マリーハルケン王朝建国物語 〜婚約破棄されたのでお祖父様の悲願が達成されそうです〜

魚夢ゴールド

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卒業パーティー前 〜宮殿内でも移動するのに護衛が付く王太子の浮気がバレないなんて物語は存在しない〜

4、エルゼーシアの18歳の誕生日の10日前に祖父のエドモンドは王都アンゼル入りする

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マリーハルケン公爵家の領地はアンドレーヌ王国の最南端、カフス海に面するカードレートである。

カードレート領の領都カードレートはカフス海に面する事からアンドレーヌ王国最大の貿易港も有していた。

つまりは港町である。

各国の商船が日に20艘は港に停泊した。

カードレートの主産業は陶磁器。それにカードレート圏にある南部のワインや岩塩、毛織物。

それらを貿易船に乗せてカフス海の沿岸諸国に売りまくり、帰りに各国の名産品を購入して戻ってきていた。その積み荷を領都カードレートから王都アンゼルは元よりアンドレーヌ王国の隅々にまで運搬して売りまくるのだ。

その為、カードレートの街を支配するマリーハルケン公爵家の財は留まるところを知らない。もう完全にアンドレーヌ王国を飲み込む勢いだった。

その莫大な財を背景に、近年、というか前公爵時代にマリーハルケン公爵家は王家打倒の動きを見せた事があった。子息を貿易相手でアラプト王国でも権力のあるカカス公爵家の令嬢と国際結婚させ、その勢力を国外にまで伸ばして。

その王家打倒をどうにか食い止めたのが孫娘エルゼーシアと第1王子ハミルの政略の婚姻である。婚約は6歳の時になされ、当人達もそう思っているが、2人が生まれた直後にアンドレーヌ王家とマリーハルケン公爵家の間で密約が交わされての政略を持って。

アンドレーヌ王家を打倒するのではなく、王家にマリーハルケン公爵家の血が入れて共に繁栄する。

この政略でどうにかマリーハルケン公爵家の蜂起をアンドレーヌ王家は抑え込んだ歴史があった。





さて、そんなマリーハルケン公爵家のみならずアンドレーヌ王国でも重要な王国最大のカードレート貿易港を誰が統治しているのか?

それは過去に王家打倒を模索した張本人の前公爵エドモンド・マリーハルケンである。

現当主のエドック・マリーハルケン公爵は王都アンゼル滞在なので。

とは言っても前公爵のエドモンド一人には任せられない。

そんな事をしたら脱税するに決まってるので。

アンドレーヌ王国も役人を大量にカードレートに派遣して税の徴収はもちろん、エドモンドが変な気を起こさないのか監視していた。





そのエドモンドが王都アンゼル入りするのは年に3回である。

夏、国王の誕生日。その前後に大物貴族や寄り子貴族の誕生日があるのでそれにも参加。

秋、建国記念日。それだけではなく他の諸事もこなす。

春、孫娘エルゼーシアの誕生日。それだけではなく王都アルゼンでの他の用も済ませる。





この度は孫娘エルゼーシアの18歳の誕生日。

という事でエドモンドは大量の荷馬車行列と強奪を企む不埒な賊を撃退する為の公爵家の私兵団と一緒に王都アンゼルに向かった。

それだけではなく他の貴族領の移動の際には領地を持つ貴族の兵が護衛をするという特別待遇である。もし行列が自領で賊に襲われたら疑われるので。

そんな移動なのだから「秘密裏に」などはあり得ない。

王都のアルゼン宮殿にまでその移動と日程が伝わるほどだった。

そのエドモンドの移動の報告を聞いて、アンドレーヌ王国の首脳達は、

「そうか、もうそんな季節か」

「確か今年で18歳だったか、王太子の許嫁は」

とエルゼーシアの誕生日の事も思い出すのだった。





なので変事がある訳もなく、エドモンド前公爵は無事に王都アンゼルに到着したのだった。

城門を潜るのも特別待遇だ。

荷の改めもない。20台以上あるのだ。

一々してるのも面倒なので。





 ◇





そして、そのエドモンド。

孫娘エルゼーシアの誕生日の当日に到着するといったギリギリのスケジュールでは王都アンゼルには到着しない。

余裕を持って到着していた。

今年などは10日も前に。





 ◇





貴族学校での授業を終え、マリーハルケン公爵家が誇るそれは王都アンゼルの南側にデカデカとある「城かよ」と思えるくらいの巨大過ぎる屋敷にエルゼーシアが馬車で戻ると、ダンスホールと言われても信じてしまう豪華過ぎる玄関ホールで、

「おお、可愛いエルゼ。会いたかったぞ」

祖父のエドモンドが出迎えた。

孫相手にフランクな老人を思わせるが、アンドリーヌ王国の影の王と噂されるほどの老人だ。笑っていても凄味だけは妙にあった。秀麗で髭なども綺麗に整えているがもう老年なのだが。

尚「エルゼ」とは愛称である。エルゼーシアでは長いので。

その凄味のある祖父を前にしても、血が繋がっているからかエルゼーシアは怖さを感じておらず、平然と、

「あら、お祖父様、お久しぶりです。ですが、まだですよ、私の誕生日は?」

「何じゃい、早く着いたら駄目なのか?」

「いえ、おボケになられたのかと思いまして」

「まだまだ元気じゃわい。毎日帳簿を付けておるくらいにな」

「それは良かったですわ」

「・・・聞いておるぞ」

「何をです?」

「結婚前から側妃を作ってるそうだな。第1王子は」

あら、それで心配して。

「それでこんなに早く到着されたんですか? 心配し過ぎですよ、周囲も、お祖父様も」

「心配するであろう。もしふざけた事をしよったら・・・」

「お祖父様の悲願が成就されてしまう訳ですね」

思いもよらぬ言葉に孫娘を探るように、

「良いのか? 第1王子の事を好いていると思ったが」

「王妃の椅子の次ぐらいには好いていましてよ。まあ、気に入らない宝石を付ける義理はありませんもの」

「ふむ」

黙り込んで王家打倒の算段を考える祖父のエドモンドに、エルゼーシアは平然と、

「・・・確か今回は我が国が同盟国に出向く番でしたかしら?」

「国王夫婦の不在を狙って卒業パーティーで婚約破棄か。市井で流行ってる恋愛小説の定番だが。断罪されるようなバカな事をエルゼはするのか?」

エドモンドが凄味と共にニヤリと悪そうに笑う。

「する訳がないじゃないですか」

「冤罪か。エルゼはその『ふざけた事』が起こるのを望むのかな?」

「殿下の心掛け次第ですわ。ですが備えは必要かと。西とはちゃんと仲良くなさっているのですわよね?」

「西ーー辺境伯か。子や孫の中でエルゼが一番ワシに似ておるのう」

それにはエルゼーシアが不服そうに可愛く拗ねながら、

「もっと可愛いですよ、わたくしは」

「何を言うか。こう見えてワシだって若い頃はモテたんだぞ、氷の貴公子とか呼ばれてな」

「嘘ですよね?」

「ホントだわい。同年代の婦人に聞いて回ってみよ」

そんな談笑をしながら2人は部屋へと歩いたのだった。
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