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Wセンター 編
Wセンター編~プロローグ~
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「それじゃ、さくちゃん。私、こっちの線で帰るね」
「うん、じゃあ今日はここでバイバイだね」
お仕事帰りに寄った、秋葉原駅。
今日は、ずっと前から行ってみたかったミルクスタンドへ、かっきーを誘ってみた。
「これ、ありがとね。大事にする」
かっきーの手のひらに乗っているのは、シマエナガのぬいぐるみ。
ガチャガチャコーナーでお気に入りの鳥を見つけて、子供のようにはしゃぐかっきーがあまりにも可愛くて。
私が小銭を出すから、とプレゼントしたシマエナガだった。
「ガチャガチャなんて何年ぶりだったかな。かっきーと一緒に回せて、楽しかった」
「うん、私も。それに、次のシングルの話もいろいろ出来たし。私、一緒にセンターに選ばれたのがさくちゃんで本当に良かった」
私も同じ気持ちだと伝えてもう一度別れの挨拶をした後、改札を通過するかっきーを見送る。
明日はかっきーが朝早くからお仕事だから、無理せずお互いの家で休むことに決めたのだった。
10歩ほど進んだところで、私のほうへ振り返ってくれたかっきー。
(ちゃんと見てるよ、かっきーのこと…)
それを伝えたくて手を振ると、かっきーも同じように返してくれる。
改札から遠ざかっていくかっきーの後ろ姿をしばらく目で追っていたい。でも、その綺麗な黒髪は人混みの波に飲まれていく。
(これだけ人がたくさんいたら、しょうがないか…)
諦めて、私が乗る線の改札へ向かおうとした時だった。
人の群れから、かっきーがひょこっと顔を出した。
まだ同じ場所に立っていた私を見つけると、光が弾けたような笑顔を向けてくれる。
どれほどの群衆の中でも、私はあの笑顔を見つけられる自信がある。
それほど魅力的な笑顔が自分だけに向けられているのが嬉しくて、さっきよりも大きく手を振った。
かっきーの姿が見えなくなるまで、ずっと振り続けていたーーー
あんなに魅力的な子と、私。
2人でダブルセンターなんて、まだ不思議な感じがする。
「ずっと楽しみにしてた」とか。
「2人にしか出せない空気感が大好き」とか。
「4期でダブルセンターなら2人しか考えられない」とか。
選抜発表の後で周りのメンバーはそんな嬉しいことを言ってくれたけど、やっぱり不思議だ。
それに、センターという特別なポジションには毎度プレッシャーを感じる。不安もある。
それでも。
大好きなかっきーと一緒なら、楽しみも感じる。
1人でセンターに立つ時とは違って、
ダブルセンターでは嬉しいことを分かち合えるとか、
ツラい時は支え合えるとか。
そんな話を聞いたことがある。
一体、どんな感覚なんだろう。
分からないけど、分からないのが楽しみでもある、そんな感覚。
2023年の秋。
私たちが付き合い始めて、1年半と少しが過ぎた頃。
かっきーと私がダブルセンターに選ばれた、34thシングルの活動期間が始まった。
~続く~
「うん、じゃあ今日はここでバイバイだね」
お仕事帰りに寄った、秋葉原駅。
今日は、ずっと前から行ってみたかったミルクスタンドへ、かっきーを誘ってみた。
「これ、ありがとね。大事にする」
かっきーの手のひらに乗っているのは、シマエナガのぬいぐるみ。
ガチャガチャコーナーでお気に入りの鳥を見つけて、子供のようにはしゃぐかっきーがあまりにも可愛くて。
私が小銭を出すから、とプレゼントしたシマエナガだった。
「ガチャガチャなんて何年ぶりだったかな。かっきーと一緒に回せて、楽しかった」
「うん、私も。それに、次のシングルの話もいろいろ出来たし。私、一緒にセンターに選ばれたのがさくちゃんで本当に良かった」
私も同じ気持ちだと伝えてもう一度別れの挨拶をした後、改札を通過するかっきーを見送る。
明日はかっきーが朝早くからお仕事だから、無理せずお互いの家で休むことに決めたのだった。
10歩ほど進んだところで、私のほうへ振り返ってくれたかっきー。
(ちゃんと見てるよ、かっきーのこと…)
それを伝えたくて手を振ると、かっきーも同じように返してくれる。
改札から遠ざかっていくかっきーの後ろ姿をしばらく目で追っていたい。でも、その綺麗な黒髪は人混みの波に飲まれていく。
(これだけ人がたくさんいたら、しょうがないか…)
諦めて、私が乗る線の改札へ向かおうとした時だった。
人の群れから、かっきーがひょこっと顔を出した。
まだ同じ場所に立っていた私を見つけると、光が弾けたような笑顔を向けてくれる。
どれほどの群衆の中でも、私はあの笑顔を見つけられる自信がある。
それほど魅力的な笑顔が自分だけに向けられているのが嬉しくて、さっきよりも大きく手を振った。
かっきーの姿が見えなくなるまで、ずっと振り続けていたーーー
あんなに魅力的な子と、私。
2人でダブルセンターなんて、まだ不思議な感じがする。
「ずっと楽しみにしてた」とか。
「2人にしか出せない空気感が大好き」とか。
「4期でダブルセンターなら2人しか考えられない」とか。
選抜発表の後で周りのメンバーはそんな嬉しいことを言ってくれたけど、やっぱり不思議だ。
それに、センターという特別なポジションには毎度プレッシャーを感じる。不安もある。
それでも。
大好きなかっきーと一緒なら、楽しみも感じる。
1人でセンターに立つ時とは違って、
ダブルセンターでは嬉しいことを分かち合えるとか、
ツラい時は支え合えるとか。
そんな話を聞いたことがある。
一体、どんな感覚なんだろう。
分からないけど、分からないのが楽しみでもある、そんな感覚。
2023年の秋。
私たちが付き合い始めて、1年半と少しが過ぎた頃。
かっきーと私がダブルセンターに選ばれた、34thシングルの活動期間が始まった。
~続く~
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