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本編
張り付くスパイ・ミリアナ
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船倉の出入り口を使えば、見つかってしまう可能性が高い。前に使った黒魔法の隠れ蓑の術もあるけど、魔力の消費が激しいし、物理的に誰かにぶつかれば見つかってしまう。
高い位置にある夕陽の入る小窓を見上げ、口角を上げる。あそこからなら船の側面に出られる。
風魔法で浮遊し、小窓を押す。小窓の隙間に身体を押し込んで――
「あ、お尻が引っかかった! ぐぬぬ」
スポンッと抜け、風魔法で飛びながら外へと出る。船に張り付きながら辺りを確認、ここは船の後部のようだ。
「出られたのはいいけど、海がすぐそこで怖い」
船の側面が波に叩かれるたびに、大量の水しぶきが上がる。
船尾からアジュールの街を捉える。まだ、そこまで離れていない。でも、港口には以前見た時よりも遥かに大量の船が渋滞しているように思う。よく見れば何隻かからは煙が上がっていた。
このまま飛んで助けを――ううん、そんなことをしていたらこの船を見失う。そんな時間はない。自分でラジェとオーレリア王女を救出しないと。
船首に向かいながら、小窓を確認していくと魔法口を発見する。合計十個の魔法口、ハッチを開けて中に入ると固定された丸い玉がびっしりと壁沿いに並んでいた。商業ギルドの船では危ないからと見せてもらえなかった魔砲丸だと思う。
「これが十か所……」
こんなに積んでいるものなの? この船は拉致犯に加担しているので、ただの商業船じゃないのかもしれない。
念のために魔法口のハッチは金属魔法で捻出した鉄を使い、完全に閉じた。
他の小窓は誰もいない部屋が多かったけど、比較的大きな窓を覗くとリュヤさんと伯爵邸であったカステロ大臣がいた。大臣が窓際に歩いてきたので、急いで窓の上の船体に張り付く。
今の状況、すごくスパイみたいでドキドキする。
窓が開くと大臣が酒のグラスを回しながら言う。
「無事、計画通りだな」
「計画通りではない。貴様が遅れたせいで、仲間を見捨てなければならなかった」
「こちらはあの男爵の足止めをしていたのだ。仲間の数人くらい犠牲になることは覚悟していたであろう。そう、睨むな。それより私の金の切符はどうしている?」
「オーレリア様なら一日以上目を覚まさない」
「さすが貴殿の国の薬だな。あの生意気な姫の絶望した顔を早く見たいものだ」
「下衆が……失礼する」
リュヤさんがいなくなると、大臣が楽しそうに笑う。
「ようやく私の時代が来たのだ」
すぐ大臣も去ったので、その隣の部屋を覗けばオーレリア王女と年輩の侍女さんを発見する。窓から侵入、二人に駆け寄る。
二人の腕には魔石の付いた枷が付けられていた。枷に触れると魔力を吸われたので、魔力で押し返すと粉々に崩れ落ちた。これ、なんだったんだろう……
とにかく二人を起こそう。
「オーレリア王女、起きてください」
何度か二人を揺すったが、全く起きない。さっきの会話で薬の有効期限が一日以上あるって言っていたのを思い出す。
あれ、でもそしたら私はなんで目覚めているの?
「あ、ヒールか……」
夢の中で放ったヒールだが、あれを現実にも使っていたんだ。夢遊病ならぬ夢魔病なんちゃって……ってそんな冗談をいっている暇はない。
オーレリア王女と年輩の侍女にヒールを掛ける。すると、二人ともゆっくりと目を開けた。
「ここ……は?」
「オーレリア王女、おはようございます」
「ミリアナ? え?」
オーレリア王女が跳ねるように起き、窓の外を確認、即座に状況を理解したようだ。
「海の上……図られたわ。ばあや、わたくしはリュヤに裏切られたのかしら」
「現状……そうだと考えます」
「リュヤが一人でこんな船を手配できるはずはないわ……」
オーレリア王女が難しい顔をする中、手を上げる。
「カステロ大臣という人が加担しています。さっき二人が話しているのを聞きました」
「カステロ大臣が! いや、そうね……それならばこの船は我が国の敵地に向かっているのね」
オーレリア王女が、途中から私に分からないように帝国語でばあやさんに伝えた。全て伝わっているけど、知らないフリをする。
思ったよりオーレリア王女は冷静だ。さすが王族というところなのかもしれない。中身が大人の私でも今の状況に内心は焦っている。
オーレリア王女が私の手を握る。
「ミリアナ、怖かったでしょう? 巻き込んでしまって……」
「私は……大丈夫です! でも、ラジェがいなくて」
「砂の国の子ね。あの貪欲な大臣のことだからきっと一緒に連れてきているわ。きっと大丈夫――っ」
ドアの鍵が外れる音と共に開くと、世話係のメイドだろう女性が立っていた。目を大きく見開き今にも叫びそうになるメイドの周りを咄嗟に黒魔法で囲み音を遮断する。
叫んだが、音が出ないことに困惑と恐怖の顔で硬直していたメイドをばあやさんが急いで土魔法で拘束した。メイドは口元まで土魔法で覆われたので、黒魔法をサッと消す。
オーレリア王女がばあやさんに駆け寄る。
