ヤバイ秀吉

魚夢ゴールド

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永禄4年(1561年) ねねを娶る

5、岡崎城からの書状

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浜松城。

それは徳川家康が拠点にしてからの名前である。

それまでの名前は「曳馬城」といった。

城主は飯尾連竜だが、その情報は今回は関係ない。

出てこないので。





その日の夜、8艘の舟に分乗した120人の織田の足軽だが、今は三河岡崎の旗を持つ足軽120人は曳馬の城下町を燃やしていた。

同時に商家に押し入って手代達を殺して蔵を開けさせて、中の銭箱を7つと米俵50以上を運び出していた。

何分、120人で来てるので。

そりゃあ、米俵を運ぶ労働力もある訳で根こそぎ奪った。

手ぶらの者は他の商家を襲った。

こっちは用心棒が居たが、問題ない。

織田の足軽は職業軍人なのだ。

毎日、遊んでる訳ではない。

剣や槍の素振りをやらされてる。弓の練習も。

その辺の自称「用心棒」の男どもよりも強いのだ。

ましてや猪武者の前田利家もいる。

銭を稼ぐ事よりも戦う事の方が好きな男なので、先頭で今回は槍ではなく剣を振るった。

なので簡単に用心棒を撃破して、店主を発見。

「ほら、さっさと蔵を開けてちょ」

おどけた顔で小柄な秀吉が命令するも、

「誰が――ぐああ」

反抗的な態度を見せた瞬間には刀で足の指を刺した。

「足の指一本くらいで大袈裟な。女どもを殺そうか? 今回は女を抱けねえのでね~。居るだけ邪魔なんだわ~。三河の岡崎衆を舐めないでちょ」

こうして残忍な秀吉に拷問されて蔵は簡単に開いた。

用心棒がいただけの事はある。

銭ではなく銀だらけだった。甲州金まである。

それを全部運び出す。

この頃には城下町にも火の手が回っており、

「よし、帰るぞ」

「もう1軒、やりましょうぜ、お頭」

調子のいい足軽がそう秀吉に頼むが、秀吉は曳馬城を見て、

「城のあの松明をみてみい。あれが来る前に逃げんと」

「本当だ。わかりやした。さすがはお頭」

「おみゃあら、三河の岡崎衆の怖さを思い知ったか。また稼きにくるでな。それまで銭を集めててちょ」

そう城下町の住民に叫んでから、秀吉達は舟に乗って鮮やかに帰っていったのだった。

もちろん、舟で追われる訳にはいかない。

自分達の舟以外は燃やして。





刈谷城の水野信元は苦笑していた。

木下秀吉が率いる足軽が持ち帰った米俵の数を見て。

50俵はある。

貸した舟8艘では当然載せきれず、曳馬の湊で舟を更に4艘も分捕ってる。

尾張は伊勢湾があり、織田の足軽も舟を操る訓練もさせられるので、織田の足軽は舟を漕げて余裕で舟を操れたので全員が無事に帰還していた訳だが。

「おみゃあら、これを見てみい。この箱は全部、永楽銭じゃなくて銀じゃぞ。ギャハハハハ」

「おお凄いですね、お頭」

「120人で分けても1人2枚はあるで。全員、今から配るでな。行儀良う並ぶんじゃぞ」

そんな中で秀吉は銀を足軽達に分配していた。

(下級武士というよりは野盗の頭だな。こんなのが三河で暴れた日には撃退するだけでも一苦労か。足止めして正解だったな)

水野信元はそう苦笑したが、お陰で刻は稼げた。

信元はお宝を足軽に分け終えた秀吉に清洲からの書状を見せた。

「ほへ? 清洲への帰還命令? 本物ですか、これ?」

「どれ。ああ、本物だぞ、秀吉」

前田利家が書状を見て本物と認めた。

「どうしてワシに帰還命令が出ておるんじゃ?」

「岡崎の甥が織田との同盟を切り出しましたので」

「おお、こりゃあ、めでたいで」

秀吉はそう愉快そうに笑ったのだった。





 ◇





尾張の清洲城には三河の岡崎城から書状が届いていた。

同盟の催促である。

織田信長はそれを読んでニヤリとした。

予定通りだ。

美濃と三河の両面作戦は尾張一国では難しいからだ。

両方とも中途半端になり、両方切り取れない可能性がある。

それに東は面倒臭い。

今川はまだいいが、武田と隣接するのは。

岡崎の松平を防波堤に使って美濃や伊勢を切り取った方が得だ。

何せ、美濃も伊勢も米どころ。

美濃54万石。

伊勢56万石。

それに比べて、

三河29万石。

遠江25万石。

なのだから。

「犬山城が離反した上、岡崎まで敵に回れば劣勢間違いなしだったが、竹千代との同盟話、思いの外、上手く行ったのう」

「木下が三河の村を本当に燃やしましたからね。木下の足軽組でありませんが如何しましょう?」

丹羽長秀がそう評するが、同盟の引き金となったのはそっちじゃない。

「サルが今川の曳馬城の城下町を岡崎勢の仕業に見せて焼いたからであろう」

あれで今川と松平の全面対決は決定的となった。

まだ松平元康の妻子が駿府に残っていて人質交渉をしているところなのに。

松平からすれば「これ以上、織田に邪魔をされてはたまらない」。

それが同盟という形になっていた。

「もう何もしてくれるな」という訳だ。

「そちらは完全な軍令違反ですが、如何しましょう」

「燃やす前の曳馬城下の乱妨取りで稼いだらしいからな。今回は褒美はなしだ」

「軍令違反の処罰の方は?」

「そっちもなしだ。信清が寝返ったのだ。使える奴を殺す余裕はない。サルめには存分に働いて貰うさ」

信長はそう嘯いたが、

「但し、サルの弟には遭っておくか。連れてくるようにサルに言え」





そんな訳で清洲に戻った秀吉は弟の小一郎を連れて登城していた。

信長が両者を見て、

「随分と活躍したそうだな、サル」

「ははっ、総ては殿のお下知通りかと」

「そんな訳があるか。まあよい。おまえの弟もオレに仕える事を許そう」

「ははっ、ありがとうございまする。ついでに名もいただけたら幸いにございまする」

「名のう。長をやるか。長秀と名乗るがよい。ん? 五郎左と同名か、まあ良かろう」

「殿の名をいただけるとは、ありがとうございまする」

秀吉が土下座して喜ぶ中、

「ありがとうございまする。これより木下長秀と名乗りまする」

小一郎も兄に倣って土下座した。

「そう言えば、木曽川の蜂須賀、並びに客分の前野が清洲の殿に仕えたいと言ってきておりますが」

「ん、木曽川の蜂須賀の事か?」

「はい、その蜂須賀でございまする」

「仕えさせてやろう」

「ははっ、ありがとうございまする。前野の方もよろしいでしょうか?」

「前野とは桶狭間の時に清洲を狙った者よな?」

「はい、その男で間違いございませぬ」

「殺せ」

冷淡に信長は命令した。

「ははっ、必ずや首を届けて御覧に入れまする」

土下座してる小一郎が小声で、

「(いいのか、兄者)」

「(断ったらこっちが殺されるわ)」

同じく土下座しながら秀吉が答えながら、

「最後に、もう1つ」

「・・・何だ?」

図々し奴め、と思いながら信長が秀吉を見ると、

「この度、サルを好いてくれる女子が現れて祝言をする事になりまして、その祝言祝いを殿からいただきたく」

「わかったわかった。誰かに何かを持って行かせる」

「ありがとうございまする」

こうして信長と小一郎の謁見は終了したのだった。
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