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気持ちを伝える贈り物
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馬車が馬屋に着くと、先に降りてフィーロに手を貸してやる。伯爵家に来てからだいぶ健康になってきた。細かった体にも肉が付いてきて、触れてもあまり心配にならなくなった。
「好きなところを見るといい」
「はい!あっ、あそこに行ってみたいです!」
フィーロがパンを売っている商店を指差した。食いしん坊はどこに行っても変わらないらしい。
輝く瞳で好みのパンを選んでいるフィーロは、心底楽しんでいるように見える。
──せっかくだから俺も楽しまないとな。
魔術協会の用事で商人街へ足を運ぶことはあるが、プライベートのときに見て回ることはあまりないため新鮮だ。
記憶を取り戻してからはなおさら、見慣れているはずの街並みが初めて目にしたかのようだ。
「お兄様、あっちに装飾店がありますよ!」
パンを買い終えると、はしゃいでいるフィーロと共に装飾店へ向かった。テントに備え付けられた木製の台の上に装飾品が所狭しと並べられている。
「きれいですね」
「買ってはどうだ?フィーロは装飾品が好きじゃないか」
「うーん」
渋るような様子を見て内心で首を傾げた。
小説の中でフィーロが大量に高価な装飾品を買い占めて伯爵家を困窮させるシーンは印象的だ。だからてっきり装飾品が好きなのだと思っていた。
「きれいなものを買って身につけたら、きっと注目してもらえますよね。昔、お母さん大切にしていた腕輪をつけてもらったことがあるんです。その腕輪をつけて歩いていると、自分が輝いているように思えて嬉しかった。辛いことも忘れられました」
そう言いながら、フィーロが髪飾りをひとつ手に取った。
パールと小さなピンクダイヤモンドがはめ込まれたシルバーの髪飾りは、シンプルだが上品で描かれた花の模様も美しい。
フィーロの言葉にある重みを噛み締めていたゼンは、小説の中のフィーロの隠された思いに気がついて目頭が熱くなるような感覚に襲われた。
注目されたかったのだろう。誰よりも輝いていると証明したかった。だから高価な装飾品に身を包み、自分を見てほしいとアピールしていたんだ。
フィーロはずっと寂しいと訴えていたのかもしれない。
「その髪飾りが気に入ったのか?」
「シャノンに似合うと思うんです。いつも僕のそばにいてくれるからお礼がしたくて」
いつもシャノンにはツンとした態度をしているが、本人がいないときにはこんなにも思ってあげている。そのツンデレ具合を見守っていると心が温まる。
「贈り物は相手に想いを伝えるための大切な手段だ。シャノンもきっと喜ぶ」
「僕、シャノンを初めて見たときにすごく可愛くてきれいだって思ったんです。その気持ちがどんどん増していて、シャノンのことを考えると胸がドキドキします」
まだ幼さの残るあどけない顔が赤く染まるのを見つめながら、もしかするとフィーロはシャノンに恋をしているのでないのかと気がついた。
けれどそれをゼンが教えてあげるのは違う気がする。だからそっと見守り、その気持ちの正体に気がついたとき手を貸してやればいいと思った。
「それならなおさら、その髪飾りはフィーロの手でシャノンに贈ってやるべきだ」
「そうします!」
素直にうなずいたフィーロが髪飾りを購入した。贈り物用の洒落た袋に入れてもらい、シャノンのイメージカラーであるピンクのリボンで袋を閉じてもらう。
嬉しそうに、それでいて貴重な宝物を扱うようにプレゼントを受け取ったフィーロは、すごく満足そうな表情をしていた。
「お兄様はルーカス様になにか買われないのですか?」
フィーロに尋ねられて、そういえば買う予定だったことを思い出した。言われなければ忘れてしまっていた。
「好きなところを見るといい」
「はい!あっ、あそこに行ってみたいです!」
フィーロがパンを売っている商店を指差した。食いしん坊はどこに行っても変わらないらしい。
輝く瞳で好みのパンを選んでいるフィーロは、心底楽しんでいるように見える。
──せっかくだから俺も楽しまないとな。
魔術協会の用事で商人街へ足を運ぶことはあるが、プライベートのときに見て回ることはあまりないため新鮮だ。
記憶を取り戻してからはなおさら、見慣れているはずの街並みが初めて目にしたかのようだ。
「お兄様、あっちに装飾店がありますよ!」
パンを買い終えると、はしゃいでいるフィーロと共に装飾店へ向かった。テントに備え付けられた木製の台の上に装飾品が所狭しと並べられている。
「きれいですね」
「買ってはどうだ?フィーロは装飾品が好きじゃないか」
「うーん」
渋るような様子を見て内心で首を傾げた。
小説の中でフィーロが大量に高価な装飾品を買い占めて伯爵家を困窮させるシーンは印象的だ。だからてっきり装飾品が好きなのだと思っていた。
「きれいなものを買って身につけたら、きっと注目してもらえますよね。昔、お母さん大切にしていた腕輪をつけてもらったことがあるんです。その腕輪をつけて歩いていると、自分が輝いているように思えて嬉しかった。辛いことも忘れられました」
そう言いながら、フィーロが髪飾りをひとつ手に取った。
パールと小さなピンクダイヤモンドがはめ込まれたシルバーの髪飾りは、シンプルだが上品で描かれた花の模様も美しい。
フィーロの言葉にある重みを噛み締めていたゼンは、小説の中のフィーロの隠された思いに気がついて目頭が熱くなるような感覚に襲われた。
注目されたかったのだろう。誰よりも輝いていると証明したかった。だから高価な装飾品に身を包み、自分を見てほしいとアピールしていたんだ。
フィーロはずっと寂しいと訴えていたのかもしれない。
「その髪飾りが気に入ったのか?」
「シャノンに似合うと思うんです。いつも僕のそばにいてくれるからお礼がしたくて」
いつもシャノンにはツンとした態度をしているが、本人がいないときにはこんなにも思ってあげている。そのツンデレ具合を見守っていると心が温まる。
「贈り物は相手に想いを伝えるための大切な手段だ。シャノンもきっと喜ぶ」
「僕、シャノンを初めて見たときにすごく可愛くてきれいだって思ったんです。その気持ちがどんどん増していて、シャノンのことを考えると胸がドキドキします」
まだ幼さの残るあどけない顔が赤く染まるのを見つめながら、もしかするとフィーロはシャノンに恋をしているのでないのかと気がついた。
けれどそれをゼンが教えてあげるのは違う気がする。だからそっと見守り、その気持ちの正体に気がついたとき手を貸してやればいいと思った。
「それならなおさら、その髪飾りはフィーロの手でシャノンに贈ってやるべきだ」
「そうします!」
素直にうなずいたフィーロが髪飾りを購入した。贈り物用の洒落た袋に入れてもらい、シャノンのイメージカラーであるピンクのリボンで袋を閉じてもらう。
嬉しそうに、それでいて貴重な宝物を扱うようにプレゼントを受け取ったフィーロは、すごく満足そうな表情をしていた。
「お兄様はルーカス様になにか買われないのですか?」
フィーロに尋ねられて、そういえば買う予定だったことを思い出した。言われなければ忘れてしまっていた。
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