婚約破棄されても賞金稼ぎなので大丈夫ですわ!

豆狸

文字の大きさ
2 / 7

第二話 裏社会の情報ですわ!

しおりを挟む
 そろそろお茶を飲み終わるころ、所長のトゥリホマス様に命じられて外へ出ていた騎士様方が先ほど私が通報した賞金首達を連れて戻ってきました。ひとりがトゥリホマス様に報告しに来ます。

「わかった、ご苦労。いつものように処理を頼む」

 いつもより少しきりっとしたお顔で告げる上司を見て、騎士様はうっとりした表情を浮かべています。
 ただでさえ王太子殿下の専属ということで嫉妬や誘惑があったでしょうし、その上この美貌目当てで執着されたりしたのでは、魑魅魍魎渦巻く王宮での近衛騎士時代は大変だったことでしょう。
 部下の騎士様が別室へ去っていくのを見届けて、トゥリホマス様が私にいつものだらけたお顔を向けました。

「相変わらず凄いねー。誤報なし。全員指名手配中の賞金首だったよー。いつも思うけどアイツら変装してるよねー? なんでわかるの?」
「そうですわね。賞金首って犯罪の傾向にかかわらず二種類の方しかいらっしゃらないんですの。ひとつは、私の父の愛人親娘のように相手が弱いと見ると平気で踏み潰してすべてを奪おうとする欲望に満ちた瞳の方。相手が強いと見ると媚びを売りますので、騎士様の前では弱々しく振る舞っていて、簡単には見分けがつかないと思いますわ」

 お茶の残りで喉を潤して、私は言葉を続けます。

「もうひとつは、なにかの間違いで犯罪を犯し、その場で自首すれば良かったものを周囲に流されて繰り返し、罪悪感と自己嫌悪から絶望に沈んだ瞳の方ですわ」
「あー、ねえー。彼らはむしろ捕まえて欲しいって感じで犯行を繰り返すよね」
「繰り返されると被害が拡大するからやめて欲しいのですけれどね」

 手に持っていたカラのお茶を卓に置いて、私はトゥリホマス様に言いました。

「ところで、王都を二分する犯罪組織のひとつ、青百足会でなにかがあったようですわ。青百足会の補佐が裏の賞金首になっています。その騒動に乗じて紅蜘蛛会が動きを見せるかもしれません」
「……裏の賞金首? え? ちょっとメリサちゃん、なに危ないことに首突っ込んでるの?」
「神殿や孤児院へ慰問に行くついでに、裏社会の状況を教えてもらっているだけですわ。ほら、紅蜘蛛会のおさは情に厚いから、表の賞金首の事情によっては匿っているかもしれないでしょう? それに青百足会と関係のある賞金首だと、通報した後で嫌な結果になるかもしれませんし」
「あー。青百足会に騙されて犯罪に加担した人間だと、自首しても裁かれて刑を受ける前に青百足会の手先に殺されたりするもんねー。でも青百足会で一番の過激派だった補佐が裏の賞金首になったのかー。そりゃ完全に青百足会のおさに見捨てられたねー。アイツに利用されて賞金首になってた人間が自首して来るかもなー」

 ひとりで頷きながら呟いた後、トゥリホマス様は青い瞳に私を映しておっしゃいました。

「それはともかく。裏の賞金首は通報だけじゃ懸賞金はもらえない。生死は問わない代わり、賞金稼ぎ本人が賞金首を運んでいく必要があるんだ。絶対に関わっちゃ駄目だよ」
「……騎士として弱者を案じるお心は尊いものだと思いますが、そのお顔で真剣に心配されると誤解する方が出ても仕方がないと思いましてよ?」

 トゥリホマス様は、なぜか嬉しそうにニヤリとお笑いになりました。

「メリサちゃん、誤解しちゃったー?」
「私の場合は、普段のだらけたお顔を存じておりますので大丈夫ですわ」
「そっかー。普段の俺も認めてくれるメリサちゃんのこと好きだよ、俺」

 美し過ぎると、周囲に勝手な幻想を抱かれたりしますわよね。
 でもそういう言葉を気軽に発するところが一番の問題ですのよ、トゥリホマス様。
 私は少しもドキドキしたりしていませんからね、天国のお母様?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

