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困惑するリュシエルの前に来ると、二人は立ち止まった。周りにいる人たちも、何事かとこちらに注目している。
「やあリュシエル、クロード。我が麗しの君が到着したから、紹介しようと思ってね。それに、君たちに話があるんだ」
「我が麗しの君……?」
ハージェスはこの上なく上機嫌だった。その隣で腕を絡めて立っているモルガナも。
「そう。私たちは、真実の愛に目覚めたんだ。だからすまないが、私とは婚約破棄をしてもらおう。……それから、我が愚弟、クロードともね」
リュシエルは絶句した。
(この人は……何を言っているの?)
「……国王陛下には、許可をとっているのか?」
リュシエルが何も言えなくなっている隣で、クロードが様子を伺うように聞く。
「いや、これからさ。真っ向から行くと聞いてもらえないだろうからね。だがこうして既成事実を作ってしまえば、父も認めざるを得なくなろうだろう。……何せ彼女のお腹の中には子供がいる。そう、次代の国王となる子供が」
子供という単語に、その場は騒然とした。少し離れたところで、兄のエドガーが憤怒の表情をしているのが見える。リュシエルの隣から、はあ、と盛大なため息が聞こえた。おそらくクロードだろう。リュシエルは何も言えず、ただ口をパクパクとさせていた。
(この人……この人達って……!)
そんなリュシエルの反応に、モルガナが満足そうにお腹を撫でている。
(本当に頭がおかしいんじゃないのかしら!?)
心の声が出てしまわないよう、リュシエルは慌てて手で口を押さえた。
(婚約者であるベクレル侯爵家主催のパーティーで! 主催者の顔に泥を塗るようなことをして! その上国王様の許可もなく! 挙げ句の果てには不実まで自ら露呈して……! 信じられない!)
怒りよりも、呆れて物が言えなかった。いくらリュシエルが不器量だからと言って、仮にもハージェスはこの国を背負っていく王太子であり、モルガナも立派な侯爵家の娘なのだ。あまりにも責任と義務を無視した二人の行いに、リュシエルは心底引いていた。
(こんな……こんな男に国を任せたら、ヴァランタン王国が潰れる……)
将来のことを考えると、気が遠くなる。実際に足元がふらついてしまい、そばにいたクロードが慌てて支えてくれなかったら、この場で倒れていたかもしれない。
「……アンジェラを、アンジェラをお兄さまに……」
天使のようなあの子にこんな汚いものは見せられない。リュシエルが息も絶え絶えに言うと、いつの間にか近くに来ていたエドガーが即座にアンジェラを連れて行った。その顔は憤怒で真っ赤に染まっていた。
「君たちの反対は承知の上だよ。だが残念だね、クロード。モルガナは君より私の方がいいと言うんだ。潔く、彼女と私の幸せを願ってくれ」
「……そんなにうまく行くとは思わない方がいい」
凍った場の空気には気づかず、嬉々として続けるハージェスに、クロードが低い声で答えた。
「おや? 実は相当応えているのか? すまない、弟の最愛の人を奪ってしまう形になって……」
「いや、そうではない。そんな女は好きにくれてやる。それよりも父があっさり許すとは思わない方がいいと言っているんだ。今まで兄上の婚約破棄を誰よりも拒否していたのは、国王陛下だということを忘れていないか?」
クロードが冷静に、“国王陛下“という単語に力をこめて答えれば、ハージェスがグッと喉を詰まらせた。
「やあリュシエル、クロード。我が麗しの君が到着したから、紹介しようと思ってね。それに、君たちに話があるんだ」
「我が麗しの君……?」
ハージェスはこの上なく上機嫌だった。その隣で腕を絡めて立っているモルガナも。
「そう。私たちは、真実の愛に目覚めたんだ。だからすまないが、私とは婚約破棄をしてもらおう。……それから、我が愚弟、クロードともね」
リュシエルは絶句した。
(この人は……何を言っているの?)
「……国王陛下には、許可をとっているのか?」
リュシエルが何も言えなくなっている隣で、クロードが様子を伺うように聞く。
「いや、これからさ。真っ向から行くと聞いてもらえないだろうからね。だがこうして既成事実を作ってしまえば、父も認めざるを得なくなろうだろう。……何せ彼女のお腹の中には子供がいる。そう、次代の国王となる子供が」
子供という単語に、その場は騒然とした。少し離れたところで、兄のエドガーが憤怒の表情をしているのが見える。リュシエルの隣から、はあ、と盛大なため息が聞こえた。おそらくクロードだろう。リュシエルは何も言えず、ただ口をパクパクとさせていた。
(この人……この人達って……!)
そんなリュシエルの反応に、モルガナが満足そうにお腹を撫でている。
(本当に頭がおかしいんじゃないのかしら!?)
心の声が出てしまわないよう、リュシエルは慌てて手で口を押さえた。
(婚約者であるベクレル侯爵家主催のパーティーで! 主催者の顔に泥を塗るようなことをして! その上国王様の許可もなく! 挙げ句の果てには不実まで自ら露呈して……! 信じられない!)
怒りよりも、呆れて物が言えなかった。いくらリュシエルが不器量だからと言って、仮にもハージェスはこの国を背負っていく王太子であり、モルガナも立派な侯爵家の娘なのだ。あまりにも責任と義務を無視した二人の行いに、リュシエルは心底引いていた。
(こんな……こんな男に国を任せたら、ヴァランタン王国が潰れる……)
将来のことを考えると、気が遠くなる。実際に足元がふらついてしまい、そばにいたクロードが慌てて支えてくれなかったら、この場で倒れていたかもしれない。
「……アンジェラを、アンジェラをお兄さまに……」
天使のようなあの子にこんな汚いものは見せられない。リュシエルが息も絶え絶えに言うと、いつの間にか近くに来ていたエドガーが即座にアンジェラを連れて行った。その顔は憤怒で真っ赤に染まっていた。
「君たちの反対は承知の上だよ。だが残念だね、クロード。モルガナは君より私の方がいいと言うんだ。潔く、彼女と私の幸せを願ってくれ」
「……そんなにうまく行くとは思わない方がいい」
凍った場の空気には気づかず、嬉々として続けるハージェスに、クロードが低い声で答えた。
「おや? 実は相当応えているのか? すまない、弟の最愛の人を奪ってしまう形になって……」
「いや、そうではない。そんな女は好きにくれてやる。それよりも父があっさり許すとは思わない方がいいと言っているんだ。今まで兄上の婚約破棄を誰よりも拒否していたのは、国王陛下だということを忘れていないか?」
クロードが冷静に、“国王陛下“という単語に力をこめて答えれば、ハージェスがグッと喉を詰まらせた。
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