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訪問者
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「アレキサンドリアお嬢様、変な女が訪ねてきております。お嬢様に御用があるとのことでして」
侍女のアルベルティーナからの伝令を受けて、ドレッサーに座っていたアレキサンドリアは振り返った。
これから婚約者の王子様に会いに行くため、めかしこんでいたのだ。
「変な女?どんな人?」
間の悪い訪問者に少しばかり機嫌を落としながら、アレキサンドリアは聞いてみた。
「この屋敷の近くに住む領民のひとりらしいのですがね、ただいま妊娠中だそうです」
「それで?」
淡々と報告するアルベルティーナに対して、アレキサンドリアも淡々と聞いていく。
訪問してきた用件が「夫が亡くなってしまって生活が成り立たないので養育費の支給の申請をしたい」とか「出産後の働き口を紹介して欲しい」とか「子どもが生まれるので新たに領民として登録をお願いしたい」であれば、後でも問題ないし、父か弟に任せることもできる。
愛しい婚約者であり、自分より格がはるかに上の王族に会うためのメイクやヘアセットに大忙しで、今はそれどころではないのだ。
王族との約束ごとを破ると、今後の自分たちの立場だってまずくなる。
アレキサンドリアはすぐにドレッサーに向き直って、パフをはたきはじめた。
「その女、お腹の子どもというのが……あの、父親はアルフレッド王子だと申しておりまして……」
「その女、気は確かなの?」
振り返ることもせず、アレキサンドリアは今度は頬紅を塗りはじめた。
「さあ、それはわかりません。ただまあ、なんです。嘘をついているとは思えないんです」
「どうして?」
頬紅を塗り終えたアレキサンドリアは、刷毛を台の上に置いた。
「アルフレッド王子が気づかずに自分の家に落としていったというボタンを差し出されたんですがね。それに王家の紋章が入っておりました。お嬢様、ご存知だと思いますが、アレはそう簡単に偽造できるもんじゃありません。それと、妊娠自体も嘘では無さそうです。医師の診断書も持ってきていましたから」
アルベルティーナの報告の続きを聞いたアレキサンドリアは、もう一度振り返った。
「その人、ちょっと通してみてくれる?」
報告の内容が気になって、アレキサンドリアは真偽のほどを確かめたくなった。
その話が詐欺なのか真実なのか、見極める必要があると考えたからだ。
──まだかろうじて時間はあるわ。少しだけ、話だけでも聞いてみましょう
これが後に波乱を呼ぶことになることなど、アレキサンドリアはまるで予期していなかった。
侍女のアルベルティーナからの伝令を受けて、ドレッサーに座っていたアレキサンドリアは振り返った。
これから婚約者の王子様に会いに行くため、めかしこんでいたのだ。
「変な女?どんな人?」
間の悪い訪問者に少しばかり機嫌を落としながら、アレキサンドリアは聞いてみた。
「この屋敷の近くに住む領民のひとりらしいのですがね、ただいま妊娠中だそうです」
「それで?」
淡々と報告するアルベルティーナに対して、アレキサンドリアも淡々と聞いていく。
訪問してきた用件が「夫が亡くなってしまって生活が成り立たないので養育費の支給の申請をしたい」とか「出産後の働き口を紹介して欲しい」とか「子どもが生まれるので新たに領民として登録をお願いしたい」であれば、後でも問題ないし、父か弟に任せることもできる。
愛しい婚約者であり、自分より格がはるかに上の王族に会うためのメイクやヘアセットに大忙しで、今はそれどころではないのだ。
王族との約束ごとを破ると、今後の自分たちの立場だってまずくなる。
アレキサンドリアはすぐにドレッサーに向き直って、パフをはたきはじめた。
「その女、お腹の子どもというのが……あの、父親はアルフレッド王子だと申しておりまして……」
「その女、気は確かなの?」
振り返ることもせず、アレキサンドリアは今度は頬紅を塗りはじめた。
「さあ、それはわかりません。ただまあ、なんです。嘘をついているとは思えないんです」
「どうして?」
頬紅を塗り終えたアレキサンドリアは、刷毛を台の上に置いた。
「アルフレッド王子が気づかずに自分の家に落としていったというボタンを差し出されたんですがね。それに王家の紋章が入っておりました。お嬢様、ご存知だと思いますが、アレはそう簡単に偽造できるもんじゃありません。それと、妊娠自体も嘘では無さそうです。医師の診断書も持ってきていましたから」
アルベルティーナの報告の続きを聞いたアレキサンドリアは、もう一度振り返った。
「その人、ちょっと通してみてくれる?」
報告の内容が気になって、アレキサンドリアは真偽のほどを確かめたくなった。
その話が詐欺なのか真実なのか、見極める必要があると考えたからだ。
──まだかろうじて時間はあるわ。少しだけ、話だけでも聞いてみましょう
これが後に波乱を呼ぶことになることなど、アレキサンドリアはまるで予期していなかった。
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