婚約者様、勝手に婚約破棄させていただきますが、妹とお幸せにどうぞ？

ライダ様との出会いから現在まで

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「いいかアマンダ、僕は君のことはよく知っているのさ」

面識もない人が、私のことをよく知っているなんてそんなことはないはず。

第一に私は彼のことを知らないのだ。

「どうした？　不満そうな顔だな。君の父は一部界隈ではとても評価されている人だからな。知っていてもおかしくはない話だ」

それは私のことを知っているのではなく、父様のことのみを知っているのだと思った。

「そうだったのですね。それはとても光栄な話でございます。私の父もきっと喜ぶことでしょう」

当たり障りのないように返すと

「さては信じていないな？　僕は君のことを知っている。趣味や好むものも知っているつもりだ」

どこかで詮索でもしたのだろうか。

「では、私の一番大切なものはなんでしょう？」

「至って簡単な問いかけだな。それは勿論、家族だろう」

「正解です」

これは、私のことを仮に知らなかったとしても予測して答えることができる内容だ。

「では次に、私の今一番欲しいものは何かわかりますか？」

ライダ様は少しの間だけ頭を悩ませ、口を開いた。

「もしかして、僕のことか？」

冗談なのか本気なのか見抜くことができず、一定の沈黙が流れた。