婚約者様、勝手に婚約破棄させていただきますが、妹とお幸せにどうぞ?

青杉春香

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ライダ様との出会いから現在まで

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身分的にはたしかに相手が上だけれど、初対面でこんな態度を取られるのは、失礼を超えて新鮮さすら感じる。

しばらくして、空気を察したかのように

「今のは冗談だ。忘れてくれ」

と、鼻のあたりを左手で隠しながら照れる。

そんなライダ様を見て、少しだけ可愛いと感じた。

勿論、発言は気持ち悪かったけれど。

「冗談だったんですね。本当の答えは見当がつかないってことですか?」

若干、煽るようにしてそう言うと、彼はすぐに口を開く。

「ーー確実な地位だ。誰からも見下されない確実な地位を欲しがっている。違うか?」

ライダ様は何か確信しているように、真剣な眼差しをこちらに向ける。

そこで、私は思った。

この人と婚約者になることなんて絶対にありえないと。

身分や地位という概念が嫌いな私にとって、その回答は最も誤っている。

「いいですか。私が今一番欲しいものは、ありません。強いていうのなら、毎日のちょっとした癒しですかね」

日々の生活に満足している私は、特に欲もない。

「そんなの卑怯じゃないか。質問しておいて、ありませんだなんて認められるか。アマンダ、君はなんと生意気な娘なんだ」

やれやれと両手でジェスチャーをして呆れるように私を見る。

これくらいのことを言っておけば、婚約なんてしなくて済むと思った私の狙いは見抜かれていないようだ。

私にだって、くらいいますよ。
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