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本編
にゃ!
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別邸に戻ると、仕事の終わった爺さんがソファで白ワインを呑みながらくつろいでいた。風雅だ。
「戻ったか。買い物は問題なかった?」
「砂糖はありませんでしたが、その他の食材は問題なく買えました」
「砂糖か。そうであるな。明日はアズール商会に行ってみるか?」
「行きます!」
アジュール出身のアズール商会、ここでは一番に有名な商会だという。楽しみだ。
エルさんとラジェと共に夕食の準備をする。
キースは何か爺さんと話があるようで、二人で執務室へとこもった。
エルさんが今日買った素材を並べながら尋ねる。
「何から取り掛かればよろしいでしょうか?」
「まずはハズレ針の処理からですね」
三人で黙々と六人分のウニの処理をする。ラジェは少し慣れたのか、以前よりも手際よくなっている。
橙色の宝石盛りができたところで、カニを茹でる。
シンプルなウニパスタは決定事項だ。でも、カニが手に入ったのだから何かカニの前菜かおつまみ的なレシピを考えている。
カニの身を解すと、このカニにはカニみそがあった。見た目は、ワタリガニのようだからカニみそもきちんと固まっている。カニの中でも、タラバガニや花咲ガニのようにヤドカリ類に分別されるものは茹でるとドロドロに溶けてしまう。何かの特集で前世に見た。
溶けてしまうカニみそは相当不味いと聞いたことがある。先日、カニ屋で食べた物は前世で言うヤドカリ類だったのだと思う。この説明を二人にするのは、なんだか私も良く分からないので今は割愛する。
カニの身を解す作業は思ったより時間が掛かった。
「これくらい取れればいいかな」
エルさんにカニみそを見せながら尋ねる。
「これは、この辺りではどう調理しているのですか?」
「これは普段は捨てております」
「あ……やっぱり」
なんとなくそう言われる覚悟はできていた。まぁ、見た目的な問題なのかもしれない。これを使って、見た目も抵抗ないレシピだと……ああ、そうだ。
「これを使ってバーニャカウダをつくります!」
「ばーにゃ、なんでしょうか?」
エルさんが首を傾げる。
「バーニャカウダです」
「ばうにゃっかうだですね」
エルさん、おしい。バーニャカウダです。
「ばうにゃかうだ?」
ラジェもそんな純粋な顔で……
エルさんとラジェが「にゃ」のところだけ誇張して言うのが可愛くて少し笑いそうになる。バーニャカウダは通常アンチョビで作るものだし、今から作るものには別名がいるようだ。
「カニのソースです」
「カニのソースですか! それは大変美味しそうだ」
かにみそのバーニャカウダから作る。クリームは買っていなかったので、即席のクリームを作る。バターを鍋で溶かしたものを、数回に分け冷たい牛乳に流し込むテンパリング作業を行う。テンパリングしたものを弱火にかける。
ラジェの足場も用意して、三人で鍋を見守る。
「沸騰しないように気をつけましょう!」
少し湯気が立ったら火から下ろし、混ぜる。とにかく混ぜる。この作業は大人のエルさんに任せる。
とろみの質感になったら出来上がりだ。
さて、クリームができたのでバーニャカウダを作る。
エルさんが買っていたオリーブオイルを拝借、コンロで温めたオリーブオイルにみじん切りにしたニンニクを入れ香りをつける。ここからハンドミキサー……がないのでエルさんが見ていない間にコッソリと風魔法でミキサーした。たぶん潰しながらもできると思うけど、手っ取り早く済ませた。同じ鍋にクリームを入れ、ラジェに混ぜてもらう。
「ミリーちゃん、これくらい混ぜればいいの?」
「うん。じゃあカニの旨いところを入れるね」
かにみそを投下、ちょっととろみがつくまででラジェの混ぜ混ぜタイムだ。
出来たものを容器に移すと、バーニャカウダもといカニのソースができる。一応先に軽く味見をしてみる。
「うん! いい!」
絶対お酒に合うやつだ!
