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本編
船の見学
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スケッチが終わると、メリルさんの部下だというチャールズさんという男性が現れ商業ギルドの船へと案内された。
商業ギルドの船はいくつもあり、その中の一つで一番真新しい船へと案内された。
船へ搭乗するタラップにチャールズさんが足を掛け、手を差し延ばす。
「足元が不安定なので気を付けてくださいね」
タラップに足を掛け、ぴょんと飛び船に乗る。ラジェと月光さんも後に続いた。
船の上は……思ったより安定しているけど、微かに揺れている感覚がする。ラジェは、それが初めての感覚のようで真顔になっていた。
キースな月光さんは普通――って一センチくらい浮遊している! 人前で魔法を使うなと言った人とは思えない。キースな月光さんに特大ジト目を送る。
チャールズさんが船の説明を始めた。興味深いことも多かったけど、たぶん子供に説明するには詳しすぎる内容だ。私もラジェもきちんと聞いていたけど、普通の子供ならそろそろ眠くなっている。
細々とした船の設備の説明を終えたチャールズさんがハッとする。
「申し訳ない。つい、語り過ぎた。船尾楼甲板に向かいましょう」
船尾楼甲板に向かうと大きな木製のハンドルがあった。たぶん一メートル以上ある。これで舵取りをしているのだろう。
「触ってみますか?」
「いいんですか!」
「ええ。大丈夫ですよ」
チャールズさんに抱っこされハンドルの天辺を握る。なんだか船乗りの気分だ。
ラジェも船長体験をする。美少年のキラキラ笑顔が眩しい。
船長体験も終了したところで、チャールズさんが尋ねる。
「以上が船の見学になりますが、何か気になったことはありますか?」
「船の横にいくつかある窓はなんでしょうか?」
「あれは、魔法口です。航海中に魔物や……海賊などを撃退するためにあそこから魔法の攻撃や魔砲丸を飛ばします」
「魔砲丸! それは見ることができますか?」
「すみません。危ないので……」
残念だけど仕方ない。魔砲丸というものが存在していることだけでも分かったからよしとする。しかし、海賊もいるのか……
「海賊は多いのですか?」
「そんなに多くはありませんよ。稀に……でしょうか」
なんだかチャールズさんが言葉を選んで答えるような気がする。貨物船は大量に商品を輸送している。襲えば、どれもそれなりに当たりだ。頻繁でなくとも、魔砲丸を備えるくらいはいるということだと思っておこう。
ちなみに魔物は定期的に現れるらしいが、一番迷惑なのは鳥の魔物だという。上から特攻して帆布や甲板などに穴を開けるという。また、大きいサイズの魔物の話のような気がする。
船を下り、案内してくれたチャールズさんにラジェと二人でお礼をする。
「「ありがとうございました!」」
「いえいえ、こうやって子供たちに船のことを説明する機会はないので、自分も楽しかったです」
チャールズさんに手を振り別れた。いい人だったな。
「楽しかったね。ラジェはどうだった?」
「僕も楽しかった」
結局、景色と船の見学で二時間くらい時間を使ったと思う。
昼食の時間まであと少しだ。昼食は爺さんと食べる約束をしているので、ここで船のスケッチをしながら爺さんを待つことにした。
ラジェが少しウズウズしながら言う。
「もう少し近くで船を見てきてもいいかな?」
「うん。私はここにいるね」
ラジェが船を見ている姿をスケッチに組み込む。
隣に座ったキースな月光さんが、スケッチを眺めながら言う。
「その才能だけも一生食べていけそうだ」
「いつか本当のキースも描きたいです」
「気が向いたらお願いするよ」
ラジェが知らない船乗り風の二人組に声を掛けられているのが見えた。
「あれ、大丈夫かな?」
「ああ、船乗りが砂の国に訪問したことある話をしているだけだ。ただの世間話だ」
「なら、心配ないですね」
月光さん、ここからラジェたちの会話を聞き取れるんだ。風魔法の応用っぽいけどやり方が分からない。魔力はたぶん私のほうが多いけど、こういうところは月光さんには敵わないな。
それからスケッチに集中していると、ラジェとは別の知らない船乗りが私にも声を掛けてきた。まだ十代に見える幼い顔をしている青年だった。
「嬢ちゃん、凄いな。まるで画家だ」
「ありがとうございます」
「その描いている船、俺たちの船だ」
隣に座っているキースな月光さんは特に青年を止めないので、話しても問題はなさそうだ。
船乗りは社交的な人が多いのかもしれない。ラジェはまだ先ほどの船乗りの人たちと何か楽しそうに話している。
青年が航海してきた船は、周りの船より一回り大きかった。貨物船だけど、乗客も乗せるという。
「いい船ですね」
「ああ、俺もまだあの船に乗れているなんて信じられない」
青年からダニエルと自己紹介された。ダニエルさんは、昨日アジュールに到着したという。今回が船乗りになって初めての航海らしくかれこれ二か月ほどほとんど海の上で生活しているという、フレンドリーな青年だ。昨晩は飲み過ぎたようで、ダニエルさんは少し体調が悪そうにしていた。
「アジュールには何日滞在するのですか?」
「一週間? いや、十日かもしれない……その辺はまだ決まっていないのさ」
ダニエルが隣に座ると、少し息切れをしているような気がした。
「大丈夫ですか?」
「ん? ああ」
なんだか相当疲れているようだ。でも、ダニエルさんはまだ若い。これってもしかして壊血病の初期症状では?
