25 / 28
第二十五話 暗雲
しおりを挟む
大名は急ぎ帰国した。
秀吉亡き後、戦乱の世になる可能性は高い。
現地により今まで虐げられていた家臣たちが反乱を起こすかもしれない。
まずは真実を告げずに家中をまとめなければならない。
その上で戦の準備をする。
一方、大坂城にやってきた竹中半兵衛は楽観視していた。
律儀者であり、秀吉を兄弟のように慕っていた徳川家康が裏切るわけはない。
彼が大名たちをしっかりとまとめ上げ、徳川秀忠、石田三成、宇喜多秀家や直江兼続に繋ぐだろう。
そう思っていた。
しかし、家康が駿府城に帰り、各地の警備について話し合おうとする……しかし、家臣は冷ややかな態度で彼を迎えた。
「ど、どうした? お主ら? ワシの話が聞けぬのか?」
家康は困惑する。
意を決した井伊直政が家康に対して意見を言う。
「もう、良いではありませぬか? 殿下はすでにいないのでしょう?」
家康は驚く。
「なぜそれを?」
そして、実直な彼が家康にさらに告げる。
「太閤殿下亡き後、殿下を統べることができるのは貴方様ただ一人」
家康は困惑する。
直政を含む家臣には権力欲などはない。
しかし、理解ができない。
家康は小牧長久手以来、秀吉を尊敬しており、秀頼への引き継ぎが上手くいけばいいとさえ思っていた。
「否、殿下は……」
「すでにお亡くなりになったのですね」
本多忠勝が現れて家康の言葉を遮った。
「忠勝!?」
「太閤殿下はおらぬのです。もはや、良いでしょう! 次の天下は貴方様のもの」
周囲から熱い賛同の声が聞こえてくる。
ーーこの者らの言うこと、間違っておらぬ……ワシが今立たねば天下は……
家康は今、理解した。
自分以外に秀吉の代わりが務まることができないことを。
彼は戻れない道を歩き始めたのであった。
一方で吉田郡山城では毛利輝元が書状を読み一人狂喜していた。
ーー天下が! 祖父上ですら得ることができなかった天下が目の前に!
そう思うのも仕方ない。
毛利輝元、秀包、吉川広家などを合わせれば天下に近い家康に対抗できる兵力を動員できる。
彼の中で天下までの道は開かれていく。
ーー秀頼を担ぎ上げ、前田、宇喜多、上杉、島津と五奉行をこちらに引き込めば政治崩壊することもないだろう。
「誰か誰かおらぬか!?」
輝元は野望を表情一面に見せた笑みを浮かべていた。
では、輝元の書状は誰からのものだろうか?
「淀様、これで良いのですね?」
遠藤直経の声が暗闇から聞こえ、そして、もう一人の声も蝋燭の火を介して聞こえる。
「はい。直経。苦労をかけました。ごゆるりとお休みください」
淀君の声である。
彼女は愛し合う秀吉の死が近いことを悟っていた。
秀長から伝えられた秘策をもとに五大老とある男に文書を送っていたのであった。
ある男……
藤堂高虎は淀君から文を見て震えていた。
彼は今、秀長が最後に見せた笑み……その意味を理解したのだ。
ーー全てわかっていたのか。
そう、あの笑みは本当の意味での決別。
高虎を見捨てたのである。
ーー良いでしょう……貴方様の大切にしていた豊臣家……滅ぼしてみせます。
高虎は決意を瞳に浮かべ、戦の準備を始めるのであった。
各地で見えない闘いが始まろうとしていた。
そして、小早川秀包、立花宗茂、石田正澄、真田幸村、島津豊久、長宗我部信親ら軍事を担当する者たちは国の中枢にいる竹中半兵衛と前田利家との会談を希望した。
秀吉亡き後、戦乱の世になる可能性は高い。
現地により今まで虐げられていた家臣たちが反乱を起こすかもしれない。
まずは真実を告げずに家中をまとめなければならない。
その上で戦の準備をする。
一方、大坂城にやってきた竹中半兵衛は楽観視していた。
律儀者であり、秀吉を兄弟のように慕っていた徳川家康が裏切るわけはない。
彼が大名たちをしっかりとまとめ上げ、徳川秀忠、石田三成、宇喜多秀家や直江兼続に繋ぐだろう。
そう思っていた。
しかし、家康が駿府城に帰り、各地の警備について話し合おうとする……しかし、家臣は冷ややかな態度で彼を迎えた。
「ど、どうした? お主ら? ワシの話が聞けぬのか?」
家康は困惑する。
