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フィーロは一番弟子
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あのあと体を清めたゼンはヒート抑制剤を飲むと、少しだけ仮眠を取った。それから部屋を出てフィーロの部屋を訪ねた。
「フィーロ出てこい」
扉を何度かノックすると、勢い良く扉が開いて驚く。
顔を出したフィーロがゼンの姿を青い瞳に映した瞬間、光が差したかのように顔をほころばせた。
「お兄様入ってください!」
腕を引かれながら部屋へ入る。
まだ家具が揃いきっていない広い部屋は少しだけ寂しく感じられた。
「今度一緒に家具を見に行こう」
「わぁ!楽しみです」
来たときと比べるとフィーロは随分と明るくなった気がする。まだゼンの前以外では縮こまってしまうようだが、すぐに慣れてくれそうだ。
並んでソファーに腰掛けると、フィーロがゼンのことを見つめてきた。見返すと、恥ずかしそうに視線をそらせる。
「どうした?」
「……お兄様は僕のお兄様ですか?」
「当然だろう。俺はお前だけの兄だ」
「本当に?えへへ、嬉しいです」
喜ぶフィーロは子犬のようで可愛らしい。
こうやって仲良くできている事実が嬉しくてたまらない。自然と顔も緩んでしまった。
「婚約のことごめんなさい。僕をかばってお兄様がルーカス様と婚約することになってしまって……」
「気にする必要はない。弟を守るのが兄の役目だからな」
「でも、お兄様は僕だけのお兄様じゃなくなっちゃいました……」
フィーロの言葉にゼンは瞳を丸くさせた。
婚約した=兄を取られてしまったと思っているのかもしれないと気づき、愛おしさが溢れてくる。
こんなふうに兄弟仲良くできることが嬉しい。
(伯爵家に来たばかりで頼れるのが俺しかいないから不安なんだろうな)
自分の中でそう結論づけると、フィーロの手を取ってできる限りの笑みを浮かべた。
「そんなに寂しがる必要はない」
「でも、ルーカス様と過ごすようになったらお兄様は僕と話してくれなくなるかも……」
「それはありえない。……だが、そうだな。それならフィーロに魔法の訓練をしてやるのはどうだ?それなら毎日話すことができるし、将来役に立つはずだ」
十八歳になればフィーロも仕事をこなさなければならなくなる。
このまま行けば伯爵家を継ぐのはフィーロになるだろう。だからそれまでに父親を黙らせられるくらいの力を身につけておく必要がある。
「魔法の訓練……僕、やってみたいです!」
花が咲いたときのように満開の笑みを浮かべたフィーロがゼンの手を握り返してくれた。
あまりの可愛らしさにズギュンッと心臓を撃ち抜かれてしまう。
フィーロが望むのならなんだって叶えてあげたい。ブラコンと言われようとも、弟への溺愛は変わることはない。
「明日から訓練を始める。昼頃呼びにくるから準備をして待っていろ」
「楽しみです!」
先ほどまでの暗い表情は消えてしまっている。とりあえず一安心だ。
フィーロは繊細な子だから気をつけてあげないといけない。それにゼンも魔術を教えるのが楽しみだった。
「せっかくならシャノンも一緒に訓練をしてはどうだ?」
カップにお茶を注いでいたシャノンに話しかける。
前世の記憶が正しければシャノンは強い治癒の魔術を扱うことができたはずだ。治癒能力があればどこに行っても職には困らない。
ただし、まだ治癒能力には目覚めていなかったはずだ。
魔法訓練を行えば治癒能力に目覚めるかもしれない。ルーカスも珍しい治癒の力を扱うシャノンに興味が湧くかも。
「シャノンもですか?」
少し不服そうな表情のフィーロに頷きを返すと、ムーっと唇を尖らせた。
「僕だけだと思っていました」
「いざというときシャノンも身を守れたほうがいい。それにフィーロのことも助けてくれるかもしれないだろう」
「……そうですが」
やはり不満があるようだ。
けれどゼンはシャノンに魔術を教えると決めてしまった。だからいくらフィーロが反対しても押し切るつもりだ。
「嫌か?」
「っ……お兄様が言うのであれば従います」
膨らんだ頬がマシュマロのように柔らかそうだ。
つい頬を指で突くと、フィーロが顔を真っ赤に染めた。
「怒るな。フィーロが俺の一番弟子ということには変わらないだろ」
「一番弟子……いちばん……」
「あぁ、お前が一番だ」
「へへっ、お兄様大好きです」