残念なことに我が家の女性陣は、男の趣味が大層悪いようなのです

石河 翠
恋愛
男の趣味が悪いことで有名な家に生まれたアデル。祖母も母も例に漏れず、一般的に屑と呼ばれる男性と結婚している。お陰でアデルは、自分も同じように屑と結婚してしまうのではないかと心配していた。 アデルの婚約者は、第三王子のトーマス。少し頼りないところはあるものの、優しくて可愛らしい婚約者にアデルはいつも癒やされている。だが、年回りの近い隣国の王女が近くにいることで、婚約を解消すべきなのではないかと考え始め……。 ヒーローのことが可愛くて仕方がないヒロインと、ヒロインのことが大好きな重すぎる年下ヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、別サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真のID:266115)をお借りしております。

お母様が国王陛下に見染められて再婚することになったら、美麗だけど残念な義兄の王太子殿下に婚姻を迫られました!

奏音 美都
恋愛
 まだ夜の冷気が残る早朝、焼かれたパンを店に並べていると、いつもは慌ただしく動き回っている母さんが、私の後ろに立っていた。 「エリー、実は……国王陛下に見染められて、婚姻を交わすことになったんだけど、貴女も王宮に入ってくれるかしら?」  国王陛下に見染められて……って。国王陛下が母さんを好きになって、求婚したってこと!? え、で……私も王宮にって、王室の一員になれってこと!?  国王陛下に挨拶に伺うと、そこには美しい顔立ちの王太子殿下がいた。 「エリー、どうか僕と結婚してくれ! 君こそ、僕の妻に相応しい!」  え……私、貴方の妹になるんですけど?  どこから突っ込んでいいのか分かんない。

婚約破棄されたので、その場から逃げたら時間が巻き戻ったので聖女はもう間違えない

aihara
恋愛
私は聖女だった…聖女だったはずだった。   「偽聖女マリア!  貴様との婚約を破棄する!!」  目の前の婚約者である第二王子からそう宣言される  あまりの急な出来事にその場から逃げた私、マリア・フリージアだったが…  なぜかいつの間にか懐かしい実家の子爵家にいた…。    婚約破棄された、聖女の力を持つ子爵令嬢はもう間違えない…

婚約者を取り替えて欲しいと妹に言われました

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
ポーレット伯爵家の一人娘レティシア。レティシアの母が亡くなってすぐに父は後妻と娘ヘザーを屋敷に迎え入れた。 将来伯爵家を継ぐことになっているレティシアに、縁談が持ち上がる。相手は伯爵家の次男ジョナス。美しい青年ジョナスは顔合わせの日にヘザーを見て顔を赤くする。 レティシアとジョナスの縁談は一旦まとまったが、男爵との縁談を嫌がったヘザーのため義母が婚約者の交換を提案する……。

【完結】従姉妹と婚約者と叔父さんがグルになり私を当主の座から追放し婚約破棄されましたが密かに嬉しいのは内緒です!

ジャン・幸田
恋愛
 私マリーは伯爵当主の臨時代理をしていたけど、欲に駆られた叔父さんが、娘を使い婚約者を奪い婚約破棄と伯爵家からの追放を決行した!     でも私はそれでよかったのよ! なぜなら・・・家を守るよりも彼との愛を選んだから。

「不吉な子」と罵られたので娘を連れて家を出ましたが、どうやら「幸運を呼ぶ子」だったようです。

荒瀬ヤヒロ
恋愛
マリッサの額にはうっすらと痣がある。 その痣のせいで姑に嫌われ、生まれた娘にも同じ痣があったことで「気味が悪い!不吉な子に違いない」と言われてしまう。 自分のことは我慢できるが娘を傷つけるのは許せない。そう思ったマリッサは離婚して家を出て、新たな出会いを得て幸せになるが……

婚約破棄されたのでグルメ旅に出ます。後悔したって知りませんと言いましたよ、王子様。

みらいつりびと
恋愛
「汚らわしい魔女め! 即刻王宮から出て行け! おまえとの婚約は破棄する!」  月光と魔族の返り血を浴びているわたしに、ルカ王子が罵声を浴びせかけます。  王国の第二王子から婚約を破棄された伯爵令嬢の復讐の物語。

婚約破棄されたので王子様を憎むけど息子が可愛すぎて何がいけない?

tartan321
恋愛
「君との婚約を破棄する!!!!」 「ええ、どうぞ。そのかわり、私の大切な子供は引き取りますので……」 子供を溺愛する母親令嬢の物語です。明日に完結します。

処理中です...