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12 暴かれる
「メアリ・キャシー、ここへ」
名前を呼ばれてメアリがアダムスの横に並んだ。アダムスとメアリは一瞬見つめ合い、励まし合うように小さくうなずきあった。一方男爵はメアリを憎しみの目で一瞥した。
オースト侯爵は冷たい視線をメアリに送っていた。エバンジェリンはうつむいたまま顔を上げなかった。
「お前がエバンジェリンからアダムス宛の手紙を隠したというのは本当か」
陛下が重々しい声でメアリに問うた。
「いいえ……手紙は従者仲間のデイジーに渡しました」
「手紙の行方を知っているか」
「いいえ……存じません」
メアリは陛下に見つめられておどおどしながら答えた。
メアリ、なんて可哀想な目に。
緊張で倒れそうになったらまた僕が助けに行こう。
アダムスは頼りなげに立つメアリに同情し、胸が締め付けられる思いだった。
陛下はメアリを見つめたまま、従者に合図した。従者が何かが入った袋をアダムスの前に置いた。
「アダムス、中身を確かめるがいい」
「え?僕がですか?」
急に陛下に促され、アダムスは訳がわからないまま袋を開けた。すると中には土に汚れた手紙が何通も入っていた。
「読んでも良いぞ」
陛下に言われ、アダムスは戸惑いつつ一通を手に取った。送り主はエバンジェリンからだった。
え!?
エバンジェリンから??
アダムスは封を開け、手紙に目を走らせた。
『北地は寒いと聞いております。どうかお風邪を召しませんよう、あたたかいものを食べてお体を休めてください。』
『当家の果樹園で梨が実りました。とても素晴らしい味わいですので、そちらにお送りいたします。皆様とお召し上がりくださいませ。』
『ご迷惑でなければ、お帰りになられた際、アダムス様がお好きなあんずパイを準備いたしますのでご一緒にお茶をいたしましょう。』
『早く……早くお会いしたいです。愛しいアダムス様。』
アダムスは愕然とした。衝撃で喉がつぶれたように声が出なかった。品格溢れる美しい文字列。一文字一文字が丹念に心を込めて書かれていることは学の浅いアダムスにも伝わってきた。
一通も手紙をよこさない冷淡な婚約者だとばかり思っていたのに実はそうではなかったのか?
しかも信じられないことに、この手紙からはエバンジェリンがアダムスに恋心を抱いている様子が読み取れた。
まさか。
アダムスは驚いてエバンジェリンを見上げた。だが、エバンジェリンは決して顔を上げず無言のままただうつむいていた。
いや、僕は騙されないぞ。
これは本当にエバンジェリンが書いたものなのか?
手紙の内容なんて後からいくらだって偽造できるじゃないか。
アダムスはあくまでもメアリを信じ、エバンジェリンを疑った。
「これらは全てエバンジェリンからアダムスに宛てた手紙だ。これらの手紙を隠したのはお前だな」
陛下が怒りを含んだ声音でメアリに問うた。アダムスは隣のメアリを可哀想に思いながら見守った。
「いいえ……私は存じません。隠したのはおそらくデイジーではないでしょうか」
「ではデイジーが手紙を隠した理由はなんだと思うか」
「……あくまで推測ですが。おそらくエバンジェリン様に嫉妬したのでしょう。デイジーは密かにアダムス様のことをお慕いしていたのではないでしょうか」
「アダムス宛に届いた梨のことは知っているか」
「存じません……」
「エバンジェリンから贈られたお守りについては?」
「存じません……」
メアリは両手を胸に重ね、か弱げに質問に答えていった。アダムスはメアリを見ていると試練に必死に耐えている健気な乙女に思えた。
負けるなメアリ。
僕たち二人でがんばろう。
アダムスはメアリを慈愛の目で見つめた。
「証人をここへ」
陛下に呼ばれやってきたのは遠征地で清掃係をしていた下男の一人だった。
「お前が見たことを全て申せ」
陛下に声をかけられ身を縮めながら下男は話し始めた。
「へ、陛下に申し上げます。わしがゴミを焼却しようと炉に行った時、女が手紙を炉にくべて燃やそうとしてました。その手紙には立派な蝋印が押されていたので、わしは高貴な方からの手紙を勝手に燃やそうとしている女に何してるんだと声をかけました」
「女はどうしたか」