切ったキャベツに似た葉に付け、ラジェに食べてもらう。
「どう?」
「野菜が美味しくなったよ」
「私も野菜に付けて食べる!」
確かに野菜がより美味しくなる。濃厚なこってりな味わいに仕上がっている。これは成功だね。ラジェにモグモグと野菜を食べていたら、エルさんに注意される。
「お二人とも、夕食の分がなくなってしまいますよ」
「「あ!」」
「戻ったか。買い物は問題なかった?」
「砂糖はありませんでしたが、その他の食材は問題なく買えました」
「砂糖か。そうであるな。明日はアズール商会に行ってみるか?」
「行きます!」
アジュール出身のアズール商会、ここでは一番に有名な商会だという。楽しみだ。
エルさんとラジェと共に夕食の準備をする。
キースは何か爺さんと話があるようで、二人で執務室へとこもった。
エルさんが今日買った素材を並べながら尋ねる。
「何から取り掛かればよろしいでしょうか?」
「まずはハズレ針の処理からですね」
三人で黙々と六人分のウニの処理をする。ラジェは少し慣れたのか、以前よりも手際よくなっている。
橙色の宝石盛りができたところで、カニを茹でる。
シンプルなウニパスタは決定事項だ。でも、カニが手に入ったのだから何かカニの前菜かおつまみ的なレシピを考えている。
カニの身を解すと、このカニにはカニみそがあった。見た目は、ワタリガニのようだからカニみそもきちんと固まっている。カニの中でも、タラバガニや花咲ガニのようにヤドカリ類に分別されるものは茹でるとドロドロに溶けてしまう。何かの特集で前世に見た。
溶けてしまうカニみそは相当不味いと聞いたことがある。先日、カニ屋で食べた物は前世で言うヤドカリ類だったのだと思う。この説明を二人にするのは、なんだか私も良く分からないので今は割愛する。
カニの身を解す作業は思ったより時間が掛かった。
「これくらい取れればいいかな」
エルさんにカニみそを見せながら尋ねる。
「これは、この辺りではどう調理しているのですか?」
「これは普段は捨てております」
「あ……やっぱり」
なんとなくそう言われる覚悟はできていた。まぁ、見た目的な問題なのかもしれない。これを使って、見た目も抵抗ないレシピだと……ああ、そうだ。
「これを使ってバーニャカウダをつくります!」
「ばーにゃ、なんでしょうか?」
エルさんが首を傾げる。
「バーニャカウダです」
「ばうにゃっかうだですね」
エルさん、おしい。バーニャカウダです。
「ばうにゃかうだ?」
ラジェもそんな純粋な顔で……
エルさんとラジェが「にゃ」のところだけ誇張して言うのが可愛くて少し笑いそうになる。バーニャカウダは通常アンチョビで作るものだし、今から作るものには別名がいるようだ。
「カニのソースです」
「カニのソースですか! それは大変美味しそうだ」
かにみそのバーニャカウダから作る。クリームは買っていなかったので、即席のクリームを作る。バターを鍋で溶かしたものを、数回に分け冷たい牛乳に流し込むテンパリング作業を行う。テンパリングしたものを弱火にかける。
ラジェの足場も用意して、三人で鍋を見守る。
「沸騰しないように気をつけましょう!」
少し湯気が立ったら火から下ろし、混ぜる。とにかく混ぜる。この作業は大人のエルさんに任せる。
とろみの質感になったら出来上がりだ。
さて、クリームができたのでバーニャカウダを作る。
エルさんが買っていたオリーブオイルを拝借、コンロで温めたオリーブオイルにみじん切りにしたニンニクを入れ香りをつける。ここからハンドミキサー……がないのでエルさんが見ていない間にコッソリと風魔法でミキサーした。たぶん潰しながらもできると思うけど、手っ取り早く済ませた。同じ鍋にクリームを入れ、ラジェに混ぜてもらう。
「ミリーちゃん、これくらい混ぜればいいの?」
「うん。じゃあカニの旨いところを入れるね」
かにみそを投下、ちょっととろみがつくまででラジェの混ぜ混ぜタイムだ。
出来たものを容器に移すと、バーニャカウダもといカニのソースができる。一応先に軽く味見をしてみる。
「うん! いい!」
絶対お酒に合うやつだ!
切ったキャベツに似た葉に付け、ラジェに食べてもらう。
「どう?」
「野菜が美味しくなったよ」
「私も野菜に付けて食べる!」
確かに野菜がより美味しくなる。濃厚なこってりな味わいに仕上がっている。これは成功だね。ラジェにモグモグと野菜を食べていたら、エルさんに注意される。
「お二人とも、夕食の分がなくなってしまいますよ」
「「あ!」」
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