転生したら捨てられたが、拾われて楽しく生きています。

トロ猫

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本編

 茶わん蒸しの容器を洗い終わると、ところてんの出来具合を確認した。

「良かった。ちゃんと固まってきている」

 ところてんは思っていたよりも多くできた。六個の器の全部を氷室に入れることはできないので、氷室には一つだけ入れ、残りは粉状にする。
 エルさんが、ところてんを軽く触りながら言う。

「これがお嬢様の作りたかったものですか? このように固まるとは……不思議です」
「これは体にもいいんですよ」
「そうなのですか?」
「う、うん。だって、海をギュッと詰めた雫だから、体に良いはずです」

 確かミネラル豊富でローカロリーだけでなく、便秘改善にも役立つと聞いたことがある。その説明をしても、なんでそんなことを知っているのかと問われそう。なので、子供っぽく曖昧に誤魔化した。
 問題は味付けだ……酢醤油とか美味しんだけど、ここには醤油がない! 何か別の味付けを考えないといけない。牛乳寒天とか作ってもいいかも。それにはやはり砂糖を手に入れないと。
 エルさんが台所の片付けの残りをやってくれている間、ところてんを氷魔法で冷やし、氷室に入れた。
氷室に入らない分を裏庭に持っていき、凍らせる作業を開始する。天日干しして乾かしたいけど、ここの気候はそこまで寒くない。
 ところてんをザルに乗せ水気を切ると、氷魔法で完全に凍結させた。その後、風魔法と氷魔法を融合した冷風魔法で乾燥する。凍結と乾燥を繰り返して行くと、その内、ところてんがカラカラに乾燥してザルにこびりついた状態になった。

(思ったより早くできてしまった)

 ペリッとところてんをザルから剥き、乾燥度合いを確認する。いい感じだ。
本来ならここまで乾燥するのに四、五日は掛かる。魔法って本当にチートだよね。
乾燥したとところてんを風魔法でミキサー、粉末状にしてから麻袋に入れた。
これ、エルさんにはどう説明するかな……とりあえず日陰に干して混ぜたと数日後に伝えよう。
 粉寒天の用途はたくさんある。今日はウニに集中するけど、天草をゴミだと言った爺さんをぎゃふんと言わせる予定だ。
爺さんの驚いた顔を想像しながらグフフと笑い、家の中に戻るとラジェと月光さん扮するキースが帰ってきた。

「おかえり! あれ、ラジェ、肘を怪我してるよ」
「本当だ。気付かなかった」

 小さな掠り傷だったけど、ヒールで治す。

「転んだの?」
「少しだけ」

 ラジェが隣を見上げると、代わりにキースが答える。

「今日は、ラジェに魔法の使い方を教えておりました」
「そうなんですか」

 月光さんは魔法に長けているけど、使うのは風魔法だ。ラジェは砂と水魔法の使い手だけど……どんなことを教えたんだろう。気になる。

「後から出来るようになった魔法をミリーちゃんに見せるね」
「本当? 楽しみ」

 ラジェは笑顔だし、月光さんの魔法講座は楽しかったようだ。キースを見上げると、ほんの少し口角が上がっていたので、月光さんも楽しんだようだ。
 外はまだ夕方前だ。買い物に行くにはまだ時間があったので、ラジェとキースと共にエルさんが出してくれた馬車に乗る。
 今回は以前訪れた近所の店ではなく、馬車でニ、三十分ほど行った場所にある商店に向かった。
 馬車から降り、店を見上げる。

「結構大きな店ですね」
「オーディン商会が経営する商店です。アジュールに三店舗ほどあります」

 キースが説明するには、ここは庶民派の商店らしいが貴族の使用人も買い物に来るらしい。そのせいか、馬車を駐車するスペースが備えられていた。

「砂糖もありますか?」
「あると思いますよ」

 やったね。
 馬車の留守番をエルさんに頼み、三人でオーディン商店に入る。
 商店の中は、まるで前世のスーパーのようだった。店内は野菜売り場、魚肉売り場、それからドライフード売り場に分かれていた。店員はみな、同じエプロンを着けており清潔感もあった。なんだか、王都よりも進んでいるような気がする。王都は穀物を取り扱う商店以外は、小さな店が多い。立地の問題なのかもしれないけど……王都の家賃は高い。
 店員に笑顔で籠を渡される。

「お買い物にお使いください」
「ありがとうございます」

 これで店のテーマソングが延々ループで流れていたら、完全に前世と同じスーパーだ。
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