意を決した井伊直政が家康に対して意見を言う。
「もう、良いではありませぬか? 殿下はすでにいないのでしょう?」
家康は驚く。
「なぜそれを?」
そして、実直な彼が家康にさらに告げる。
「太閤殿下亡き後、殿下を統べることができるのは貴方様ただ一人」
家康は困惑する。
直政を含む家臣には権力欲などはない。
しかし、理解ができない。
家康は小牧長久手以来、秀吉を尊敬しており、秀頼への引き継ぎが上手くいけばいいとさえ思っていた。
「否、殿下は……」
「すでにお亡くなりになったのですね」
本多忠勝が現れて家康の言葉を遮った。
「忠勝!?」
「太閤殿下はおらぬのです。もはや、良いでしょう! 次の天下は貴方様のもの」
周囲から熱い賛同の声が聞こえてくる。
ーーこの者らの言うこと、間違っておらぬ……ワシが今立たねば天下は……
家康は今、理解した。
自分以外に秀吉の代わりが務まることができないことを。
彼は戻れない道を歩き始めたのであった。
一方で吉田郡山城では毛利輝元が書状を読み一人狂喜していた。
ーー天下が! 祖父上ですら得ることができなかった天下が目の前に!
そう思うのも仕方ない。
毛利輝元、秀包、吉川広家などを合わせれば天下に近い家康に対抗できる兵力を動員できる。
彼の中で天下までの道は開かれていく。
ーー秀頼を担ぎ上げ、前田、宇喜多、上杉、島津と五奉行をこちらに引き込めば政治崩壊することもないだろう。
「誰か誰かおらぬか!?」
輝元は野望を表情一面に見せた笑みを浮かべていた。
では、輝元の書状は誰からのものだろうか?
「淀様、これで良いのですね?」
遠藤直経の声が暗闇から聞こえ、そして、もう一人の声も蝋燭の火を介して聞こえる。
「はい。直経。苦労をかけました。ごゆるりとお休みください」
淀君の声である。
彼女は愛し合う秀吉の死が近いことを悟っていた。
秀長から伝えられた秘策をもとに五大老とある男に文書を送っていたのであった。
ある男……
藤堂高虎は淀君から文を見て震えていた。
彼は今、秀長が最後に見せた笑み……その意味を理解したのだ。
ーー全てわかっていたのか。
そう、あの笑みは本当の意味での決別。
高虎を見捨てたのである。
ーー良いでしょう……貴方様の大切にしていた豊臣家……滅ぼしてみせます。
高虎は決意を瞳に浮かべ、戦の準備を始めるのであった。
各地で見えない闘いが始まろうとしていた。
そして、小早川秀包、立花宗茂、石田正澄、真田幸村、島津豊久、長宗我部信親ら軍事を担当する者たちは国の中枢にいる竹中半兵衛と前田利家との会談を希望した。
11
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
【架空戦記】狂気の空母「浅間丸」逆境戦記
糸冬
歴史・時代
開戦劈頭の真珠湾攻撃にて、日本海軍は第三次攻撃によって港湾施設と燃料タンクを破壊し、さらには米空母「エンタープライズ」を撃沈する上々の滑り出しを見せた。
それから半年が経った昭和十七年(一九四二年)六月。三菱長崎造船所第三ドックに、一隻のフネが傷ついた船体を横たえていた。
かつて、「太平洋の女王」と称された、海軍輸送船「浅間丸」である。
ドーリットル空襲によってディーゼル機関を損傷した「浅間丸」は、史実においては船体が旧式化したため凍結された計画を復活させ、特設航空母艦として蘇ろうとしていたのだった。
※過去作「炎立つ真珠湾」と世界観を共有した内容となります。
もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら
俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。
赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。
史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。
もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる