転生したら捨てられたが、拾われて楽しく生きています。

トロ猫

文字の大きさ
119 / 158
本編

商店での買い物

しおりを挟む
 今晩の献立は、ウニのパスタだ。シンプルにウニの味が楽しめるパスタを目指している。主人公はウニなのだ。そこを忘れないようにしないといけない。
 商店の野菜エリアから物色する。芋や葉野菜、基本は王都と同じ野菜が並んでいた。この前食べたシーアスパラガスに似た野菜や何やら四角い豆、それから見たこともない果物も並んでいた。

「こんなにたくさんの商品が並んでいるのは初めて見るよ。これはなんだろう」

 ラジェが、大きな青いバナナのような果実を指差しながら尋ねる。
 未熟なバナナにしては、サイズも硬さも違和感がある。
 ラジェが興味を持ったバナナっぽいやつを含め、とりあえず見たことない野菜は果物を全部カゴに入れようとすれば、キースに止められる。

「一度に買わなくても、ここにはいつでも来ることができます」
「確かにそうですけど……どうしても味が気になって」
「果物類は、二つまでにしましょう。一人一つまでですよ」

 スーパーで『お菓子は一個まで』と言われる子供の気分だ。
どれにするか迷った結果……一番気になった刺々しい瓜のような丸い果物を手に取る。

「ラジェはどれにする」
「僕はこの緑の長い棒かな」

 ラジェがバナナっぽい果物を手に取りながら言う。

「私もそれ気になっていた!」

 どんな味がするのか楽しみだ。
 他に必要な野菜を籠に入れると、次に肉と魚のコーナーへと向かった。
 肉コーナーで最初に目に飛び込んできたものに驚く。

「大きなイカ……」

 キースの身長よりも大きい干しもののイカがそこにあった。もしかしてダイオウイカ?
 隣にいたラジェもイカに驚き、無言になる。
 キースが口角を上げながら言う。

「驚いたでしょう。あれは数年前に狩られた海の魔物キングクラーケンの幼体だそうです。ここの名物です」

 魔物! そして、あれで幼体! 

「「大きい……」」

 ラジェと声を合わせて言う。
 前に聞いた蜂の魔物はたまに子供を攫うってサイズだ。ここの魔物のサイズ感がおかしい! 
 キングクラーケンは売り物ではなくて、ただの飾りらしいがインパクトは凄い。

「キングクラーケンって美味しんですか?」
「……なんでも食べようとしないでください」
「そんな、なんでも食べようとは――」

 その後、言葉が詰まる。確かにここではゴミだと思われていたウニや天草を食べている。くっ、言い返せない。
 キースが軽く笑い答える。

「キングクラーケンは、残念ながらまずくて食べられたものじゃないそうです」

 そうなのか……残念。
 肉類を物色する。肉類は王都よりも種類が少ないような気がする。けれど、それを埋めるかのように海鮮がこれでもかってくらい置いてあった。

「あ、カニだ」
「本当だ。でも、この前のより小さいカニだね」

 レストランで食べたカニは格別に大きかった。目の前に並ぶカニは、先日食べた物に比べ確かに小さいけど……それでも私の両手に入らないほどの大きさだ。あー、カニ入りのウニのパスタとか美味しそう。ジュルリと涎が出る。

(ダメダメ。今日はシンプルにウニの美味しさを堪能するパスタを作るんだから)

 カニを見つめていたラジェが、ビクッと身体を揺らしながら言う。

「カニが動いたよ!」
「活きがいいね。おっと!」

 横歩きしながら陳列棚から落下するカニをキャッチ、店員のお姉さんに返す。

「お嬢ちゃん、カニを捕まえてくれてありがとうね。お父さん、今晩の夕食にカニはいかがですか? 三つ買ってくれるなら、貝をおまけしますよ」

 お父さんと呼ばれたキースは一瞬真顔になったが、すぐに笑顔で返答する。

「お父さんではないですが、貝のおまけが付いているのなら買いましょう」
「はい!」

 店員のお姉さんが素早くカニ三杯と貝を包んでくれる。貝のザルにはお姉さんの手書きで『おまけ貝』と書いてあった。このカニの味も楽しみだ。
 それから牛乳やパスタにパルメザンチーズに似た硬いチーズを籠に入れた。
 重たくなってきた籠を持ちながらキーズが尋ねる。

「他に買い物はありますか?」
「あります! 一番重要なものが残っています!」

 砂糖だ。

「ああ、どうやら砂糖の袋売りは別の商会に行かないとないようです。私の記憶違いでした」
「そんなぁ!」
「その代わり、蜂蜜があったと思います」

 蜂蜜が並んでいる場所へ行くと、小分けされた蜂蜜が鍵の掛かった棚の中に入っていた。防犯なのか、蜂蜜や砂糖を使っただろう食べ物は全て収監されていた。これが、一般市民と砂糖様の立ち位置なのだ。
 砂糖が高級品すぎる!
 棚のガラスに張り付いて蜂蜜を物色する。

「うーん。一つ、銅貨八枚か……」

 王都のアズール商会で買った蜂蜜は一瓶で銀貨二枚だった。これはそれの三割程度の量だ。量が少なく少し割高だけど、仕方ない。

「この蜂蜜を下さい!」

 店員を呼び、蜂蜜をシャバの世界へ出してもらう。
 店員がいる間、ラジェに尋ねる。

「ラジェは他に欲しい甘いものはないの?」
「う、うん、大丈夫」

 ラジェが私の後ろの棚から目を逸らしながら言う。振り向けば、そこにはローズの蕾とラベルの張ってある瓶詰めのジャムがあった。美味しそうだけど……これ、銅貨五枚もするんだ。砂糖も入っているのだろうから高いのか。

「ラジェ、これがほしいの?」
「ううん。僕は大丈夫だよ」

 いや、ラジェはさっきジッとこれを見ていた。
 普段使いならお高いから買わないかもしれないけど、今日は爺さんからもらった軍資金があるのだ! 自分たちのお楽しみに九割食べたとしても、一割でもローズジャムの試作品にねじ込んで、用途を無理やり作ればいいのだ!

「すみません! このローズの蕾も下さい!」

 その後、ホクホク顔で会計へと並んだ。

しおりを挟む
感想 494

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

【完結】これをもちまして、終了とさせていただきます

楽歩
恋愛
異世界から王宮に現れたという“女神の使徒”サラ。公爵令嬢のルシアーナの婚約者である王太子は、簡単に心奪われた。 伝承に語られる“女神の使徒”は時代ごとに現れ、国に奇跡をもたらす存在と言われている。婚約解消を告げる王、口々にルシアーナの処遇を言い合う重臣。 そんな混乱の中、ルシアーナは冷静に状況を見据えていた。 「王妃教育には、国の内部機密が含まれている。君がそれを知ったまま他家に嫁ぐことは……困難だ。女神アウレリア様を祀る神殿にて、王家の監視のもと、一生を女神に仕えて過ごすことになる」 神殿に閉じ込められて一生を過ごす? 冗談じゃないわ。 「お話はもうよろしいかしら?」 王族や重臣たち、誰もが自分の思惑通りに動くと考えている中で、ルシアーナは静かに、己の存在感を突きつける。 ※39話、約9万字で完結予定です。最後までお付き合いいただけると嬉しいですm(__)m

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。