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6・たとえ届かない想いだとしても
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「あ、普通にお茶ですね」
近衛騎士隊の副隊長にしてご自身の弟でもあるオレステス様と監視を交代した後、その足で朝食のパンケーキを持ってきてくださったソティリオス様に香草茶を振る舞うと、ひと口飲んでそうおっしゃいました。
今は春。
使ったのは清々しい香りが特徴的な麝香草です。
まだリナルディ王国のお城で暮らしていたころ、風邪のひき初めで喉が痛いときに母が乾燥させたものでお茶を淹れてくれていましたっけ。
今回は庭師が来てくれるでしょうか。
来てもらえなかったら、夏の前に麝香草の枝を刈り込まなければいけませんね。枝が茂り過ぎると、株が蒸れて葉が枯れてしまいます。なんでも多ければ良いというものではないのです。
「少し刺激があるのは大丈夫ですか?」
「はい、俺はこの味が好きですね。さっぱりします」
ソティリオス様は竜王ニコラオス陛下とは違い、白銀色の髪と白銀色の瞳をお持ちです。
だからといって真っ白というわけではなく、光の反射によっては暗い色に見えます。竜王陛下ほどではないものの、強い魔力をお持ちなことを示している髪と瞳です。
竜人族が竜に変じるといっても、竜王国のすべての民が翼を持って空を飛ぶ巨竜になれるわけではありません。王族以外は全身が鱗に覆われて二足歩行をするトカゲ姿になるのが限界です。それでもヒト族などと比べると遥かに強く、怪我をしたときの回復力も高いのだそうです。
今のカサヴェテス竜王国で巨竜に変じられるのは、竜王陛下とソティリオス様だけです。
白銀色の巨竜に変じてリナルディ王国から私を連れてきてくださったのは、先王陛下の弟君であるガヴラス大公殿下のご子息で陛下の従弟に当たるソティリオス様でした。
竜王陛下が巨竜に変じたお姿は、秋に暴走なさっていたときに見たことがあります。陽光に照らされた麝香草のお茶が波打って放つ黄金色の煌めきに、あのお姿を思い出しました。
……どうして私は竜王ニコラオス陛下を想わずにはいられないのでしょう。
自分でも制御出来ずに荒れ狂うこの身勝手な感情が番だから生じるものではないのなら、一体なんだというのでしょう。
いいえ、あの日気づいたのではありませんか。私の番が竜王陛下であったとしても、陛下の番は私ではないのではないかと。そういうこともあるのでしょう。受け入れなくてはいけません。
「妃殿下、朝食の件では失礼いたしました。庭師や掃除係以外の使用人はいらないとのことですが、ほかになにかご不自由を感じてらっしゃることはございませんか?」
「特になにも……あ」
「なにかございますか?」
今回のソティリオス様は、心から私を思いやってくれているように見えます。
「あの……」
私は、恐る恐るその言葉を口にしました。
近衛騎士隊の副隊長にしてご自身の弟でもあるオレステス様と監視を交代した後、その足で朝食のパンケーキを持ってきてくださったソティリオス様に香草茶を振る舞うと、ひと口飲んでそうおっしゃいました。
今は春。
使ったのは清々しい香りが特徴的な麝香草です。
まだリナルディ王国のお城で暮らしていたころ、風邪のひき初めで喉が痛いときに母が乾燥させたものでお茶を淹れてくれていましたっけ。
今回は庭師が来てくれるでしょうか。
来てもらえなかったら、夏の前に麝香草の枝を刈り込まなければいけませんね。枝が茂り過ぎると、株が蒸れて葉が枯れてしまいます。なんでも多ければ良いというものではないのです。
「少し刺激があるのは大丈夫ですか?」
「はい、俺はこの味が好きですね。さっぱりします」
ソティリオス様は竜王ニコラオス陛下とは違い、白銀色の髪と白銀色の瞳をお持ちです。
だからといって真っ白というわけではなく、光の反射によっては暗い色に見えます。竜王陛下ほどではないものの、強い魔力をお持ちなことを示している髪と瞳です。
竜人族が竜に変じるといっても、竜王国のすべての民が翼を持って空を飛ぶ巨竜になれるわけではありません。王族以外は全身が鱗に覆われて二足歩行をするトカゲ姿になるのが限界です。それでもヒト族などと比べると遥かに強く、怪我をしたときの回復力も高いのだそうです。
今のカサヴェテス竜王国で巨竜に変じられるのは、竜王陛下とソティリオス様だけです。
白銀色の巨竜に変じてリナルディ王国から私を連れてきてくださったのは、先王陛下の弟君であるガヴラス大公殿下のご子息で陛下の従弟に当たるソティリオス様でした。
竜王陛下が巨竜に変じたお姿は、秋に暴走なさっていたときに見たことがあります。陽光に照らされた麝香草のお茶が波打って放つ黄金色の煌めきに、あのお姿を思い出しました。
……どうして私は竜王ニコラオス陛下を想わずにはいられないのでしょう。
自分でも制御出来ずに荒れ狂うこの身勝手な感情が番だから生じるものではないのなら、一体なんだというのでしょう。
いいえ、あの日気づいたのではありませんか。私の番が竜王陛下であったとしても、陛下の番は私ではないのではないかと。そういうこともあるのでしょう。受け入れなくてはいけません。
「妃殿下、朝食の件では失礼いたしました。庭師や掃除係以外の使用人はいらないとのことですが、ほかになにかご不自由を感じてらっしゃることはございませんか?」
「特になにも……あ」
「なにかございますか?」
今回のソティリオス様は、心から私を思いやってくれているように見えます。
「あの……」
私は、恐る恐るその言葉を口にしました。
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