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クロードはその見た目だけでなく、中身まで清廉潔白だった。以前、ハージェスにひどくからかわれて落ち込んだリュシエルが「でもクロード様もやはり美しい女性がいいんでしょう」とひねくれて聞いた時にも、こう答えていた。
「外見の美しさはもちろん美点だと思うが、それが全てではない。私は外見が美しいだけの女性より、心が美しい女性の方がいいと思っている」
と。
その言葉は、たとえ慰めるための嘘だったとしても、リュシエルの心の支えになった。彼女が今こうして折れずに立っていられるのは、全てクロードのおかげと言っても過言ではない。時間が経つにつれ、彼に対する気持ちが恋へと変わっても、何も不思議なことではなかった。
けれど残念なことにリュシエルはハージェスと婚約済みであり、クロードもまた他の令嬢と婚約しているため、二人の結婚は不可能だった。それでも、彼への溢れる思いは止められなかった。
(せめて、クロード様に誇ってもらえるよう、心は美しくありたい。)
腐ってもリュシエルは侯爵家の長女であり、王太子の婚約者であり、将来の王妃なのだ。夫となる予定のハージェスとの仲は期待できそうにないし期待したくもないが、王国民に対して心根で恥じない王妃であるために、リュシエルは猛勉強した。一般的な貴族女性の教養はもちろん、帝王学から始まって、経済、歴史、地理、算術に加え、近隣諸国の言語も一通りたたき込んである。さらに慈善活動にも精を出し、国のあちこちの孤児院に寄付や慰問訪問をしていた。そのため、国民人気は悪くないどころか良い方なのだ。ハージェスはそれを「ご機嫌取りご苦労様」と笑っていたが、クロードが褒めてくれたので、リュシエルは気にしないことにしている。
「ああ、いたいた! リュシー、大変なの。ハージェス様が……」
リュシエルがうっとりとクロードを眺めていると、リュシエルを外見で判断しない数少ない友達の伯爵令嬢が駆け寄ってくる。ハージェスという名前に反応したクロードも、伯爵令嬢の方を見た。
「どうしたの?」
「兄が何か?」
「それが……」
伯爵令嬢は言いづらそうに口をモゴモゴとさせながら、そっとある方向を指さした。その方向を見て、リュシエルだけでなく、クロードまでがハッと息を呑む。
そこにいたのは、ハージェスと、鮮やかな赤髪を結い上げた美しい女性だった。二人は親密そうに寄り添っており、女性の手はハージェスの腕に、ハージェスの手は女性の腰に回されている。
「モルガナ……?」
クロードが呆然としたように呟いた。
(まさか……モルガナ嬢なの?)
信じられない思いで、リュシエルも仲睦まじげに寄り添う二人を見た。
モルガナ・フラヴィニー嬢。彼女は、リュシエルの生家であるベクレル侯爵家に筆頭する侯爵家の一人娘で、何を隠そう、クロードの婚約者だった。
モルガナは艶やかな雰囲気を持つ美貌の女性で、そんな彼女に、クロードはまめまめしく尽くしていた。いつも贈り物を欠かさず、夜会ではリュシエルを放置するハージェスと違ってきっちりとエスコートし、側から見てもモルガナを愛し、大事にしているのがよく伝わってきていた。
モルガナ本人はと言えば、クロードの態度にいつも満足そうにし、リュシエルを見るとあからさまに見下した目をしてきていたが、そもそもフラヴィニー侯爵家が一方的にベクレル侯爵家を敵視しているのを知っているため、リュシエルはなるべく気にしないようにしてきた。だが……。
(そのモルガナ嬢が、なぜハージェス様と……?)
「外見の美しさはもちろん美点だと思うが、それが全てではない。私は外見が美しいだけの女性より、心が美しい女性の方がいいと思っている」
と。
その言葉は、たとえ慰めるための嘘だったとしても、リュシエルの心の支えになった。彼女が今こうして折れずに立っていられるのは、全てクロードのおかげと言っても過言ではない。時間が経つにつれ、彼に対する気持ちが恋へと変わっても、何も不思議なことではなかった。
けれど残念なことにリュシエルはハージェスと婚約済みであり、クロードもまた他の令嬢と婚約しているため、二人の結婚は不可能だった。それでも、彼への溢れる思いは止められなかった。
(せめて、クロード様に誇ってもらえるよう、心は美しくありたい。)
腐ってもリュシエルは侯爵家の長女であり、王太子の婚約者であり、将来の王妃なのだ。夫となる予定のハージェスとの仲は期待できそうにないし期待したくもないが、王国民に対して心根で恥じない王妃であるために、リュシエルは猛勉強した。一般的な貴族女性の教養はもちろん、帝王学から始まって、経済、歴史、地理、算術に加え、近隣諸国の言語も一通りたたき込んである。さらに慈善活動にも精を出し、国のあちこちの孤児院に寄付や慰問訪問をしていた。そのため、国民人気は悪くないどころか良い方なのだ。ハージェスはそれを「ご機嫌取りご苦労様」と笑っていたが、クロードが褒めてくれたので、リュシエルは気にしないことにしている。
「ああ、いたいた! リュシー、大変なの。ハージェス様が……」
リュシエルがうっとりとクロードを眺めていると、リュシエルを外見で判断しない数少ない友達の伯爵令嬢が駆け寄ってくる。ハージェスという名前に反応したクロードも、伯爵令嬢の方を見た。
「どうしたの?」
「兄が何か?」
「それが……」
伯爵令嬢は言いづらそうに口をモゴモゴとさせながら、そっとある方向を指さした。その方向を見て、リュシエルだけでなく、クロードまでがハッと息を呑む。
そこにいたのは、ハージェスと、鮮やかな赤髪を結い上げた美しい女性だった。二人は親密そうに寄り添っており、女性の手はハージェスの腕に、ハージェスの手は女性の腰に回されている。
「モルガナ……?」
クロードが呆然としたように呟いた。
(まさか……モルガナ嬢なの?)
信じられない思いで、リュシエルも仲睦まじげに寄り添う二人を見た。
モルガナ・フラヴィニー嬢。彼女は、リュシエルの生家であるベクレル侯爵家に筆頭する侯爵家の一人娘で、何を隠そう、クロードの婚約者だった。
モルガナは艶やかな雰囲気を持つ美貌の女性で、そんな彼女に、クロードはまめまめしく尽くしていた。いつも贈り物を欠かさず、夜会ではリュシエルを放置するハージェスと違ってきっちりとエスコートし、側から見てもモルガナを愛し、大事にしているのがよく伝わってきていた。
モルガナ本人はと言えば、クロードの態度にいつも満足そうにし、リュシエルを見るとあからさまに見下した目をしてきていたが、そもそもフラヴィニー侯爵家が一方的にベクレル侯爵家を敵視しているのを知っているため、リュシエルはなるべく気にしないようにしてきた。だが……。
(そのモルガナ嬢が、なぜハージェス様と……?)
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