婚約破棄されたスナギツネ令嬢、実は呪いで醜くなっていただけでした

宮之みやこ

文字の大きさ
4 / 18

04

しおりを挟む
 困惑するリュシエルの前に来ると、二人は立ち止まった。周りにいる人たちも、何事かとこちらに注目している。

「やあリュシエル、クロード。我が麗しの君が到着したから、紹介しようと思ってね。それに、君たちに話があるんだ」
「我が麗しの君……?」

 ハージェスはこの上なく上機嫌だった。その隣で腕を絡めて立っているモルガナも。

「そう。私たちは、真実の愛に目覚めたんだ。だからすまないが、私とは婚約破棄をしてもらおう。……それから、我が愚弟、クロードともね」

 リュシエルは絶句した。

(この人は……何を言っているの?)

「……国王陛下には、許可をとっているのか?」

 リュシエルが何も言えなくなっている隣で、クロードが様子を伺うように聞く。

「いや、これからさ。真っ向から行くと聞いてもらえないだろうからね。だがこうして既成事実を作ってしまえば、父も認めざるを得なくなろうだろう。……何せ彼女のお腹の中には子供がいる。そう、次代の国王となる子供が」

 子供という単語に、その場は騒然とした。少し離れたところで、兄のエドガーが憤怒の表情をしているのが見える。リュシエルの隣から、はあ、と盛大なため息が聞こえた。おそらくクロードだろう。リュシエルは何も言えず、ただ口をパクパクとさせていた。

(この人……この人達って……!)

 そんなリュシエルの反応に、モルガナが満足そうにお腹を撫でている。

(本当に頭がおかしいんじゃないのかしら!?)

 心の声が出てしまわないよう、リュシエルは慌てて手で口を押さえた。

(婚約者であるベクレル侯爵家主催のパーティーで! 主催者の顔に泥を塗るようなことをして! その上国王様の許可もなく! 挙げ句の果てには不実まで自ら露呈して……! 信じられない!)

 怒りよりも、呆れて物が言えなかった。いくらリュシエルが不器量だからと言って、仮にもハージェスはこの国を背負っていく王太子であり、モルガナも立派な侯爵家の娘なのだ。あまりにも責任と義務を無視した二人の行いに、リュシエルは心底引いていた。

(こんな……こんな男に国を任せたら、ヴァランタン王国が潰れる……)

 将来のことを考えると、気が遠くなる。実際に足元がふらついてしまい、そばにいたクロードが慌てて支えてくれなかったら、この場で倒れていたかもしれない。

「……アンジェラを、アンジェラをお兄さまに……」

 天使のようなあの子にこんな汚いものは見せられない。リュシエルが息も絶え絶えに言うと、いつの間にか近くに来ていたエドガーが即座にアンジェラを連れて行った。その顔は憤怒で真っ赤に染まっていた。

「君たちの反対は承知の上だよ。だが残念だね、クロード。モルガナは君より私の方がいいと言うんだ。潔く、彼女と私の幸せを願ってくれ」
「……そんなにうまく行くとは思わない方がいい」

 凍った場の空気には気づかず、嬉々として続けるハージェスに、クロードが低い声で答えた。

「おや? 実は相当応えているのか? すまない、弟の最愛の人を奪ってしまう形になって……」
「いや、そうではない。そんな女は好きにくれてやる。それよりも父があっさり許すとは思わない方がいいと言っているんだ。今まで兄上の婚約破棄を誰よりも拒否していたのは、国王陛下だということを忘れていないか?」

 クロードが冷静に、“国王陛下“という単語に力をこめて答えれば、ハージェスがグッと喉を詰まらせた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されて追放寸前だったのに、なぜか冷徹なはずの氷の公爵様から世界で一番甘く愛されています。

黒崎隼人
ファンタジー
「リゼット・フォン・ヴァインベルク! 貴様との婚約を、今この時をもって破棄する!」 卒業パーティーの夜、公爵令嬢リゼットは婚約者の王太子から冤罪を突きつけられ、全てを失った。 絶望の淵に沈む彼女に手を差し伸べたのは、『氷の公爵』と噂される冷徹な美青年、キリアン・アシュフォード。 「ならば、俺が君を娶ろう」 彼の屋敷で始まったのは、戸惑うほどに甘い溺愛の日々。 不器用な優しさに触れるうち、凍てついた心は少しずつ溶かされていく。 一方、リゼットを陥れた偽りの聖女は王宮で増長し、国に災いを招き寄せていた。 やがて真実が暴かれる時、元婚約者は後悔の涙を流すけれど――もう、遅い。 これは、不遇の令嬢が本当の愛を見つけ、世界で一番幸せになるまでの物語。 痛快な逆転劇と、とろけるような溺愛があなたを待っています。

