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お前は俺が守ってやる
今日は約束通りフィーロと一緒に街へ出かける予定だ。
朝から出かけるための準備を行っていると、使用人が手紙を一通持ってきた。差出人はルーカス。
ルーカスはよく手紙を送ってくる。少し呆れつつ、今回はどんな用事なのか確認をするために中を開けた。
中には簡単な手紙と、白に金のツル模様が箔押しされた招待状が同封されていた。
(そうか。もうそんな時期なのか)
小説内では秋頃にルーカスの二五歳の誕生日パーティーが行われる。六つも歳上だということを普段は忘れている。歳上だから丁寧に話せと注意をされることもないうえに気取った部分のない男のため、あまり年齢を気にしたことがなかった。
──たしか誕生日パーティーの日に公の場でフィーロではなくシャノンを婚約者として発表するんだよな。
フィーロとの正式な婚約発表を済ませていなかったため、ルーカスはこれ幸いとシャノンをパートナーとして連れ回し、ファーストダンスまで踊る。
それに怒ったフィーロがシャノンにドリンクをかけるが、それをきっかけにルーカスはシャノンを自身の屋敷へ連れていき、保護という名目で同棲を始める。
(ルーカスらしい大胆な行動だ)
婚約者として振る舞ってきたフィーロにとっては辛い瞬間だったはず。
その場面を想像して、ゼンは胸を痛めた。
しかし今回はゼンが婚約者ということになっている。フィーロが嫌な思いをすることはない。
正式に婚約者として発表されるのは困ってしまうが、フィーロのためなら我慢しよう。
─一応婚約者ってことになっているから、誕生日祝いくらいはやるべきか……。
そのくらいはしてやらなければルーカスの面目も立たないだろう。
なにをやるか思案しながら準備を終わらせた頃、部屋にフィーロがやってきた。
「お兄様、待ちきれなくて来ちゃいました」
「フッ、行くか」
フィーロに腕を引かれながら部屋を出た。
街までは馬車に乗ってすぐに着く。商人街は活気があり、新しいものが好きなフィーロも楽しめるはずだ。
「僕、伯爵家に引き取られるまでは街がすごく嫌いでした。苦しくても誰も助けてくれなくて、お母さんは僕のために必死に働いてくれたから先に安心できる場所に旅立ってしまった。そのときのことを思い出すから、街がすごく暗い場所に見えていたんです」
「フィーロ……」
「でも、いまはお兄様と一緒だからなにもかもが明るく見えるんです。お兄様とシャノンのこと大好きです」
平民として生きていた頃、どれだけ辛かったのか想像もできない。大切な人を亡くし、不安を抱えながら伯爵家へ来たフィーロがどれだけ心細かったことか。
「俺もフィーロのことが好きだ。いままで辛い経験をしてきたのだろう。だが、これからは俺がお前を守ってやる。一人にはしない。わかったな」
「っ、はい。お兄様!」
瞳を潤ませるフィーロにゼンは心からの笑みを向けた。
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