完全に機嫌が治ったようだ。
ふくれっ面も可愛いけれど、笑っている方がいい。
この笑顔をずっと守ってやりたいと思った。
「フィーロ出てこい」
扉を何度かノックすると、勢い良く扉が開いて驚く。
顔を出したフィーロがゼンの姿を青い瞳に映した瞬間、光が差したかのように顔をほころばせた。
「お兄様入ってください!」
腕を引かれながら部屋へ入る。
まだ家具が揃いきっていない広い部屋は少しだけ寂しく感じられた。
「今度一緒に家具を見に行こう」
「わぁ!楽しみです」
来たときと比べるとフィーロは随分と明るくなった気がする。まだゼンの前以外では縮こまってしまうようだが、すぐに慣れてくれそうだ。
並んでソファーに腰掛けると、フィーロがゼンのことを見つめてきた。見返すと、恥ずかしそうに視線をそらせる。
「どうした?」
「……お兄様は僕のお兄様ですか?」
「当然だろう。俺はお前だけの兄だ」
「本当に?えへへ、嬉しいです」
喜ぶフィーロは子犬のようで可愛らしい。
こうやって仲良くできている事実が嬉しくてたまらない。自然と顔も緩んでしまった。
「婚約のことごめんなさい。僕をかばってお兄様がルーカス様と婚約することになってしまって……」
「気にする必要はない。弟を守るのが兄の役目だからな」
「でも、お兄様は僕だけのお兄様じゃなくなっちゃいました……」
フィーロの言葉にゼンは瞳を丸くさせた。
婚約した=兄を取られてしまったと思っているのかもしれないと気づき、愛おしさが溢れてくる。
こんなふうに兄弟仲良くできることが嬉しい。
(伯爵家に来たばかりで頼れるのが俺しかいないから不安なんだろうな)
自分の中でそう結論づけると、フィーロの手を取ってできる限りの笑みを浮かべた。
「そんなに寂しがる必要はない」
「でも、ルーカス様と過ごすようになったらお兄様は僕と話してくれなくなるかも……」
「それはありえない。……だが、そうだな。それならフィーロに魔法の訓練をしてやるのはどうだ?それなら毎日話すことができるし、将来役に立つはずだ」
十八歳になればフィーロも仕事をこなさなければならなくなる。
このまま行けば伯爵家を継ぐのはフィーロになるだろう。だからそれまでに父親を黙らせられるくらいの力を身につけておく必要がある。
「魔法の訓練……僕、やってみたいです!」
花が咲いたときのように満開の笑みを浮かべたフィーロがゼンの手を握り返してくれた。
あまりの可愛らしさにズギュンッと心臓を撃ち抜かれてしまう。
フィーロが望むのならなんだって叶えてあげたい。ブラコンと言われようとも、弟への溺愛は変わることはない。
「明日から訓練を始める。昼頃呼びにくるから準備をして待っていろ」
「楽しみです!」
先ほどまでの暗い表情は消えてしまっている。とりあえず一安心だ。
フィーロは繊細な子だから気をつけてあげないといけない。それにゼンも魔術を教えるのが楽しみだった。
「せっかくならシャノンも一緒に訓練をしてはどうだ?」
カップにお茶を注いでいたシャノンに話しかける。
前世の記憶が正しければシャノンは強い治癒の魔術を扱うことができたはずだ。治癒能力があればどこに行っても職には困らない。
ただし、まだ治癒能力には目覚めていなかったはずだ。
魔法訓練を行えば治癒能力に目覚めるかもしれない。ルーカスも珍しい治癒の力を扱うシャノンに興味が湧くかも。
「シャノンもですか?」
少し不服そうな表情のフィーロに頷きを返すと、ムーっと唇を尖らせた。
「僕だけだと思っていました」
「いざというときシャノンも身を守れたほうがいい。それにフィーロのことも助けてくれるかもしれないだろう」
「……そうですが」
やはり不満があるようだ。
けれどゼンはシャノンに魔術を教えると決めてしまった。だからいくらフィーロが反対しても押し切るつもりだ。
「嫌か?」
「っ……お兄様が言うのであれば従います」
膨らんだ頬がマシュマロのように柔らかそうだ。
つい頬を指で突くと、フィーロが顔を真っ赤に染めた。
「怒るな。フィーロが俺の一番弟子ということには変わらないだろ」
「一番弟子……いちばん……」
「あぁ、お前が一番だ」
「へへっ、お兄様大好きです」
完全に機嫌が治ったようだ。
ふくれっ面も可愛いけれど、笑っている方がいい。
この笑顔をずっと守ってやりたいと思った。
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