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お披露目②
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「デューク様、アルビー様になにか言うことはないんですか?」
見かねたアルベルトさんが助け舟を出してくれた。
「……一緒に来い」
「えっ、デュ、デューク様!?」
手を取られ、そのまま食堂を連れ出されてしまった。早足に廊下を突き進むデューク様の背を見つめながら、やはり不快な思いをさせてしまったのではないだろうか?と不安が募る。
角を曲がった先の部屋へ連れ込まれると、扉が鈍い音を立てて閉じた。初めて足を踏み入れたその部屋は、装飾品がほとんど置かれていないシンプル場所だった。それでもこの部屋がデューク様の部屋だとわかったのは、彼と同じ香りが部屋に残っているからだ。
「……僕、不快な思いをさせてしまいましたか?変だったでしょうか……」
手を繋いだままこちらを向いてくれないデューク様に思いきって尋ねた。似合わないと言われてしまったら悲しい。けれどデューク様の反応だけで気持ちを察することはできない。
「っ、それは可愛すぎるだろ」
「へ!?わぁっ!」
突然振り返ったデューク様が、感極まったように言葉を発しながら力強く抱きしめてきた。デューク様の胸の中にすっぽりと閉じ込められてしまった僕の肩に、彼が額を押し付けてくる。
「あの……デューク様、僕変じゃないですか?」
「可愛すぎるし綺麗すぎるからダメだ」
「ダメですか?」
「ダメだダメだ!他のやつに見せたくなくて連れてきちまった。反則って言葉知ってるか?」
顔を上げたデューク様の目尻がほんのりと赤く染まっていて表情も緩んでいる。それなのに少しだけ不機嫌そうにも見えた。
「似合ってますか?」
「……似合ってる」
「良かった……。婚約披露パーティーの日にデューク様の隣に堂々と立てるような自分になりたいって思ったんです。だからアリアに手伝ってもらって、見た目から変えていこうとしてみたんですけど」
一生懸命に気持ちを伝える。デューク様のように完璧に仕事をこなすことは難しい。それでも出来ることから少しずつ学んでいきたいと思っている。見た目を変えることで、いい兄を演じていた頃の自分自身を捨て去ることができた気がする。
だから僕はもう立ち止まらないし、振り返らない。
「アルビーと結婚できた俺は幸せ者だって本気で思う。そうやって努力しようとする姿が俺には眩しく見えるし、尊敬している」
「デューク様が僕のことを尊敬?」
「あぁ、尊敬しあえる夫婦ってのはいいものだな」
二カッと太陽が照るように笑ってくれるデューク様に、僕も満開の笑顔を返した。
デューク様の言葉が嬉しくて自然と笑顔になってしまう。尊敬する人にそんなふうに言ってもらえることが夢のようで、現実みを感じられない。
けれどふわふわと漂ってくる彼の香りが鼻腔を通っていくと、これが夢ではないのだと自覚できた。
「今すぐアルビーの全部がほしい」
艶のある低音で囁かれて心臓が跳ね上がったデューク様に身も心もすべてを捧げる想像をしてしまい、鼓動が信じられないほどに早鐘を打ち始める。
見かねたアルベルトさんが助け舟を出してくれた。
「……一緒に来い」
「えっ、デュ、デューク様!?」
手を取られ、そのまま食堂を連れ出されてしまった。早足に廊下を突き進むデューク様の背を見つめながら、やはり不快な思いをさせてしまったのではないだろうか?と不安が募る。
角を曲がった先の部屋へ連れ込まれると、扉が鈍い音を立てて閉じた。初めて足を踏み入れたその部屋は、装飾品がほとんど置かれていないシンプル場所だった。それでもこの部屋がデューク様の部屋だとわかったのは、彼と同じ香りが部屋に残っているからだ。
「……僕、不快な思いをさせてしまいましたか?変だったでしょうか……」
手を繋いだままこちらを向いてくれないデューク様に思いきって尋ねた。似合わないと言われてしまったら悲しい。けれどデューク様の反応だけで気持ちを察することはできない。
「っ、それは可愛すぎるだろ」
「へ!?わぁっ!」
突然振り返ったデューク様が、感極まったように言葉を発しながら力強く抱きしめてきた。デューク様の胸の中にすっぽりと閉じ込められてしまった僕の肩に、彼が額を押し付けてくる。
「あの……デューク様、僕変じゃないですか?」
「可愛すぎるし綺麗すぎるからダメだ」
「ダメですか?」
「ダメだダメだ!他のやつに見せたくなくて連れてきちまった。反則って言葉知ってるか?」
顔を上げたデューク様の目尻がほんのりと赤く染まっていて表情も緩んでいる。それなのに少しだけ不機嫌そうにも見えた。
「似合ってますか?」
「……似合ってる」
「良かった……。婚約披露パーティーの日にデューク様の隣に堂々と立てるような自分になりたいって思ったんです。だからアリアに手伝ってもらって、見た目から変えていこうとしてみたんですけど」
一生懸命に気持ちを伝える。デューク様のように完璧に仕事をこなすことは難しい。それでも出来ることから少しずつ学んでいきたいと思っている。見た目を変えることで、いい兄を演じていた頃の自分自身を捨て去ることができた気がする。
だから僕はもう立ち止まらないし、振り返らない。
「アルビーと結婚できた俺は幸せ者だって本気で思う。そうやって努力しようとする姿が俺には眩しく見えるし、尊敬している」
「デューク様が僕のことを尊敬?」
「あぁ、尊敬しあえる夫婦ってのはいいものだな」
二カッと太陽が照るように笑ってくれるデューク様に、僕も満開の笑顔を返した。
デューク様の言葉が嬉しくて自然と笑顔になってしまう。尊敬する人にそんなふうに言ってもらえることが夢のようで、現実みを感じられない。
けれどふわふわと漂ってくる彼の香りが鼻腔を通っていくと、これが夢ではないのだと自覚できた。
「今すぐアルビーの全部がほしい」
艶のある低音で囁かれて心臓が跳ね上がったデューク様に身も心もすべてを捧げる想像をしてしまい、鼓動が信じられないほどに早鐘を打ち始める。
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