婚約破棄は大歓迎! 悪役令嬢は辺境でぐうたらスローライフを送りたい ~二度寝を邪魔する奴は、王太子でも許しません~

小林 れい
ファンタジー
煌びやかな夜会で、婚約者であるジークフリート王太子から「婚約破棄」を突きつけられた公爵令嬢ユーラリア。 「身に覚えのない罪」で断罪される彼女に、周囲は同情の視線を向けるが——。 (((きたぁぁぁ! 自由だ! これで毎日、お昼過ぎまで寝られる!!))) 実は彼女、前世の記憶を持つ転生者。 過労死した前世の反省から、今世の目標は「絶対に働かないこと」。 王妃教育という名の地獄から解放されたユーラリアは、慰謝料として手に入れた北の果ての別荘へと意気揚々と旅立つ。 待っていたのは、フカフカの羽毛布団と、静かな森。 彼女はただ、お菓子を食べて、二度寝をして、ダラダラ過ごしたいだけだった。 しかし——。 「眩しいから」と魔法で空を曇らせれば、**『干ばつを救った聖女』と崇められ。 「動くのが面倒だから」と転移魔法でティーカップを寄せれば、『失伝した超魔法の使い手』**と驚愕される。 さらに、自分を捨てたはずの王太子が「君の愛が恋しい」と泣きつき、隣国の冷徹な軍事公爵までが「君の合理的な休息術に興味がある」と別荘に居座り始めて……!? 「お願いですから、私の睡眠を邪魔しないでいただけますか?」 勘違いと怠惰が加速する、最強ニート令嬢のスローライフ(?)物語!

当て馬令嬢は自由を謳歌したい〜冷酷王子への愛をゴミ箱に捨てて隣国へ脱走したら、なぜか奈落の底まで追いかけられそうです〜

平山和人
恋愛
公爵令嬢エルナは、熱烈に追いかけていた第一王子シオンに冷たくあしらわれ、挙句の果てに「婚約者候補の中で、お前が一番あり得ない」と吐き捨てられた衝撃で前世の記憶を取り戻す。 そこは乙女ゲームの世界で、エルナは婚約者選別会でヒロインに嫌がらせをした末に処刑される悪役令嬢だった。 「死ぬのも王子も、もう真っ平ご免です!」 エルナは即座に婚約者候補を辞退。目立たぬよう、地味な領地でひっそり暮らす準備を始める。しかし、今までエルナを蔑んでいたはずのシオンが、なぜか彼女を執拗に追い回し始め……? 「逃げられると思うなよ。お前を俺の隣以外に置くつもりはない」 「いや、記憶にあるキャラ変が激しすぎませんか!?」

【完結】冷遇され続けた私、悪魔公爵と結婚して社交界の花形になりました~妹と継母の陰謀は全てお見通しです~

深山きらら
恋愛
名門貴族フォンティーヌ家の長女エリアナは、継母と美しい義妹リリアーナに虐げられ、自分の価値を見失っていた。ある日、「悪魔公爵」と恐れられるアレクシス・ヴァルモントとの縁談が持ち込まれる。厄介者を押し付けたい家族の思惑により、エリアナは北の城へ嫁ぐことに。 灰色だった薔薇が、愛によって真紅に咲く物語。

悪霊令嬢~死した聖女憎悪に染まりて呪いを成す~

女譜香あいす
ファンタジー
 数え切れない人々をその身に宿す奇跡の力で救ってきた少女、サヤ・パメラ・カグラバ。  聖女と称えられた彼女であったが陰謀の末に愛した者から婚約破棄を言い渡され、友人達からも裏切られ、最後には命を奪われてしまう。  だがそのとき感じた怒りと悲しみ、そして絶望によって彼女の心は黒く歪み、果てにサヤは悪霊として蘇った。  そして、そんな彼女と世を憎みながらもただ生きる事しかできていなかった一人の少女が巡り合う事で、世界に呪いが拡がり始める事となる。  これは誰よりも清らかだった乙女が、憎悪の化身となりすべての人間に復讐を果たす物語。 ※この作品は小説家になろうにも掲載しています。

【完結】 笑わない、かわいげがない、胸がないの『ないないない令嬢』、国外追放を言い渡される~私を追い出せば国が大変なことになりますよ?~

夏芽空
恋愛
「笑わない! かわいげがない! 胸がない! 三つのないを持つ、『ないないない令嬢』のオフェリア! 君との婚約を破棄する!」 婚約者の第一王子はオフェリアに婚約破棄を言い渡した上に、さらには国外追放するとまで言ってきた。 「私は構いませんが、この国が困ることになりますよ?」 オフェリアは国で唯一の特別な力を持っている。 傷を癒したり、作物を実らせたり、邪悪な心を持つ魔物から国を守ったりと、力には様々な種類がある。 オフェリアがいなくなれば、その力も消えてしまう。 国は困ることになるだろう。 だから親切心で言ってあげたのだが、第一王子は聞く耳を持たなかった。 警告を無視して、オフェリアを国外追放した。 国を出たオフェリアは、隣国で魔術師団の団長と出会う。 ひょんなことから彼の下で働くことになり、絆を深めていく。 一方、オフェリアを追放した国は、第一王子の愚かな選択のせいで崩壊していくのだった……。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

『役立たず』と追放された私、今では英雄様に守られています

ほーみ
恋愛
 辺境伯の三女として生まれた私は、リリィ=エルフォード。  魔力もなく、剣も振れず、社交界の花にもなれない私は、いつしか「家の恥」と呼ばれるようになっていた。 「リリィ、今日からお前は我が家の娘ではない」  父の冷たい声が耳にこびりつく。  その日、私は何の前触れもなく、家から追放された。  理由は、簡単だ。「婚約者にふさわしくない」と判断されたから。  公爵家の三男との縁談が進んでいたが、私の“無能さ”が噂となり、先方が断ってきたのだ。

処理中です...