婚約破棄の代償

nanahi

文字の大きさ
11 / 32

11 調査結果

しおりを挟む
異常な状況に困惑しているアダムスの前にあのとき調査に訪れた男が姿を現した。男は陛下にうやうやしく礼をした。

「これより、メアリ・キャシーに関する調査結果を御前に申し上げます」

え?
メアリの調査結果??
一体どういうことなんだ?

アダムスは痛くもない腹を探られるような嫌な気分になった。陛下が男を促すように静かにうなずいた。男は書簡を広げると、ろうろうと調査結果を読み上げ始めた。

- - - - - - - - - - 

件名:平民メアリ・キャシーに関する調査報告

王国調査局より王侯貴族会議へ

○基本情報
調査対象:メアリ・キャシー 
年齢:三十五歳
婚姻歴:三度の離婚歴あり
子女:一女を有す

- - - - - - - - - - 

ここまで聞いてアダムスは耳を疑った。

メアリの年齢が35歳!?
メアリは僕に18歳だと言っていた。
離婚歴どころか、子供までいるなんて絶対に嘘に決まってる!
この報告書は間違っている!

アダムスは、か細い手を握りしめ視線を落としているメアリを思い浮かべた。

可哀想に、メアリ。
国の調査というのは事実を捻じ曲げてひどいもんだな。
僕だけが本当のメアリを知ってるんだ。

アダムスは心の中でメアリを励ました。男は続けて読み上げた。

- - - - - - - - - - 

○生活態度
食欲旺盛にして常軌を逸す。
家の食糧庫を空にするほどの大喰らい。
言動に虚実多く、虚言癖ありと周囲に認識される。
これらの性質により家族・親族から疎まれ、三度の離婚に至る。

- - - - - - - - - - 

「なんて失礼な!」

アダムスは思わず声を上げた。

あんなか弱い女性を大喰らいと呼ぶなんて!
これは国の横暴だ!

アダムスはまた今にも泣きそうな顔をしているメアリを思い浮かべた。

メアリというのはこんなにいたいけな女性なんだ。
男が守ってやらないといけないんだ。
冷血なエバンジェリンとは大違いなんだ。

アダムスはこのときまだメアリを信じていた。男は続けてさらなる驚愕の事実を読み上げて行った。

- - - - - - - - - - 

○メアリに関する証言
エバンジェリン様からアダムス宛の手紙を全て奪い隠していた可能性あり。
エバンジェリン様からアダムス宛に贈られた梨、10ケースを全て独り占めにし平らげた可能性あり。
エバンジェリン様からアダムス宛に贈られたお守りを勝手に盗んだ可能性あり。

- - - - - - - - - - 

は?
は?
手紙?
エバンジェリンから?
は?
一通ももらっていなかったぞ?
メアリが隠してた?
梨も、お守りも?
僕のメアリがそんなことするはずがないじゃないか!!
デタラメ書きやがって!!

アダムスは怒りではらわたが煮えくり返りそうだった。

- - - - - - - - - - 

○総括
以上の事実を総合するに、メアリは容姿の若さに惑わされることなく、慎重に取り扱うべき人物と認められる。
その行状は家計を傾け、人心を乱す恐れあり。

- - - - - - - - - - 

「本件調査の結果をここに記録し、王侯貴族会議の審理に付す。以上」

男は書簡を丸め退室した。

王妃様が陛下に何か耳打ちした。貴族たちが眉をひそめ、ヒソヒソと話し合っている。暗くうつむいているエバンジェリンの背中にオースト侯爵が励ますように手を添えていた。

こんな報告書、絶対に嘘っぱちだ!
メアリ大丈夫だよ。
僕は最後までメアリの味方だ。

アダムスは調査員の男が去るまでその背中を睨みつけていた。

「ではメアリを呼べ」

陛下が号令した。



 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「お幸せに」と微笑んだ悪役令嬢は、二度と戻らなかった。

パリパリかぷちーの
恋愛
王太子から婚約破棄を告げられたその日、 クラリーチェ=ヴァレンティナは微笑んでこう言った。 「どうか、お幸せに」──そして姿を消した。 完璧すぎる令嬢。誰にも本心を明かさなかった彼女が、 “何も持たずに”去ったその先にあったものとは。 これは誰かのために生きることをやめ、 「私自身の幸せ」を選びなおした、 ひとりの元・悪役令嬢の再生と静かな愛の物語。

【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

愛想を尽かした女と尽かされた男

火野村志紀
恋愛
※全16話となります。 「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」

婚約破棄に、承知いたしました。と返したら爆笑されました。

パリパリかぷちーの
恋愛
公爵令嬢カルルは、ある夜会で王太子ジェラールから婚約破棄を言い渡される。しかし、カルルは泣くどころか、これまで立て替えていた経費や労働対価の「莫大な請求書」をその場で叩きつけた。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。

ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。 ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。 対面した婚約者は、 「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」 ……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。 「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」 今の私はあなたを愛していません。 気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。 ☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。 ☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)

断罪前に“悪役"令嬢は、姿を消した。

パリパリかぷちーの
恋愛
高貴な公爵令嬢ティアラ。 将来の王妃候補とされてきたが、ある日、学園で「悪役令嬢」と呼ばれるようになり、理不尽な噂に追いつめられる。 平民出身のヒロインに嫉妬して、陥れようとしている。 根も葉もない悪評が広まる中、ティアラは学園から姿を消してしまう。 その突然の失踪に、大騒ぎ。

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

公爵令嬢は結婚式当日に死んだ

白雲八鈴
恋愛
 今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。 「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」  突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。 婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。  そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。  その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……  生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。  婚約者とその番という女性に 『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』 そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。 *タグ注意 *不快であれば閉じてください。

処理中です...