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本編
お誘い
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次の日の朝、脱衣所でお風呂に入る準備をする。朝風呂だ。
タオル一枚で鏡を眺めながら唸る。
「思ったよりも色落ちが早い……」
髪の色が確実に明るくなってきている。
昨日は、アジュールの商業ギルドの訪問後、絶品の貝のスープを食べて帰宅したのはいいんだけど……キースな月光さんに髪の色が薄くなっていることを軽く指摘された。
爺さんは、目が悪いのか「前からそんな色だろ」と言っていたけど……気付く人は気付き始めそうだ。
金色寄りの髪は貴族に多いという。まぁ、実際には私のような平民にもその色合いが出ているので……一概にはそうとは言えない。でも、そのことで変に目立つことのないようにと髪を染めている。ずいぶんと長く髪を染めていたせいか、この赤茶色が私の中では標準色となっている。
「髪の色を染めるか……」
マリッサが持たせてくれた染粉を袋から取り出す。粉は水と混ぜるだけだから、使用方法はさほど難しくない。
水に混ぜた染粉を髪に塗っていく。緑色の染粉はいつ見ても怪しい。頭の後ろの難しい部分は風魔法を使い、満遍なく塗っていく。
「こんなもんかな」
いつもの緑髪のお化けが出来上がる。見た目は完全にあれだね……商業ギルドに巻貝……
髪が染まるまで時間がある。お風呂は洗い場と深めの桶があるくらいだけど、脱衣所のほうが豪華な鏡と洗面所がある。一般家庭では、こういう風呂場はない。猫亭でもほしい……一体いくらぐらいするのだろう? お風呂の蛇口からはお湯が出るので、何か魔道具が関係しているのだと思う。
髪が染まるまではまだまだ時間があるので、植物魔法で遊ぶ。
自分の知っている植物を出していく。猫亭の裏庭で見かけた小さな白い花やジゼルさんが好きな紫陽花に似た植物が風呂場に咲く。調子に乗って白、黄色、赤、青、紫、それからピンク色の紫陽花を咲かせてみる。
「色の種類まで自由自在って……魔法って本当になんでもありだよね」
これって、もしかして前世の植物も出せる?
こちらで見かけたことのない椿を想像しながら念じると、紫陽花よりも多めの魔法が消費されたのが伝わる。
目を開けてみれば、立派な椿の木と赤い花が開花していた。
椿の花を軽く触る。
「本当に椿の花だ……凄い」
想像上の植物が作れるのなら、なんでも行けるのじゃ?
好奇心から、ファンタジーの醍醐味である世界樹を連想しながら念じてみたが、何も現れなかった。
もしかして、私が見たことないだけで椿はこの世界にも存在しているのかもしれない。
(考えなしで世界樹を出そうとしたけど……実際に世界樹が現れていたら、爺さんの家を破壊していたかも……)
爺さんがブチ切れた顔を想像しながらブルッと震えた。
土魔法などは、それぞれの個体の大きさを調整しながら出せるけど、植物魔法は実物の大きさで現れる。
「植物魔法は気を付けないと」
植物を全て消し、髪を洗い流した。
乾かした髪の染まり具合に満足しながらリビングに向かうと、私がお風呂に入っている間に来たのだろう、ウィルさんがいた。
爺さんを見れば、困った表情でテーブルの上にある豪華な手紙を見ていた。
「ウィルさん、おはようございます!」
「ああ、おはよう……」
ウィルさんが私の頭を凝視しながら言う。
「何か頭についていますか?」
「いや、今日は髪が……綺麗だな」
艶々になるまで髪を梳いた甲斐があるけど『今日は』は余計だ。
「それで、本日はどうされたのですか? 特に出掛ける予定はなかったと思うのですけど」
「今日は、オーレリア王女様からのお茶会の招待状を持ってきた」
「え? 王女様ですか?」
確かにアズール商会ではお近づきになったけど……お茶会などは貴族の催しだ。ジョーのお母さんのステファニーさんに呼ばれるなら、家族だから理解はできるけど……王女様のお茶会に他国の幼女を招待する理由は何?
