身代わりの花は包愛に満たされる

天宮叶

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お勉強

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目を覚ますと、隣に眠っているデューク様を見つめる。頬に触れると、微かに彼が薄く目を開けた。

「起こしちゃいましたか?」

「……いや……おはようアルビー」

「おはようございますデューク様」

 いつもよりも掠れている声音が愛おしい。まだ寝ぼけ眼なデューク様が可愛らしくて抱きつきたくなった。

 そう思った瞬間、筋肉質な彼に引き寄せられて胸に閉じ込められた。一気に体温が上昇する。温かさと鼓膜を揺らす心音にますます愛おしさや幸福感が増していく。

「離したくねぇな……」

「……僕も離れたくありません」

「フッ、可愛いことばっか言いやがって」

「デューク様は格好良いです」

 こんなふうにお互いの思っていることを伝える瞬間が楽しくてたまらない。ずっと一緒にいたい。離れたくなんてない。

「アルビー、伯爵家の仕事を学んでみる気はあるか?」

「任せてくださるのですか?」

 顔を上げると、優しい色を宿す瞳と目が合う。

「俺が伯爵家に居られるうちに教えておきたい。伯爵家の雑務なんかはアルベルトがしてくれてるが、俺達はいつ戦場に駆り出されてもおかしくはない。そうなったときアルビーに家のことを頼みたい」

 話を聞き終えると体を起こす。一緒に起き上がってくれたデューク様よ瞳を真っ直ぐに見返す。

「僕ができることはやらせてください。僕は伯爵夫人としてあなたの役に立ちたいし、努力していきたいです」

 答えなど考えなくとも決まっていた。うまく仕事をこなしていく自信はない。けれどそうやって足踏みしていても前には進めないことを学んだ。それに、デューク様の期待に応えたい。

「頼もしいな。ありがとうアルビー」

 手の甲にキスをされる。それを受け入れながら、僕なりに努力をしていこうと心の中で誓いを立てた。

 

 課題は山程あり、覚えていくには時間がかかる。次の日からアルベルトさんに教わりながら伯爵家の管理を学び始めた。デューク様は仕事で忙しくて、なかなかつきっきりで教えることは難しいようだ。

 僕の部屋で卓を囲みながら伯爵家について教えてもらう。

「アルベルト様も忙しいのに……本当にありがとうございます」

「ええ、どういたしまして。早速ですが、アルビー様にはまず屋敷自体の管理について学んでいただこうと思います。内装や外装を保ち、お客様を迎え入れるために準備しておくことも立派な仕事です」

「はい。よろしくお願いします」

 伯爵家の仕事は多岐にわたる。少しずつでも覚えてデューク様の役に立ちたい。

 頑張ろうっ!と心の中で気合を入れて、アルベルト様の話にさらに意識を集中させる。 
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