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本編
賭けの結果
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ダニエルさんにそれとなく話を聞くと、先輩の船乗りには航海中にライム酒を飲めと言われていたらしい。だが、ダニエルさんはライム酒が苦手でそんなに飲んでいなかったという。
ライム酒でビタミンCを補っていたのか。その辺の説明の行き違いがあったのかもしれない。
「おお、ダニエル! こんなところにいたのか。探したぞ!」
こんがり肌が焼けた三十代くらいの大柄な男性が声を掛けてきた。
ダニエルさんが、立ち上がりピンと背を張る。
「船長!」
「地元の人と交流して仲良くなれと言ったが、お前といいあいつらといい子供ばかりに声をかけてんのかよ」
船長と呼ばれた男が指差した方向には、ラジェがいた。どうやらラジェに話しかけた二人組もダニエルさんと同じ乗組員のようだ。
「でも船長、見てください。うちの船をこんなに綺麗に描いているんだって」
船長さんが私の絵を覗き、凝視する。
「嬢ちゃん、凄いな!」
「ありがとうございます」
「これ、完成したら売ってくれないか?」
「え? でもこれは下書きで……」
「下書きでもいい。この絵がほしい」
スケッチを購入したい、と言われたのは初めてかもしれない。
キースな月光さんを見れば、無表情だ。私が勝手に決めていいってことだと理解する。
「分かりました。でもまだ書き足したいので、もう少し時間をください。あと少しあれば完成します」
「何か急がせているようで悪いな」
「大丈夫です。すぐに描きます」
素早くでも丁寧に残りの船のスケッチを足していく。その間、船長さんとダニエルさんは一度船へと戻った。
三十分ほどしてスケッチが完成する。
「よし! できた!」
ラジェも途中から私の隣に座っていたが、静かに私がスケッチする姿を眺めていた。
「目の前の船、そのまんまだね。ミリーちゃん、前よりも絵が上手くなっていると思う」
「そうかな……嬉しいな」
キースな月光さんが絵を覗きながら言う。
「最低銀貨五枚は請求したほうがいいですよ」
「でも、鉛筆で描いただけですけど……」
「その価値以上は十分ある」
ここはキースな月光さんの助言を聞くことにする。
絵を持って船へ向かうと、船長さんが貴族っぽい男と揉めていた。
「そんな急にうちは航海できねぇ。条件も飲めねぇ。他を当たってくれ」
「金は積むと言っているだろ!」
「金の問題じゃない。とにかく、うちは無理だ」
「クッ、荒くれ者の集まりのくせに!」
貴族風の男は荷物を蹴ると、どこかへと早足で歩いて行った。
「ったく。荒くれはどっちだって話だ」
「船長、いいのか? あれを断って、帝国の貴族だろ?」
「知らねぇよ。俺は帝国の人間じゃねぇ」
大声を出して笑う船長さんと目が合う。
「こんにちは」
「おう、嬢ちゃん。絵はできたか?」
「はい! この通り」
スケッチを船長さんに見せる。
「さっきよりもいいな。いくらだ?」
「えーと、銀貨五枚……」
「それだけでいいのか?」
「はい。大丈夫です」
私的にはスケッチに銀貨五枚は結構高額だと思ったが、船長さんは一切躊躇せずに銀貨五枚を支払ってくれた。
見るつもりはなかったけど、船長さんの財布にはいろんな国の硬貨が入っていた。
「嬢ちゃんの絵は、この船の一番いい場所に飾る予定だ」
「ありがとうございます!」
「しばらく、ここにいるから、また通りかかったら遠慮せずに挨拶してくれ」
船長さんとそのまま別れようとして止まる。
「あ、忘れていました」
「ん? どうした?」
「ダニエルさんがライム酒が苦手で飲まないから、別の酒のおすすめをこちらのキースに尋ねていたのですが――」
「あぁ? ダニエルがそう言ったのか?」
「はい。あと、体調が悪そうだったのでお酒は控えたほうがいいかなってお伝えしようと思って……」
船長の顔が般若のように怖くなったので喋るのをやめる。私が知らせたいことはちゃんと伝わったようだ。
「嬢ちゃん……ありがとうな」
「私も絵を買っていただき、ありがとうございました」
お礼をして商業ギルドに向かって歩き出すと、後ろから船長さんの大声が聞こえた。
「ダニエル! 今すぐここに来やがれ!」
ダニエルさん、酷い症状は出ていなかったので、たくさんビタミンを摂って早く治るといいな。
そんなことを考えながら歩いていると、月光さんから私だけに聞こえる声で話しかけられる。
「ミリー嬢が何をしたか気付かないとでも?」
「なんの話でしょうか?」
「秘密でいっぱいで……実に困ったお嬢さんだ」
なんとなくだけど月光さんの声が弾んでいた。
その後、高笑いしながら歩く爺さんとその隣で苦笑いをするエルさんと合流する。
例の賭けの結果は爺さんの態度から分かったけど、一応尋ねる。
「レシピの登録はいかがでしたか?」
「私の完全勝利だ。メリル殿の驚いた顔をお主にも見せてやりたかった。椅子から転げ落ちそうになっておったぞ」
メリルさんの反応は爺さんの誇張だと思うけど、無事にウニの価値が認められたのは嬉しい。細々としたレシピの登録は、午後にエルさんが行ってくれるということだった。
グーッとお腹が鳴る。
「お腹が空きました」
「お主の腹の虫は休むことを知らないな。この辺に貝のスープが旨い店があった」
