最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職

鎌霧

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17章

447話 紳士協定

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 コロニーの脱出も完了。無事にデブリ帯に帰還、とは言えなかった。
 あの後コロニーに侵入して追撃してきたチーム、さらに言えば外で待機して漁夫を狙っていたチームとの挟み撃ちになり、結果的に5チームまとめての戦闘になった。何て言うかまあ、やたらと混戦だったうえに、とにかく戦闘が激化しすぎた。
 コロニー内に侵入してきたチームが非常に合理的だった。前がシールドを構えて後ろが撃つ。絶対に挟まれない様に立ち回り、とにかく前面への射撃を重視した、何ともわかりやすく高火力編成。下手に接近戦をしようとする奴もいないので、近づかれれば引いて撃ち。距離を取ればフルバースト。良かった点で言えばロックオン系兵器を持ってきて無かったって所かな。手持ち武器周りは無限リロード出来るのに、ロックオン出来る兵装に関しては残弾制限ありってのは、強力だからか。

 それとは対照的にコロニー外で待機していたのはがっつり接近戦を仕掛けてくる4人チームだった。柳生も中々に接近戦が強い奴だが、毛色が違った。こっちはがっつり侍のように、一撃を重く、装甲が薄い一撃必殺型なのに対して、西洋騎士のようなしっかりした一撃は鈍重で装甲が厚く長期戦想定って所よ。
 
 まあ、とにかくコロニーから脱出した瞬間に、西洋騎士の連中の襲撃を貰って軽くダメージを貰った後、コロニー外で後から脱出してきた元々戦っていた連中も飛び出してきて乱戦になるなんて考えてなかったわ。

『あー、もう……大分削られたし、直撃数発貰ったら落ちるかな』
『……某はさっきの戦い方が気に入らぬ』
『あー、あれ……勝負事に綺麗だの汚いだの言うのは二流でしょ』

 2人揃って1つのデブリに着地したまま、宇宙空間を漂っていると、ぽつりとそんな事を言われる。
 まあ、あの方法は気に入らないとは思うけど、負けるよりはずっと良い。

『組む時に言ったろ、勝ちたいって』
『ぬぅ、そうではあるが……』
『いつまでも気にしてちゃゲーム出来ないわよ』

 これがみんなで仲良く相手を倒しましょうって事ならまだ良いんだけど、ゲームルールがバトロワだからなあ。
 確かにまあ、コロニー内で先に戦っていた私らを含めた3チームで追加の2チームに対して一時的な共同戦線を張って、混戦を脱出、このまま互いに消耗し合わない紳士協定を結んだ。瞬間に後ろから残った2チーム2機を落としてやった。元々2機いたほうは離脱中に長距離砲を食らって吹っ飛んだのでたった2機落とすのくらい造作も無かった。大体紳士協定何て事を持ち出す奴はどのゲームでもアホか雑魚って相場が決まってるんだよ。

『だからと言ってだまし討ちや不意打ちはどうなんだ?』
『無様に背中見せる奴が悪いのよ、2チーム減ったから決勝に行ける確率上がったでしょ』
『うーぬ、うーむ……』
『そんなに武士道を重んじるなら最初から名乗り出て全員しばいていくくらいの事しなさいよ』

 相変わらず唸って自分の中で整理を付けようとしているのを機体越しに見ていると中々面白い。拡声器でも使って叫び声を上げて「やあやあ我こそはー」って言わない辺り、私のやり方がそこまで悪くないってのも分かってるんだろう。ただまあ、理解は出来るけど納得は出来ないってとこか。
 
『ゲーム内で出来る、正規の方法でルールに基づいてやってるなら、全部ありでしょ』

 これがバグやグリッチ、チートなんて使ってたら叩きに叩きまくってゲームから追放……はチート使う位じゃないと無理だが、悪評が広まったら実質的にプレイヤーからは追放されるか。
 
『さっきまで敵同士だったのがいきなり味方でチーム戦しよう!ってのは虫が良すぎるって事』
『そう言われれば何も言えないな……』
『装甲の薄い背中晒してるのみたら、「攻撃してください」ってねだって来てるように見えるんだわ』
『それはおかしい』

 よっぽど信用がないと誰にも背中晒したくないわ。どこぞの殺し屋も背中に立つなって言ってるし。それに落とした2機も結構なダメージを貰ってたから、放っておいてもやられてた。さくっと倒して片付けるあたり、私って超優しい。

『トーナメントまで勝ち上がってなんぼだし、勝ちあがったら狡い真似……しないとは言い切れんわ』
『お主、T2Wだったか……あっちでもそんな事ばかりしているのか』
『いやー?そんなことないと思うよ?』

 私これでも王道のガンナーやってるはずだし?

『はい、この話題は終わり、これからどーするかの方が大事だって』
『そういわれると何も言えん……このままかくれんぼ継続か』
『私もあんたも余力がないでしょ、もう1機いたら話は変わったけど』

 どっちも攻撃的な編成をしているから、やられる前にやるってコンセプトも結構足を引っ張っている。ただただ長期戦になれば被弾数も増えるし、防御面もそこまで厚くないからちょっとミスると取り返しがつかない。獲物をやられるとヤバいのもあるし、本当になんで2機でやり始めたのか今更後悔するとは。

『このまま何事もなく上がれれば良し、上がれないならあがくしかない』
『勝算は』
『結構時間も経ってるし、倒してるのも増えたからいけそうな気はするけど……』

 んー、と考え事をしていると視界の端が光った様な気がする。
 その瞬間、柳生と私の間にビームが1発。中々の熱量なのか、装甲がじんわりと溶け、警告音がコックピット内に響き渡る。すぐに砲撃が飛んできた方に向き直り、散開しようと合図を出し、デブリから離れる。そして離れて少しすると足場にしていたデブリが吹き飛ばされてあっという間に消し炭に。

『お客さんのようだが……分が悪い』
『ほら、やっぱりけつまくって逃げた方が良いだろ?』
『の、ようだ』

 四の五の言ってられないのを理解したのか、デブリを盾にしながら距離を取っていく。迎撃するのには距離が遠すぎるし、仮に接近しに行っても道中の遮蔽が無さすぎる。正々堂々戦いたい所だけど状況が不利過ぎるってのを理解してるのはいいこった。

『鬱憤はトーナメントで晴らそうや』
『割り切りも大事と言う事か』

 ちょっとは物わかりが良くなってきたじゃないの。
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