「ばあや、お手柄ね」
「いえ……」
ああ、ばあやさんの視線が痛い。オーレリア王女は黒魔法に気付かなかったみたいだけど、ばあやさんは完全に気が付いている。
高い位置にある夕陽の入る小窓を見上げ、口角を上げる。あそこからなら船の側面に出られる。
風魔法で浮遊し、小窓を押す。小窓の隙間に身体を押し込んで――
「あ、お尻が引っかかった! ぐぬぬ」
スポンッと抜け、風魔法で飛びながら外へと出る。船に張り付きながら辺りを確認、ここは船の後部のようだ。
「出られたのはいいけど、海がすぐそこで怖い」
船の側面が波に叩かれるたびに、大量の水しぶきが上がる。
船尾からアジュールの街を捉える。まだ、そこまで離れていない。でも、港口には以前見た時よりも遥かに大量の船が渋滞しているように思う。よく見れば何隻かからは煙が上がっていた。
このまま飛んで助けを――ううん、そんなことをしていたらこの船を見失う。そんな時間はない。自分でラジェとオーレリア王女を救出しないと。
船首に向かいながら、小窓を確認していくと魔法口を発見する。合計十個の魔法口、ハッチを開けて中に入ると固定された丸い玉がびっしりと壁沿いに並んでいた。商業ギルドの船では危ないからと見せてもらえなかった魔砲丸だと思う。
「これが十か所……」
こんなに積んでいるものなの? この船は拉致犯に加担しているので、ただの商業船じゃないのかもしれない。
念のために魔法口のハッチは金属魔法で捻出した鉄を使い、完全に閉じた。
他の小窓は誰もいない部屋が多かったけど、比較的大きな窓を覗くとリュヤさんと伯爵邸であったカステロ大臣がいた。大臣が窓際に歩いてきたので、急いで窓の上の船体に張り付く。
今の状況、すごくスパイみたいでドキドキする。
窓が開くと大臣が酒のグラスを回しながら言う。
「無事、計画通りだな」
「計画通りではない。貴様が遅れたせいで、仲間を見捨てなければならなかった」
「こちらはあの男爵の足止めをしていたのだ。仲間の数人くらい犠牲になることは覚悟していたであろう。そう、睨むな。それより私の金の切符はどうしている?」
「オーレリア様なら一日以上目を覚まさない」
「さすが貴殿の国の薬だな。あの生意気な姫の絶望した顔を早く見たいものだ」
「下衆が……失礼する」
リュヤさんがいなくなると、大臣が楽しそうに笑う。
「ようやく私の時代が来たのだ」
すぐ大臣も去ったので、その隣の部屋を覗けばオーレリア王女と年輩の侍女さんを発見する。窓から侵入、二人に駆け寄る。
二人の腕には魔石の付いた枷が付けられていた。枷に触れると魔力を吸われたので、魔力で押し返すと粉々に崩れ落ちた。これ、なんだったんだろう……
とにかく二人を起こそう。
「オーレリア王女、起きてください」
何度か二人を揺すったが、全く起きない。さっきの会話で薬の有効期限が一日以上あるって言っていたのを思い出す。
あれ、でもそしたら私はなんで目覚めているの?
「あ、ヒールか……」
夢の中で放ったヒールだが、あれを現実にも使っていたんだ。夢遊病ならぬ夢魔病なんちゃって……ってそんな冗談をいっている暇はない。
オーレリア王女と年輩の侍女にヒールを掛ける。すると、二人ともゆっくりと目を開けた。
「ここ……は?」
「オーレリア王女、おはようございます」
「ミリアナ? え?」
オーレリア王女が跳ねるように起き、窓の外を確認、即座に状況を理解したようだ。
「海の上……図られたわ。ばあや、わたくしはリュヤに裏切られたのかしら」
「現状……そうだと考えます」
「リュヤが一人でこんな船を手配できるはずはないわ……」
オーレリア王女が難しい顔をする中、手を上げる。
「カステロ大臣という人が加担しています。さっき二人が話しているのを聞きました」
「カステロ大臣が! いや、そうね……それならばこの船は我が国の敵地に向かっているのね」
オーレリア王女が、途中から私に分からないように帝国語でばあやさんに伝えた。全て伝わっているけど、知らないフリをする。
思ったよりオーレリア王女は冷静だ。さすが王族というところなのかもしれない。中身が大人の私でも今の状況に内心は焦っている。
オーレリア王女が私の手を握る。
「ミリアナ、怖かったでしょう? 巻き込んでしまって……」
「私は……大丈夫です! でも、ラジェがいなくて」
「砂の国の子ね。あの貪欲な大臣のことだからきっと一緒に連れてきているわ。きっと大丈夫――っ」
ドアの鍵が外れる音と共に開くと、世話係のメイドだろう女性が立っていた。目を大きく見開き今にも叫びそうになるメイドの周りを咄嗟に黒魔法で囲み音を遮断する。
叫んだが、音が出ないことに困惑と恐怖の顔で硬直していたメイドをばあやさんが急いで土魔法で拘束した。メイドは口元まで土魔法で覆われたので、黒魔法をサッと消す。
オーレリア王女がばあやさんに駆け寄る。
「ばあや、お手柄ね」
「いえ……」
ああ、ばあやさんの視線が痛い。オーレリア王女は黒魔法に気付かなかったみたいだけど、ばあやさんは完全に気が付いている。
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