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Wセンター 編
優しさの理由
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機内の窓から外を眺めると、すっかり暗くなっていた。
神社の階段を下り終えてロケバスに乗り込んだ頃には、まだ明るかったのに。
「飛行機、間に合ってよかったね」
「うん。ほんと、かっきーのおかげだよ。私、最初のチャレンジでいきなり失敗しちゃった時は、もうダメかと…」
今回のシングルのヒット祈願で私とかっきーが訪れたのは、熊本県にある神社だった。
昨日から前泊をして、今日は朝から撮影がスタート。
日本一の長さを誇るという階段を登るだけでも大変なのに、途中にはチャレンジ企画も用意されていた。
しかも、チャレンジに失敗したら100段戻らないといけないという過酷なルールだったけど、ヒット祈願はなんとか成功。
その帰りの飛行機で隣同士に座った私たちは、今日を振り返っていた。
「いや~、私もおいシャンとbicycleはどっちがどっちだかわかんなくなる時あるよ。他のチャレンジも絶妙な難しさだったし。スタッフさんもよく考えてくれるよね」
私の失敗をフォローするだけじゃなく、企画を考えてくれたスタッフさんへの労いの言葉も付け加える。
なんでこんなにいい子なんだろう。
一方、私は……
シングルの発売順は間違えるし、
縄跳びは全然跳べないし(太ももが全然上がらないんだもん!)、
逆に黒ひげチャレンジでは最後の1本で跳んじゃうし。
自分が足を引っ張ってしまった場面ばっかり浮かんできて、情けなくなる。
「かっきー、今回のヒット祈願、本当に、、、ありがとう。私、かっきーがいてくれなかったら絶対に無理だった」
本当に、"ごめん"。
そう言いかけて、私は"ありがとう"を選んだ。
謝ったら、きっとかっきーはまた全力でフォローしてくれる。今日ミスした私をずっとフォローしてくれていたように。その優しさに、これ以上甘えるわけにはいかない。
「いや、全然全然!私だって一人じゃ絶対無理だったし!それに、さくちゃんがいなかったら私、キツくて文句言いながら登ってたと思うよ」
「え~?ほんとに?」
「うんうん。なんで100段も戻らないといけないんですかー、とか。チャレンジ難し過ぎないですかー、とか。だから、私もさくちゃんのおかげで頑張れたんだよ」
「そんな、私なんて足引っ張ってばっかりで…」
「ううん。私、さくちゃんから優しさを分けてもらってたんだと思う。だから、大変だったけど最後まで楽しく頑張れた。だから、さくちゃんのおかげ!」
かっきーはそう言ってくれたけど。
たとえ私がいなくても、カメラが回っていてもいなくても。
かっきーは、スタッフさんが用意してくれた企画に文句を言うような子じゃない。大変でも笑顔を絶やさず、周囲の人に優しく振る舞える人だから。
それは、とても難しくて、すごいこと。かっきーは、自分の優しさをもっともっと誇っていいのに。
その優しさを、私のおかげだって言ってくれるなんて。
嬉しくて言葉に詰まる。
(そんなこと言われたら……ますます好きになっちゃうよ…)
「それに、さくちゃんの縄跳びもかわいかったし。あれに癒されて頑張れたのもあるかなー。オンエアでもう一回見たいよ」
「うぅ~…あそこだけは放送しないでほしい……ほんとに」
「なんでー?あんなにかわいかったのに!腕がこう、バタバタバターって…」
「もぅ!それバカにしてるでしょ~?あれは脚がもう限界で上がらなかったの!」
そうやって時におかしく今日を振り返りながらも、朝から夕方までひたすら階段を上り下りした疲労には2人とも逆らえずーーー
次第に言葉数が少なくなっていくと、いつの間にか眠りに落ちていた。
眠りに落ちる直前、かっきーが手を絡めたきたことだけは覚えている。
~~~~~~
どれくらい眠っていたんだろうか。
離陸したところまではうっすらと記憶があるけど、それ以降は覚えていない。
ベルト着用サインが消えているので、安定飛行に入ったらしい。
「さくちゃん…」
不意に名前を呼ばれ、反射的に隣を向く。
そこには、私の左肩に頭を預けてすやすやと眠る、天使みたいな寝顔があった。
少し顔を前に傾けて下から覗き込んでみると、何やら口元でむにゃむにゃ言っている。
どうやら、かっきーが寝言で私の名前を呼んだだけらしい。
(私の名前を呼んだってことは、もしかしたら…私の夢でも見てるのかな…?)
だとしたら、一体どんな夢を見ているんだろう。
夢の中の私が、ものすごく恥ずかしいことしてたらどうしよう。いや、他人の夢の中なんてどうしようもないんだけどさ。
恐る恐る耳を傾けてみる。
「さくちゃん、大丈夫……あと、ちょっと…がんばろ……」
かっきーは、夢の中でまだ階段を上っているらしい。
しかも、やっぱり私を励ましながら。
夢でまで私と喋ってくれてるのは嬉しい、けど。
(もぅ……ほんとのさくはこっちだよ…?)
かっきーの夢に登場している私に、ちょっとだけ嫉妬してしまう。
いじわるして起こしちゃおうかな、とも思ったけど。
疲れて眠っているかっきーに免じて、ここは夢の中の私を許してあげよう。
左肩をなるべく動かさないよう静かに深呼吸をして、今回のシングルへの決意を新たにする。
(かっきーに頼ってばっかりいられない……私も、頑張らなきゃ…!)