きょとんとしていると、ウィルさんにジト目で見られる。
「自覚はあるのか?」
「へ? 自覚ですか?」
ウィルさんがため息をつきながら、目の前に立つ。
「ミリーは王女様に相当気に入られたようだ……」
「そうなんですか?」
「故郷にいる妹君とミリーを重ねているようだ」
そういえば、私と同い年の妹がいると言っていた。オーレリア王女は悪い人じゃないと思うし、チョコレート関係のこともあるしお近づきになるのはやぶさかではないけど……爺さんの顔をそっと覗くと、眉間に皺が寄っていた。
タオル一枚で鏡を眺めながら唸る。
「思ったよりも色落ちが早い……」
髪の色が確実に明るくなってきている。
昨日は、アジュールの商業ギルドの訪問後、絶品の貝のスープを食べて帰宅したのはいいんだけど……キースな月光さんに髪の色が薄くなっていることを軽く指摘された。
爺さんは、目が悪いのか「前からそんな色だろ」と言っていたけど……気付く人は気付き始めそうだ。
金色寄りの髪は貴族に多いという。まぁ、実際には私のような平民にもその色合いが出ているので……一概にはそうとは言えない。でも、そのことで変に目立つことのないようにと髪を染めている。ずいぶんと長く髪を染めていたせいか、この赤茶色が私の中では標準色となっている。
「髪の色を染めるか……」
マリッサが持たせてくれた染粉を袋から取り出す。粉は水と混ぜるだけだから、使用方法はさほど難しくない。
水に混ぜた染粉を髪に塗っていく。緑色の染粉はいつ見ても怪しい。頭の後ろの難しい部分は風魔法を使い、満遍なく塗っていく。
「こんなもんかな」
いつもの緑髪のお化けが出来上がる。見た目は完全にあれだね……商業ギルドに巻貝……
髪が染まるまで時間がある。お風呂は洗い場と深めの桶があるくらいだけど、脱衣所のほうが豪華な鏡と洗面所がある。一般家庭では、こういう風呂場はない。猫亭でもほしい……一体いくらぐらいするのだろう? お風呂の蛇口からはお湯が出るので、何か魔道具が関係しているのだと思う。
髪が染まるまではまだまだ時間があるので、植物魔法で遊ぶ。
自分の知っている植物を出していく。猫亭の裏庭で見かけた小さな白い花やジゼルさんが好きな紫陽花に似た植物が風呂場に咲く。調子に乗って白、黄色、赤、青、紫、それからピンク色の紫陽花を咲かせてみる。
「色の種類まで自由自在って……魔法って本当になんでもありだよね」
これって、もしかして前世の植物も出せる?
こちらで見かけたことのない椿を想像しながら念じると、紫陽花よりも多めの魔法が消費されたのが伝わる。
目を開けてみれば、立派な椿の木と赤い花が開花していた。
椿の花を軽く触る。
「本当に椿の花だ……凄い」
想像上の植物が作れるのなら、なんでも行けるのじゃ?
好奇心から、ファンタジーの醍醐味である世界樹を連想しながら念じてみたが、何も現れなかった。
もしかして、私が見たことないだけで椿はこの世界にも存在しているのかもしれない。
(考えなしで世界樹を出そうとしたけど……実際に世界樹が現れていたら、爺さんの家を破壊していたかも……)
爺さんがブチ切れた顔を想像しながらブルッと震えた。
土魔法などは、それぞれの個体の大きさを調整しながら出せるけど、植物魔法は実物の大きさで現れる。
「植物魔法は気を付けないと」
植物を全て消し、髪を洗い流した。
乾かした髪の染まり具合に満足しながらリビングに向かうと、私がお風呂に入っている間に来たのだろう、ウィルさんがいた。
爺さんを見れば、困った表情でテーブルの上にある豪華な手紙を見ていた。
「ウィルさん、おはようございます!」
「ああ、おはよう……」
ウィルさんが私の頭を凝視しながら言う。
「何か頭についていますか?」
「いや、今日は髪が……綺麗だな」
艶々になるまで髪を梳いた甲斐があるけど『今日は』は余計だ。
「それで、本日はどうされたのですか? 特に出掛ける予定はなかったと思うのですけど」
「今日は、オーレリア王女様からのお茶会の招待状を持ってきた」
「え? 王女様ですか?」
確かにアズール商会ではお近づきになったけど……お茶会などは貴族の催しだ。ジョーのお母さんのステファニーさんに呼ばれるなら、家族だから理解はできるけど……王女様のお茶会に他国の幼女を招待する理由は何?
きょとんとしていると、ウィルさんにジト目で見られる。
「自覚はあるのか?」
「へ? 自覚ですか?」
ウィルさんがため息をつきながら、目の前に立つ。
「ミリーは王女様に相当気に入られたようだ……」
「そうなんですか?」
「故郷にいる妹君とミリーを重ねているようだ」
そういえば、私と同い年の妹がいると言っていた。オーレリア王女は悪い人じゃないと思うし、チョコレート関係のこともあるしお近づきになるのはやぶさかではないけど……爺さんの顔をそっと覗くと、眉間に皺が寄っていた。
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