「それは、美味しそうですね!」
「エル、サリも連れて全員で食事をするぞ」
上機嫌な爺さんは、今にも踊り出しそうに貝のスープの店へと向かった。
ライム酒でビタミンCを補っていたのか。その辺の説明の行き違いがあったのかもしれない。
「おお、ダニエル! こんなところにいたのか。探したぞ!」
こんがり肌が焼けた三十代くらいの大柄な男性が声を掛けてきた。
ダニエルさんが、立ち上がりピンと背を張る。
「船長!」
「地元の人と交流して仲良くなれと言ったが、お前といいあいつらといい子供ばかりに声をかけてんのかよ」
船長と呼ばれた男が指差した方向には、ラジェがいた。どうやらラジェに話しかけた二人組もダニエルさんと同じ乗組員のようだ。
「でも船長、見てください。うちの船をこんなに綺麗に描いているんだって」
船長さんが私の絵を覗き、凝視する。
「嬢ちゃん、凄いな!」
「ありがとうございます」
「これ、完成したら売ってくれないか?」
「え? でもこれは下書きで……」
「下書きでもいい。この絵がほしい」
スケッチを購入したい、と言われたのは初めてかもしれない。
キースな月光さんを見れば、無表情だ。私が勝手に決めていいってことだと理解する。
「分かりました。でもまだ書き足したいので、もう少し時間をください。あと少しあれば完成します」
「何か急がせているようで悪いな」
「大丈夫です。すぐに描きます」
素早くでも丁寧に残りの船のスケッチを足していく。その間、船長さんとダニエルさんは一度船へと戻った。
三十分ほどしてスケッチが完成する。
「よし! できた!」
ラジェも途中から私の隣に座っていたが、静かに私がスケッチする姿を眺めていた。
「目の前の船、そのまんまだね。ミリーちゃん、前よりも絵が上手くなっていると思う」
「そうかな……嬉しいな」
キースな月光さんが絵を覗きながら言う。
「最低銀貨五枚は請求したほうがいいですよ」
「でも、鉛筆で描いただけですけど……」
「その価値以上は十分ある」
ここはキースな月光さんの助言を聞くことにする。
絵を持って船へ向かうと、船長さんが貴族っぽい男と揉めていた。
「そんな急にうちは航海できねぇ。条件も飲めねぇ。他を当たってくれ」
「金は積むと言っているだろ!」
「金の問題じゃない。とにかく、うちは無理だ」
「クッ、荒くれ者の集まりのくせに!」
貴族風の男は荷物を蹴ると、どこかへと早足で歩いて行った。
「ったく。荒くれはどっちだって話だ」
「船長、いいのか? あれを断って、帝国の貴族だろ?」
「知らねぇよ。俺は帝国の人間じゃねぇ」
大声を出して笑う船長さんと目が合う。
「こんにちは」
「おう、嬢ちゃん。絵はできたか?」
「はい! この通り」
スケッチを船長さんに見せる。
「さっきよりもいいな。いくらだ?」
「えーと、銀貨五枚……」
「それだけでいいのか?」
「はい。大丈夫です」
私的にはスケッチに銀貨五枚は結構高額だと思ったが、船長さんは一切躊躇せずに銀貨五枚を支払ってくれた。
見るつもりはなかったけど、船長さんの財布にはいろんな国の硬貨が入っていた。
「嬢ちゃんの絵は、この船の一番いい場所に飾る予定だ」
「ありがとうございます!」
「しばらく、ここにいるから、また通りかかったら遠慮せずに挨拶してくれ」
船長さんとそのまま別れようとして止まる。
「あ、忘れていました」
「ん? どうした?」
「ダニエルさんがライム酒が苦手で飲まないから、別の酒のおすすめをこちらのキースに尋ねていたのですが――」
「あぁ? ダニエルがそう言ったのか?」
「はい。あと、体調が悪そうだったのでお酒は控えたほうがいいかなってお伝えしようと思って……」
船長の顔が般若のように怖くなったので喋るのをやめる。私が知らせたいことはちゃんと伝わったようだ。
「嬢ちゃん……ありがとうな」
「私も絵を買っていただき、ありがとうございました」
お礼をして商業ギルドに向かって歩き出すと、後ろから船長さんの大声が聞こえた。
「ダニエル! 今すぐここに来やがれ!」
ダニエルさん、酷い症状は出ていなかったので、たくさんビタミンを摂って早く治るといいな。
そんなことを考えながら歩いていると、月光さんから私だけに聞こえる声で話しかけられる。
「ミリー嬢が何をしたか気付かないとでも?」
「なんの話でしょうか?」
「秘密でいっぱいで……実に困ったお嬢さんだ」
なんとなくだけど月光さんの声が弾んでいた。
その後、高笑いしながら歩く爺さんとその隣で苦笑いをするエルさんと合流する。
例の賭けの結果は爺さんの態度から分かったけど、一応尋ねる。
「レシピの登録はいかがでしたか?」
「私の完全勝利だ。メリル殿の驚いた顔をお主にも見せてやりたかった。椅子から転げ落ちそうになっておったぞ」
メリルさんの反応は爺さんの誇張だと思うけど、無事にウニの価値が認められたのは嬉しい。細々としたレシピの登録は、午後にエルさんが行ってくれるということだった。
グーッとお腹が鳴る。
「お腹が空きました」
「お主の腹の虫は休むことを知らないな。この辺に貝のスープが旨い店があった」
「それは、美味しそうですね!」
「エル、サリも連れて全員で食事をするぞ」
上機嫌な爺さんは、今にも踊り出しそうに貝のスープの店へと向かった。
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