「逃げました。わしは気になってこっそり跡をつけました。そうしたら、その女は山肌の土に穴を掘り手紙を埋めました。わしはその場所に印を付けて覚えておいて、遠征が終わる頃、掘り起こして上司に渡しました」
「その女とは誰か」
「あの女です」
下男が指差した方向にメアリがいた。
名前を呼ばれてメアリがアダムスの横に並んだ。アダムスとメアリは一瞬見つめ合い、励まし合うように小さくうなずきあった。一方男爵はメアリを憎しみの目で一瞥した。
オースト侯爵は冷たい視線をメアリに送っていた。エバンジェリンはうつむいたまま顔を上げなかった。
「お前がエバンジェリンからアダムス宛の手紙を隠したというのは本当か」
陛下が重々しい声でメアリに問うた。
「いいえ……手紙は従者仲間のデイジーに渡しました」
「手紙の行方を知っているか」
「いいえ……存じません」
メアリは陛下に見つめられておどおどしながら答えた。
メアリ、なんて可哀想な目に。
緊張で倒れそうになったらまた僕が助けに行こう。
アダムスは頼りなげに立つメアリに同情し、胸が締め付けられる思いだった。
陛下はメアリを見つめたまま、従者に合図した。従者が何かが入った袋をアダムスの前に置いた。
「アダムス、中身を確かめるがいい」
「え?僕がですか?」
急に陛下に促され、アダムスは訳がわからないまま袋を開けた。すると中には土に汚れた手紙が何通も入っていた。
「読んでも良いぞ」
陛下に言われ、アダムスは戸惑いつつ一通を手に取った。送り主はエバンジェリンからだった。
え!?
エバンジェリンから??
アダムスは封を開け、手紙に目を走らせた。
『北地は寒いと聞いております。どうかお風邪を召しませんよう、あたたかいものを食べてお体を休めてください。』
『当家の果樹園で梨が実りました。とても素晴らしい味わいですので、そちらにお送りいたします。皆様とお召し上がりくださいませ。』
『ご迷惑でなければ、お帰りになられた際、アダムス様がお好きなあんずパイを準備いたしますのでご一緒にお茶をいたしましょう。』
『早く……早くお会いしたいです。愛しいアダムス様。』
アダムスは愕然とした。衝撃で喉がつぶれたように声が出なかった。品格溢れる美しい文字列。一文字一文字が丹念に心を込めて書かれていることは学の浅いアダムスにも伝わってきた。
一通も手紙をよこさない冷淡な婚約者だとばかり思っていたのに実はそうではなかったのか?
しかも信じられないことに、この手紙からはエバンジェリンがアダムスに恋心を抱いている様子が読み取れた。
まさか。
アダムスは驚いてエバンジェリンを見上げた。だが、エバンジェリンは決して顔を上げず無言のままただうつむいていた。
いや、僕は騙されないぞ。
これは本当にエバンジェリンが書いたものなのか?
手紙の内容なんて後からいくらだって偽造できるじゃないか。
アダムスはあくまでもメアリを信じ、エバンジェリンを疑った。
「これらは全てエバンジェリンからアダムスに宛てた手紙だ。これらの手紙を隠したのはお前だな」
陛下が怒りを含んだ声音でメアリに問うた。アダムスは隣のメアリを可哀想に思いながら見守った。
「いいえ……私は存じません。隠したのはおそらくデイジーではないでしょうか」
「ではデイジーが手紙を隠した理由はなんだと思うか」
「……あくまで推測ですが。おそらくエバンジェリン様に嫉妬したのでしょう。デイジーは密かにアダムス様のことをお慕いしていたのではないでしょうか」
「アダムス宛に届いた梨のことは知っているか」
「存じません……」
「エバンジェリンから贈られたお守りについては?」
「存じません……」
メアリは両手を胸に重ね、か弱げに質問に答えていった。アダムスはメアリを見ていると試練に必死に耐えている健気な乙女に思えた。
負けるなメアリ。
僕たち二人でがんばろう。
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「女はどうしたか」
「逃げました。わしは気になってこっそり跡をつけました。そうしたら、その女は山肌の土に穴を掘り手紙を埋めました。わしはその場所に印を付けて覚えておいて、遠征が終わる頃、掘り起こして上司に渡しました」
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