さくらと遥香

youmery

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変わらないもの

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さくら「かっきー、ごめんね。いきなり押しかけちゃって…」
遥香「ううん、すごく嬉しいよ。久しぶりだよね、さくちゃんがうちに来てくれるの」

たしかに、いつぶりだろ。かっきーの部屋に来るの。
そういえば、付き合い始めた頃はお互いの家を行き来していた。私の部屋とかっきーの部屋、同じくらいの頻度だったと思う。

それが、いつ頃だったか、
 "さくちゃんに夜道を歩かせたくない"
かっきーがそんなことを言ってくれたのがきっかけだったかな。

それ以来、かっきーが私の部屋へ来てくれて会うのが基本になった。

でも、今日は特別。

会社で美月さんと話をした私は、すぐにかっきーに連絡した。
今日はお休みで自宅にいることを確認すると、お昼過ぎに会社を出てそのままかっきーの部屋へやって来た。

============

「さくちゃん、私、あの、、ごめん!」
「えっ…?急にどうしたの?」

かっきーが用意してくれていたあたたかいお茶が入ったカップが2つ、リビングの丸テーブルに置かれた。その前に座って、落ち着いた直後。

突然、かっきーが頭を下げて謝ってきた。

「私、美月さんが卒業するって話を聞いてから、これからどうしたらいいかとか、色々わかんなくなっちゃって……だから、その……」

少しだけ頭を上げたけど、その視線は私の膝あたりに向けられている。
やっぱり、かっきーは一人で思い詰めていたみたいだ。憧れの美月さんの卒業を聞いて、どう受け止めたらいいか分からなかったんだろう。
もしかしたら、このままかっきーも卒業しちゃう選択肢だって頭をよぎっていたのかもしれない。

でも、もしそうだとしても。
悪いことなんかじゃない。

私は、小さくなったかっきーを包み込むように抱きしめた。

「かっきー……いいんだよ」
「でも、さくちゃんにも心配かけちゃって……」
「いいの」
「先輩たちが安心できるように、私たち4期生がしっかりしなきゃいけないのに…」
「そうだね。でも、今はいいの」
「それに、それに……」
「かっきー、顔、上げて…?」

コツンっ……

やっと顔を上げてくれたかっきーのおでこに、私のおでこを押し当てた。

「かっきー、大丈夫。大丈夫だから。何も言わなくていいの」
「だって…さくちゃんがせっかく来てくれたのに、私……まだ、どうしたらいいかわかんなくて……」
「いいんだよ。今は、それがかっきーの素直な気持ちなんだから。それに、今日はかっきーから何かを聞き出そうとか、そういうつもりで来たわけじゃないの……だから、大丈夫だよ」
「そう、なの……?」
「うん。それとも、大好きなかっきーにただ会いに来ただけじゃ、ダメ?」
「ダメ……なわけない。ていうか、嬉しい……すごく。あと、今の『ダメ?』って言い方、かわいすぎ……ずるい……」
「え~?普通だよ」

ほんの少し、かっきーがいつもの調子に戻ったみたい。安心した。

「あのね、今日は、かっきーに伝えておきたいことがあって」
「え、なんかドキドキしちゃうけど、、なぁに?」

顔を少し離して、ふぅっと一つ呼吸する。
かっきーの目を真っ直ぐ見つめると、出来るだけ優しく落ち着いた声で伝えた。

「私は、これからかっきーがどんな選択をしても、変わらないから」
「私の、選択…?」
「うん。もしも、かっきーがグループを卒業しても、それで、アイドルじゃなくなっても。芸能のお仕事から引退しても……私は、これからもかっきーのそばにいる。そばにいたい。これだけは、どうしても直接伝えたくて」

そう。私はこれを伝えに来たんだ。
かっきーがこれからどこへ進むのか、答えを出せるのはかっきーだけだから。
なら私は、どんな答えでも受け入れる。どんな答えを出しても変わらないものがあるって伝えたかった。

「さくちゃん……」

かっきーの潤んだ瞳から、一筋の涙が流れた。それが合図だったかのように、次々と涙が溢れてくる。

「うぅぅ…さくちゃん、ありがとう……本当に…」

多分かっきーは、一人ではこうやって思い切り泣くことも出来なかったんだ。
弱いままじゃいけない、しっかりしなきゃいけないって自分を追い込んで。

だとしたら私は、その溜め込んだ涙を流してあげられる存在になれたんだろうか。

そうだったらいいな。

泣き続けるかっきーを腕の中に包みながら、そんなことを考えていた。

~続く~
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