が叱責されるのではないかと心配した。だけどそんなことは起こらなかった。
陛下たちと同列に用意された豪華な椅子にオースト侯爵とエバンジェリンは静かに座った。
陛下たちと同列の席。
これが意味するのは、侯爵家でありながら王族と同じ地位であるという信じられない事実だった。いや、それだけではない。さっき陛下たちはエバンジェリンたちに臣下の礼をとった。
まさか。
アダムスは息を呑んだ。
『決して粗相のないように。エバンンジェリン様は国の宝だ。全力でお幸せにして差し上げるのだぞ』
婚約が決まった後、父親が何度もアダムスにかけた言葉を今更のように思い出していた。男爵はアダムスとは違い全く動揺することもなく身を硬くし床を見つめていた。
アダムスは歴史の授業が嫌いでまじめに受けず木登りばかりしていたため、王国史をほとんど知らなかった。
張り詰めた空気の中、アダムスだけがオースト家の存在の意味を知らず取り残されたままだった。
アッシュフォード男爵が青い顔をしてアダムスに言った。
「一体どうして陛下に?父上が何か受勲されるんですか?」
「バカがっ!アダムス、お前のことについてだ!!ああっ」
男爵は頭を抱えて床に座り込んだ。
すぐにアダムスと男爵は正装に着替え、馬車を走らせ王宮へと向かった。男爵は難しい顔で押し黙ったまま一言もしゃべらなかった。
重い空気のまま王宮の門をくぐり、馬車広場に誘導されると、アダムスたちは馬車を降りて長い長い王宮の階段を登った。
両脇に立つ槍を持った衛兵たちが微動だにしないままふたりをじっと見ていた。何だかアダムスは自分が非難されているような気がした。
大広間に到着しアダムスはぎょっとした。左右に分かれて名のある貴族たちがずらりと並び自分たちを見ていた。
伯爵、侯爵、公爵、そして太公まで。高位貴族たちに見つめられ、ものすごい圧を感じた。父親をちらと見ると顔からは血の気が失せ小刻みに震えていた。
「アッシュフォード男爵とアダムス様はこちらへ」
アダムスたちは貴族たちに一礼した後、侍従に誘導され大広間の真ん中に立った。まるで法廷のようだった。アダムスは胃がぎゅっと縮まる気がした。
「陛下と王妃様がいらっしゃいます」
王族専用の入り口からルミナーレ王陛下と王妃様が入場した。アダムスと男爵は陛下と王妃様に礼をした。陛下と王妃様は冷たい目でふたりを見つめたままうなずきもしなかった。
「オースト侯爵およびエバンジェリン様がご到着されました」
エバンジェリンも呼ばれてたのか。
気まずいけど仕方がない。
アダムスは覚悟を決めて彼らをじっと待った。
革靴の音と衣擦れの音が少しずつ近づいてきた。アダムスと男爵の横をオースト侯爵とエバンジェリンが通り過ぎていった。
オースト侯爵は背筋をすっと伸ばし堂々と歩みを進めとても立派に見えた。エバンジェリンと同じ艶のある漆黒の髪だが目の色は違って濃い青のラピスラズリの瞳だった。
エバンジェリンは上品な桃色の絹にふんだんに銀糸の刺繍をちりばめた王女のようなドレスを身に纏っていた。伏し目がちなアクアマリンの瞳が静かにきらめきなぜか神秘的に見えた。
そのあとアダムスは信じられない光景を目にした。エバンジェリン達が通り過ぎるに従い、両側にいた高位貴族たちが順に波が立つように次々と胸に手を当て深々と礼を取った。
オースト侯爵より格上の公爵、太公までも。
そして王陛下たちの前までエバンジェリンたちが到達すると、なんと王陛下と王妃様が丁重な礼をした。
どうして王族が格下の侯爵に礼を!??
アダムスはわけがわからなかった。
その後も驚きの事態がアダムスを待っていた。オースト侯爵とエバンジェリンは高位貴族の列席に加わることなく、陛下達がいる壇上に向かって階段を登って行った。
ありえない。
王族でもないのに。
アダムスはエバンジェリン達が叱責されるのではないかと心配した。だけどそんなことは起こらなかった。
陛下たちと同列に用意された豪華な椅子にオースト侯爵とエバンジェリンは静かに座った。
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これが意味するのは、侯爵家でありながら王族と同じ地位であるという信じられない事実だった。いや、それだけではない。さっき陛下たちはエバンジェリンたちに臣下の礼をとった。
まさか。
アダムスは息を呑んだ。
『決して粗相のないように。エバンンジェリン様は国の宝だ。全力でお幸せにして差し上げるのだぞ』
婚約が決まった後、父親が何度もアダムスにかけた言葉を今更のように思い出していた。男爵はアダムスとは違い全く動揺することもなく身を硬くし床を見つめていた。
アダムスは歴史の授業が嫌いでまじめに受けず木登りばかりしていたため、王国史をほとんど知らなかった。
張り詰めた空気の中、アダムスだけがオースト家の存在の意味を知らず取り残されたままだった。
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