月光さんすら気付かないヒールをダニエルさんに掛けたが、体調はそんなに良くならなかった。ヒールで治らないということは、ますます壊血病の疑いが強まる。ヒールは万能ではない。ビタミンCまでヒールで補うことはできないという話だ。
壊血病は知られていない病気なの? こんな立派な船で航海しているのにそんなことはないと思うのだけど……
商業ギルドの船はいくつもあり、その中の一つで一番真新しい船へと案内された。
船へ搭乗するタラップにチャールズさんが足を掛け、手を差し延ばす。
「足元が不安定なので気を付けてくださいね」
タラップに足を掛け、ぴょんと飛び船に乗る。ラジェと月光さんも後に続いた。
船の上は……思ったより安定しているけど、微かに揺れている感覚がする。ラジェは、それが初めての感覚のようで真顔になっていた。
キースな月光さんは普通――って一センチくらい浮遊している! 人前で魔法を使うなと言った人とは思えない。キースな月光さんに特大ジト目を送る。
チャールズさんが船の説明を始めた。興味深いことも多かったけど、たぶん子供に説明するには詳しすぎる内容だ。私もラジェもきちんと聞いていたけど、普通の子供ならそろそろ眠くなっている。
細々とした船の設備の説明を終えたチャールズさんがハッとする。
「申し訳ない。つい、語り過ぎた。船尾楼甲板に向かいましょう」
船尾楼甲板に向かうと大きな木製のハンドルがあった。たぶん一メートル以上ある。これで舵取りをしているのだろう。
「触ってみますか?」
「いいんですか!」
「ええ。大丈夫ですよ」
チャールズさんに抱っこされハンドルの天辺を握る。なんだか船乗りの気分だ。
ラジェも船長体験をする。美少年のキラキラ笑顔が眩しい。
船長体験も終了したところで、チャールズさんが尋ねる。
「以上が船の見学になりますが、何か気になったことはありますか?」
「船の横にいくつかある窓はなんでしょうか?」
「あれは、魔法口です。航海中に魔物や……海賊などを撃退するためにあそこから魔法の攻撃や魔砲丸を飛ばします」
「魔砲丸! それは見ることができますか?」
「すみません。危ないので……」
残念だけど仕方ない。魔砲丸というものが存在していることだけでも分かったからよしとする。しかし、海賊もいるのか……
「海賊は多いのですか?」
「そんなに多くはありませんよ。稀に……でしょうか」
なんだかチャールズさんが言葉を選んで答えるような気がする。貨物船は大量に商品を輸送している。襲えば、どれもそれなりに当たりだ。頻繁でなくとも、魔砲丸を備えるくらいはいるということだと思っておこう。
ちなみに魔物は定期的に現れるらしいが、一番迷惑なのは鳥の魔物だという。上から特攻して帆布や甲板などに穴を開けるという。また、大きいサイズの魔物の話のような気がする。
船を下り、案内してくれたチャールズさんにラジェと二人でお礼をする。
「「ありがとうございました!」」
「いえいえ、こうやって子供たちに船のことを説明する機会はないので、自分も楽しかったです」
チャールズさんに手を振り別れた。いい人だったな。
「楽しかったね。ラジェはどうだった?」
「僕も楽しかった」
結局、景色と船の見学で二時間くらい時間を使ったと思う。
昼食の時間まであと少しだ。昼食は爺さんと食べる約束をしているので、ここで船のスケッチをしながら爺さんを待つことにした。
ラジェが少しウズウズしながら言う。
「もう少し近くで船を見てきてもいいかな?」
「うん。私はここにいるね」
ラジェが船を見ている姿をスケッチに組み込む。
隣に座ったキースな月光さんが、スケッチを眺めながら言う。
「その才能だけも一生食べていけそうだ」
「いつか本当のキースも描きたいです」
「気が向いたらお願いするよ」
ラジェが知らない船乗り風の二人組に声を掛けられているのが見えた。
「あれ、大丈夫かな?」
「ああ、船乗りが砂の国に訪問したことある話をしているだけだ。ただの世間話だ」
「なら、心配ないですね」
月光さん、ここからラジェたちの会話を聞き取れるんだ。風魔法の応用っぽいけどやり方が分からない。魔力はたぶん私のほうが多いけど、こういうところは月光さんには敵わないな。
それからスケッチに集中していると、ラジェとは別の知らない船乗りが私にも声を掛けてきた。まだ十代に見える幼い顔をしている青年だった。
「嬢ちゃん、凄いな。まるで画家だ」
「ありがとうございます」
「その描いている船、俺たちの船だ」
隣に座っているキースな月光さんは特に青年を止めないので、話しても問題はなさそうだ。
船乗りは社交的な人が多いのかもしれない。ラジェはまだ先ほどの船乗りの人たちと何か楽しそうに話している。
青年が航海してきた船は、周りの船より一回り大きかった。貨物船だけど、乗客も乗せるという。
「いい船ですね」
「ああ、俺もまだあの船に乗れているなんて信じられない」
青年からダニエルと自己紹介された。ダニエルさんは、昨日アジュールに到着したという。今回が船乗りになって初めての航海らしくかれこれ二か月ほどほとんど海の上で生活しているという、フレンドリーな青年だ。昨晩は飲み過ぎたようで、ダニエルさんは少し体調が悪そうにしていた。
「アジュールには何日滞在するのですか?」
「一週間? いや、十日かもしれない……その辺はまだ決まっていないのさ」
ダニエルが隣に座ると、少し息切れをしているような気がした。
「大丈夫ですか?」
「ん? ああ」
なんだか相当疲れているようだ。でも、ダニエルさんはまだ若い。これってもしかして壊血病の初期症状では?
月光さんすら気付かないヒールをダニエルさんに掛けたが、体調はそんなに良くならなかった。ヒールで治らないということは、ますます壊血病の疑いが強まる。ヒールは万能ではない。ビタミンCまでヒールで補うことはできないという話だ。
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