婚約破棄してくださいませ、王子様

若目

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ジェヌビエーブという女

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「あなた、名前は?」
「ジェヌビエーブ・ナーブヒンタッハと申します」
女──ジェヌビエーブはおずおずと名乗った。

歳の頃は16~19くらいで、女というよりは、少女と表現した方が適切かもしれない。
赤毛の三つ編みに、浅黒く焼けた肌、大きな茶色い瞳に、薄い唇、小柄で痩せ気味の体。
別に、どこといって特徴の無い地味で普通の女の子といった印象だった。

──見た目の割りに、大仰な名前ねえ…

アレキサンドリアが思うに、アルベルティーナの言ったとおり、この少女が嘘を言っているというのは考えにくかった。

典型的な庶民の女といった感じのこの少女に、そんな大げさな詐欺を働く知恵があるとは思えないし、証拠として差し出してくれた王家の紋章入りボタンと産婦人科医の診断書も、偽造とは思えない。
診断書だけなら偽造ではないだろうかと疑うことができる。

しかし、アルベルティーナの言う通り、王家の紋章は、そう簡単に偽造できる代物ではない。
偽造できないようにデザインされているのだ。
薔薇やら蔓やら剣やらが複雑に交差した紋章は、王家お抱えの職人がひとつひとつ丁寧に彫り上げ、代々国王陛下が任命して、技術を受け継いできた。
その技術は、門外不出とされ、今までに偽造した者が山といたが、どれひとつとして本物には及ばない仕上がりであった。
それほどまでに難易度の高い偽造が、この少女ひとりにできるわけがない。

アレキサンドリアも貴族の端くれであるから、そこそこの審美眼はある。
したがって、嫌でもわかってしまうのだ。
差し出されたボタンは間違いなく本物であり、王家の人間だけが持つことを許される物だということを。

「あなた、歳はいくつかしら?」
「…18歳です」
ジェヌビエーブがうつむき気味に答える。
その表情はどことなく暗い。

──つまり、わたしの2つ下か…

ジェヌビエーブの元気のない様子に、アレキサンドリアは彼女を心配する気持ちが芽生えてきた。

──とりあえず、話を聞こう

「その、お腹の子がアルフレッド王子だって言ってたのよね?」
アレキサンドリアは一瞬だけアルベルティーナに目配せすると、視線をジェヌビエーブのところへ戻した
「…はい」
ジェヌビエーブが、うつむき気味に下げていた頭を上げた。
「正直な話、それが本当なのか、まだ疑っているの。だから、詳しく話を聞かせてくれるかしら?まず、アルフレッド王子とどこで出会ったの?」

「アルフレッド王子、アレキサンドリアお嬢様との婚約をここの領民に発表するために、この領にいらしたことがあるでしょう?それが終わった後にですね…」

ジェヌビエーブが、ポツポツと話し始めた。
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