~続く~
神社の階段を下り終えてロケバスに乗り込んだ頃には、まだ明るかったのに。
「飛行機、間に合ってよかったね」
「うん。ほんと、かっきーのおかげだよ。私、最初のチャレンジでいきなり失敗しちゃった時は、もうダメかと…」
今回のシングルのヒット祈願で私とかっきーが訪れたのは、熊本県にある神社だった。
昨日から前泊をして、今日は朝から撮影がスタート。
日本一の長さを誇るという階段を登るだけでも大変なのに、途中にはチャレンジ企画も用意されていた。
しかも、チャレンジに失敗したら100段戻らないといけないという過酷なルールだったけど、ヒット祈願はなんとか成功。
その帰りの飛行機で隣同士に座った私たちは、今日を振り返っていた。
「いや~、私もおいシャンとbicycleはどっちがどっちだかわかんなくなる時あるよ。他のチャレンジも絶妙な難しさだったし。スタッフさんもよく考えてくれるよね」
私の失敗をフォローするだけじゃなく、企画を考えてくれたスタッフさんへの労いの言葉も付け加える。
なんでこんなにいい子なんだろう。
一方、私は……
シングルの発売順は間違えるし、
縄跳びは全然跳べないし(太ももが全然上がらないんだもん!)、
逆に黒ひげチャレンジでは最後の1本で跳んじゃうし。
自分が足を引っ張ってしまった場面ばっかり浮かんできて、情けなくなる。
「かっきー、今回のヒット祈願、本当に、、、ありがとう。私、かっきーがいてくれなかったら絶対に無理だった」
本当に、"ごめん"。
そう言いかけて、私は"ありがとう"を選んだ。
謝ったら、きっとかっきーはまた全力でフォローしてくれる。今日ミスした私をずっとフォローしてくれていたように。その優しさに、これ以上甘えるわけにはいかない。
「いや、全然全然!私だって一人じゃ絶対無理だったし!それに、さくちゃんがいなかったら私、キツくて文句言いながら登ってたと思うよ」
「え~?ほんとに?」
「うんうん。なんで100段も戻らないといけないんですかー、とか。チャレンジ難し過ぎないですかー、とか。だから、私もさくちゃんのおかげで頑張れたんだよ」
「そんな、私なんて足引っ張ってばっかりで…」
「ううん。私、さくちゃんから優しさを分けてもらってたんだと思う。だから、大変だったけど最後まで楽しく頑張れた。だから、さくちゃんのおかげ!」
かっきーはそう言ってくれたけど。
たとえ私がいなくても、カメラが回っていてもいなくても。
かっきーは、スタッフさんが用意してくれた企画に文句を言うような子じゃない。大変でも笑顔を絶やさず、周囲の人に優しく振る舞える人だから。
それは、とても難しくて、すごいこと。かっきーは、自分の優しさをもっともっと誇っていいのに。
その優しさを、私のおかげだって言ってくれるなんて。
嬉しくて言葉に詰まる。
(そんなこと言われたら……ますます好きになっちゃうよ…)
「それに、さくちゃんの縄跳びもかわいかったし。あれに癒されて頑張れたのもあるかなー。オンエアでもう一回見たいよ」
「うぅ~…あそこだけは放送しないでほしい……ほんとに」
「なんでー?あんなにかわいかったのに!腕がこう、バタバタバターって…」
「もぅ!それバカにしてるでしょ~?あれは脚がもう限界で上がらなかったの!」
そうやって時におかしく今日を振り返りながらも、朝から夕方までひたすら階段を上り下りした疲労には2人とも逆らえずーーー
次第に言葉数が少なくなっていくと、いつの間にか眠りに落ちていた。
眠りに落ちる直前、かっきーが手を絡めたきたことだけは覚えている。
~~~~~~
どれくらい眠っていたんだろうか。
離陸したところまではうっすらと記憶があるけど、それ以降は覚えていない。
ベルト着用サインが消えているので、安定飛行に入ったらしい。
「さくちゃん…」
不意に名前を呼ばれ、反射的に隣を向く。
そこには、私の左肩に頭を預けてすやすやと眠る、天使みたいな寝顔があった。
少し顔を前に傾けて下から覗き込んでみると、何やら口元でむにゃむにゃ言っている。
どうやら、かっきーが寝言で私の名前を呼んだだけらしい。
(私の名前を呼んだってことは、もしかしたら…私の夢でも見てるのかな…?)
だとしたら、一体どんな夢を見ているんだろう。
夢の中の私が、ものすごく恥ずかしいことしてたらどうしよう。いや、他人の夢の中なんてどうしようもないんだけどさ。
恐る恐る耳を傾けてみる。
「さくちゃん、大丈夫……あと、ちょっと…がんばろ……」
かっきーは、夢の中でまだ階段を上っているらしい。
しかも、やっぱり私を励ましながら。
夢でまで私と喋ってくれてるのは嬉しい、けど。
(もぅ……ほんとのさくはこっちだよ…?)
かっきーの夢に登場している私に、ちょっとだけ嫉妬してしまう。
いじわるして起こしちゃおうかな、とも思ったけど。
疲れて眠っているかっきーに免じて、ここは夢の中の私を許してあげよう。
左肩をなるべく動かさないよう静かに深呼吸をして、今回のシングルへの決意を新たにする。
(かっきーに頼ってばっかりいられない……私も、頑張らなきゃ…!)
~続く~
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