婚約破棄してくださいませ、王子様

若目

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事の経緯

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ジェヌビエーブが話した経緯はこうだった。


アルフレッド王子がこの領内にやってきたとき、通りすがりに向こうから情熱的に言い寄られたのが始まりなんだとか。

始めは短い会話をする程度だったのが、ともにお茶するようになり、食事するようになり、ジェヌビエーブの家にやってくるようになり、関係が深まっていき、とうとう一線を越えてしまったのだという。

婚約者がいたことは知っていたが、アルフレッド王子からは「あれは父王が決めた政略結婚」「本音を言えば、アレキサンドリアのことは別に好きじゃない」「愛しているのは君だけだ」と言われたのだそうだ。

さらには、「アレキサンドリアとの婚約は破棄してしまって、君とともに生きようと思う」とまで言われたらしい。
つまり、駆け落ちを約束されたのである。

そうして関係を進めていくうち、ジェヌビエーブは妊娠。
それをアルフレッド王子に伝えたところ、自分のところへ来なくなった。

不安になったジェヌビエーブは、つわりに耐えながら王宮へと向かうが、門前払いを食らってしまい、アルフレッド王子に会うことはおろか、王宮に1歩たりとも入ることを許されなかった。

日に日に膨らんでいくお腹を抱えて、どうすることもできず、ジェヌビエーブは困り果ててしまった。

身寄りもないジェヌビエーブには頼る当てもないし、出産する費用が工面できるほどの経済的余裕もなかった。
そんな事情から、アレキサンドリアに憤慨されるのも覚悟の上で、この屋敷に来たのだとか。

──なんてこと……!

アレキサンドリアはゾッとした。
もしこれが本当であれば、アルフレッド王子との婚約を考え直す必要がある。


「……話はよくわかったわ、ジェヌビエーブ。あなた、今はどうやって生活しているの?」
「貯蓄を切り崩しております」
ジェヌビエーブが力無い声で答える。

「そうなの。じゃあ、今夜の食事はここで摂りなさい。わたしが使用人たちに頼んで、あなたの分の食事を出してあげるわ」
「よ、よろしいのですか⁈」
ジェヌビエーブは、体をピクッと震わせて驚いた。
それと同時に、三つ編みにしている赤毛がふるんっと揺れる。

「ええ、構わないわ。あなたぐらい若い人なら、貯蓄なんて大したことないのでしょう?」
「はい…」
ジェヌビエーブはまた、おずおずと答えた。

事実確認はまだはっきりできたわけではない。
しかし、妊娠を期に男に逃げられ、財産もなく、大きなお腹を抱えた年若い領民をこのまま帰すのも気がひけた。

「彼女に食事をお願い。わたしはアルフレッド王子に会いに行くわね」
「かしこまりました」
アルベルティーナにジェヌビエーブのことを任せると、アレキサンドリアは屋敷を出た。
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